日本共産党中央は、選挙で勝つ気がない
前回の記事「日本共産党に入って良かったこと」の最後に、
と書きました。
残念ながら、筆者が長年信じていた「日本共産党(以下は共産党と表記)は資本主義を終わらせる事を目的にする政党」という考えは間違っていたのです。
こんな事を書くと、「そんな事はない。綱領にもそう明記しているではないか」という反論する人もいるでしょう。
確かに、共産党の綱領には長々と「未来社会」について書いてあります。
かつての自分も含め、それを信じて熱心に活動している党員はたくさんいます。
しかしながら、中央の幹部には、それを本気で実現させる気などありません。
では、彼らの「真の目的」とはなんでしょうか。
それは「共産党という組織並びに、長年続けられてきた、党の体制を維持すること」だけです。
もちろん、101年前に共産党ができたときは、本気で天皇専制社会を変えようとという人たちの集まりだったと思います。
しかし、今はすっかり違ってしまいました。
ちなみに、ここで示した「党の体制」というのは、「党の代表をはじめとする最高幹部を同一人物が長い期間続ける」「男性優位」「上意下達かつ、厳しい上下関係の存在」などを意味しています。
筆者も長年、誤解をし続けていました。それが解け、今の認識にたどりついた経緯について以下に書きます。
その中でも、まず述べたいのは、「中央は選挙に勝つ気などない」という事です。
もちろん、候補者やそれを支える党員は、全力で選挙に勝つために頑張っています。
しかし、中央はそうではありません。自分たちの権威さえ守れれば、選挙の結果などどうでもいいのです。ただし、負けた時の責任回避だけは全力で行う、というのが実態だと自らの経験からつくづく感じています。
選挙で勝つ気がないのですから、国会で多数派を占めて民主連合政権を作る気も当然ないわけです。だから、共産党中央の「指導」のもとでは、「資本主義を超克した社会」など作れるわけがないのです。
2017年衆院選で違和感を持つ
筆者も2017年までは、「党中央の考えは基本的に正しい」と思っていました。ところが、この年に行われた総選挙後に出た志位委員長の談話を見て、これまでの自分の認識は正しかったのか、と疑問を持つようになりました。
この選挙は「希望の党騒動」があり、立憲民主党が作られるなか、行われました。
そして、共産党は改選時の21議席を12議席まで減らしてしまいました。
ところが、それに関する志位委員長の談話は「共闘野党の議席は増えた。こんな嬉しいことはない」だったのです。
確かに、綱領には、目指す政権は共産党単独でなく、広範な団体と統一戦線を組んだ「民主連合政権」と書かれています。
しかし、資本主義を終わらせるのは、共産党が第一党になった「民主連合政権」でなければ実現できないはずです。
にも関わらず、議席を半分近く減らしながら「こんな嬉しいことはない」はないだろう、と驚きました。
また、この選挙で筆者は小選挙区の候補者をやっていました。その際、地区委員会で行われた会議に、Y氏という中央の勤務員が来たことがありました。
過去のデータをみれば、小選挙区千葉1区で日本共産党の候補者が当選する、などという可能性はゼロであることは明白です(というよりも、沖縄1区を除けば、どの小選挙区でも当選確率ゼロなのですが…)。
とはいえ、候補者として出る以上、勝利を目指す姿勢を見せねばなりません。また、自分の中では、「ここ10年以上、千葉1区の共産党候補は供託金没収だったが、それは何とか免れたい」という思いもありました。
そこで、この会議において、「当選のために全力を尽くします。既に、当選した時に何を言うかも決めてあります」と発言しました。
すると、それを聞いた中央の勤務員は鼻で笑ったのです。その時の小馬鹿にした表情は今でもよく覚えています。
今にして思えば、志位氏の「こんなに嬉しいことはない」発言も、Y氏の鼻で笑った表情も、中央の本音が漏れたものだと思っています。
自分の「目標」は達成することはできましたが、前述したとおり、選挙自体は惨敗でした。
ちなみに2023年5月に開かれた都道府県委員長会議において、小池書記局長は2017年衆院選惨敗の原因を「希望の党の大逆流」などと語っていました。
当時の民進党が解党し、後継として小池都知事が率いる希望の党が誕生し、当初は「自民との二大政党に」とうたわれたものでした。
しかし、枝野氏が立憲民主党を立ち上げたことや、小池都知事の「排除します」発言もあって、希望の党は大失速し、選挙後、すぐに消えてしまいました。
このような政党が、なぜ共産党に「大逆流」をもたらしたのでしょうか。支離滅裂です。
このことも、選挙をまともに分析しておらず、勝つ気などない、事がよくわかります。
2019年統一地方選で大敗した時のこと
この選挙以降、「中央の言動は基本的に正しい」と認識していた筆者の考えを改めました。
そして、中央委員会総会の方針文書や、党創立記念講演などが行われるたびに、評価できる所は評価する一方で、批判すべきことは批判し、改善案を長文の意見書にして、中央に送りました。
しかし、返事もなければ、それを受けた改善も一切ありませんでした。唯一反応があったのは、2020年に行われた党創立98周年記念講演に対する批判文でした。
反応があったと言っても、筆者の提言や誤りを指摘した事への回答があったわけではありません。「中央に異論を述べる事は許されない」という立場で県幹部に「指導」を命じたのです。
その論争の結果は、筆者の完勝でしたが、もちろん、それがフィードバックされる事はありませんでした。
今となっては、その理由はよくわかります。たかが地区委員会の常任風情が、中央の方針に異議をとなえるなど身の程知らずだ、そんな奴の意見など見る価値もない、という扱いだったわけです。
そんな「下級党員」の提言を取り入れるくらいなら、選挙で負け続けたほうがマシ、くらいに思っていたのかもしれません。
当時は不思議に思っていました。しかし、今となっては、「党の体制・上下関係を維持することが重要であり、選挙の勝敗などそれに比べればどうでもいいと考えている」という本質を理解できたので、納得しています。
さて、翌2018年は大きな選挙がなく、2019年の統一地方選をむかえます。
しかし、その選挙において、共産党は121議席減らす「一人負け」に終わりました。
筆者の地区でも、県議と市議で2議席減りました(市議については2023年に議席回復)。
それに関する総括文書はあまりにも酷すぎるものでした。
教訓をただちに生かし全員当選をめざして奮闘しよう――統一地方選挙前半戦の結果と後半戦のたたかいについて 2019年4月8日 中央委員会常任幹部会
衆院補選と統一地方選挙後半戦の結果について 2019年4月22日 中央委員会常任幹部会
この選挙で、自分が担当した現職県議の落選を知った時は、選挙で疲れ切っていたにも関わらず、あまりの悔しさに、夜3時くらいまで寝ることができなかったほどでした。
にも関わらず、中央は方針の誤りなどを一切反省しません。それどころか、「17年の衆院選より増えたからこれが前進の足がかりになる」などと、125議席も減らした現実から目をそむけています。
なお、これが誤りであったことは、数カ月後に行われた参院選で議席を減らした事でも証明されています。
それもあって、この文書が出た直後の地区委員会総会では、一言だけ「この文書は根本から間違っていると思います」と発言しました。
それを聞いて興味を持った現職議員を含めた何人かの人に理由を尋ねられたので回答しましたが、それを批判した人は一人もいませんでした。
なお、このときも、この中央総括に対する長文の感想を送りましたが、もちろん、何の反応も改善もありませんでした。
そして、2023年に行われた統一地方選では、前回を上回る135議席減というまたもや「一人負け」でした。
それに対する総括文書が出ましたが、その内容は前回とほとんど変わっていませんでした。
前半戦の教訓を生かし、後半戦の全員当選をめざして奮闘しよう 2023年4月10日 日本共産党中央委員会常任幹部会
「130%の党」づくり、岸田政権の暴走とのたたかいに立ち上がろう
――統一地方選挙後半戦の結果について 2023年4月24日 日本共産党中央委員会常任幹部会
前半戦部分に至っては、題名もほとんど同じです。
おそらくは、2019年の文書を、数字などが異なる部分をなおして、使いまわしているのでしょう。
一番呆れるのは「有権者の気持ちとかみあって論戦をリード」というところまでコピペしているところです。
ならばなぜ、2回続けて120以上の議席を減らしたのでしょうか。もちろん、有権者の気持ちとかみあわず論戦をリードできなかったからです。
本当に選挙で勝って議席を増やし、国会で多数を占めて日本の政治を変えたいのなら、選挙においてこのような手抜き文書を発表するわけがありません。
そして、これらの文書に一貫として流れているのは「大敗の責任は感じるが、誰一人責任は取らない。そもそも中央の方針は何ら間違っていない」という考えです。
「共産党という組織並びに、長年続けられてきた、党の体制を維持すること」が中央にとっての本当の目的なのですから、そうなるのも当然です。
全国的には前回に続いて惨敗しました。
一方で、千葉市緑区では、8年前の初立候補時に落選者とわずか60票差で最下位当選した椛澤洋平議員が、今回はトップ当選しました。
徹底的に市民の声を聞いて地道に地域要求を実現し続けという政治姿勢と、その要求実現を伝えるためのニュースをはじめとした効率的な宣伝と、SNS活用などの技術の高さによるものです。
それを紹介した赤旗記事のどこにも、中央の方針である「岸田軍拡にストップをかけて平和の大攻勢をかける」を訴えた、などとは書かれていません。
「折り入って」についても一言ふれてありますが、中央が「指導」していた「折り入って作戦」とはかなり異なる内容です。
また、東京でトップ当選した区議を紹介した記事ですが、こちらも、中央推奨である「折り入って作戦」も「平和の大攻勢」も一切触れられていません。
このような実力・実績のある地方の議員たちが選挙の政策・方針を作るように中央が改めれば、現在の長期的な凋落を止めることもできるかもしれません。
しかしながら、現体制と中央の権威を守ることが目的の組織ですから、そのような事は起きないでしょう。
このままでは、2027年の統一地方選挙でも、また同じだけ議席を減らして「有権者の審判」を下され、コピペの総括文書を発表する破目になるのではないでしょうか。
「反共攻撃」は責任逃れの有効ツール
党員だった時に、強く疑問に思っていたのが、「反共攻撃」に対処しないことでした。
吉良参院議員などは、何度も酷い中傷を受けているのですが、それに対し、都委員会などは「法的措置も検討します」という発表はするものの、実際に法的措置を行った話が赤旗に出たことはありません。
また、ネット上によくある事実と異なる言説にも、反論することはほとんどありません。
野党を誹謗中傷していた「インフルエンサー」の「Dappi」に対し、裁判を起こして正体を暴いた、立憲の小西議員・杉尾議員と極めて対照的です。
今年に入って、松竹伸幸氏や鈴木元氏に対しては、「党に対する乱暴な攻撃」などとして除名しました。さらに、松竹氏を批判する支離滅裂な文書を何度も発表してパンフにまでしています。
一方で、同時期にNHK党(当時)議員が参院の質問で、ネットでよく流れる嘘情報を使って「反共攻撃」を行った際には、否定する談話が赤旗に一回載っただけでした。
「身内」相手なら権力を使って叩きまくりますが、外からの「攻撃」には無防備なのです。
筆者は何度も、「ネットに流される嘘情報を否定する文書を公式サイトに載せるべきだ」と意見を出しましたが、無視されました。
一体何故、ここまで「反共攻撃」に甘いのか、とかつては思っていましたが、今は理解できています。
選挙で負け、議席が減った原因を「反共攻撃」のせいにすれば、中央の誤った方針・政策はなかった事になり、権威が保たれるからです。
2021年の総選挙で議席を減らした際、「共産党が政権に加わることに震え上がった権力側による反共攻撃があったから」と総括しました。
これ自体、事実と全く異なる珍説です。
そもそも政権交代が起きても「共産党は限定的な閣外協力」でしかありませんでした。
支配層は震え上がるどころか、「自民党重鎮が『共産党は日本の政治に必要』と言った」くらいに、予定調和的な存在としか見ていません。
その実在しない「反共攻撃」に対抗するといって「あなたの?にお答えします」などという印刷物を1千万部も刷りました。
しかしながら、その内容は、日頃、共産党に対して流されている「攻撃」に反論するものではありませんでした。
そして1千万部の印刷物は何の役にも立たず、翌年の参院選でも議席を減らしました。すると「反共攻撃などの逆流から押し返している途上」などと論拠もなく発表しました。
それが間違いであることは、統一地方選の議席減で証明されたわけですが、相変わらず「逆流」と言い続けています。さらに、
などと、またもや「反共攻撃」を議席減の理由に挙げています。
ちなみに、この「反共キャンペーン」なるものは、松竹伸幸氏を除名した事によって発生したわけです。
松竹氏も鈴木氏も「除名すれば統一地方選で負ける」と言い続けてきました。にも関わらず、理不尽な除名をしました。
それをマスコミに批判されたら「反共攻撃」などと議席減の理由にするわけです。
選挙で勝つ気があるならば、「統一地方選で議席を減らさないために、この時期に除名するのはまずい」くらいの事は考えるでしょう。
そんな発想はないわけです。むしろ、「中央に逆らう連中を追い出せた上に、統一地方選議席減の言い訳のネタができて一挙両得」くらいな事を思っていたのかもしれません。
というわけで、これからも「反共攻撃」を議席減の理由とし、中央は何の責任も取らない、という事が党が存続する限り、続けられるだろう、と思っています。
なお、「反共攻撃」をする側を見ても、本気で共産党を脅威に感じているとは思えません。維新などが典型例ですが、「弱いものいじめ」的な感覚と、叩けば支持者受けするから叩いている、という感じです。
とはいえ、きちんと「反撃」すればもう少し票も議席も増えるとは思っています。まあ、中央にとってはどうでもいい事なのでしょうが…。
綱領に「日本共産党と統一戦線の勢力が、国民多数の支持を得て、国会で安定した過半数を占めるならば、統一戦線の政府・民主連合政府をつくることができる。日本共産党は、「国民が主人公」を一貫した信条として活動してきた政党として、国会の多数の支持を得て民主連合政府をつくるために奮闘する。」
と明記しているにも関わらず、選挙に負けても何一つ責任を取らず、非現実的な言い訳ばかりを発表しているのが共産党中央です。
この人達が、資本主義を終わらせるように政治を変える気がない事は明白です。
次回は、選挙のみならず、共産党が発表している政策に関しても、中央は本気で実現する気などない事を書く予定です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?
コメント