コロナワクチンの健康被害は「副反応」ではない…京大名誉教授が「医療現場の声」を軽視する政府に憤るワケ
■副作用に関する主張は「誤情報」となる恐れも しかし、そんな中で、岸田政権は「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」を閣議決定した。これによって新型コロナの流行時、「表現の自由に十分に配慮」しながら「誤情報の対策」が行われていく。 つまり、ワクチンは安全だと接種を呼びかける日本政府からすれば、ワクチンの副作用の深刻さを訴えるような主張は「誤情報」として規制の対象になる恐れもあるのだ。これは民主主義と科学の両面においても非常に問題だと福島教授を訴える。 「誤情報の対策? わが耳を疑います。これは憲法21条2に、『検閲は、これをしてはならない。』と規定されている“検閲”にあたります。誤情報の判断が恣意的になされる可能性がありますし、何よりも科学は未熟ですから、そうあってほしいと望む科学的説明を鵜呑みにして信じると、今回のワクチンのように重大な被害が起こるわけです。科学の限界を知り、技術については、常に負の面があるという、その本性をもっと冷徹に見つめるべきですね」 しかし、そんな福島教授の提言をよそに厚労省は「ワクチンは安全」を繰り返すばかりだ。なぜこんな紋切り型の対応になってしまうのか。福島教授はこのような見解を述べる。 ■日本政府は一度立ち止まり、検証すべき 「政府も必死でやっていると思いますよ。でも、残念ながら政策に関わる人たちが臨床医学について無知すぎる。そこに加えて、日本という国は一度決めて動き出したことからなかなか“撤退”できないという問題があります。過ちて改めざる。これを過ちと言う。論語を読み直せと言いたいですね。 政治・行政の無謬性を死守するため、科学的・合理的な冷徹な判断をあくまで無視しようとする。そういう思考停止が凄まじい悲劇につながることは、旧日本軍のインパール作戦やガダルカナル島の戦いと全く同じですよ」(福島教授) 実は日本のコロナ対策は、あの戦争と同じ道を辿っているのではないか――。福島教授が「副作用」を頑なに「副反応」と言い換えをすることに強烈な危機感を抱く理由も実はここにある。 「この国はかつて事実と異なる言い換えをして国民を騙してた、悲惨極まりない醜悪な歴史がある。アッツ島の玉砕、沖縄守備隊の玉砕、当時はそう報じられましたが、実際はすべて“全滅”ですよね。そういう嘘を国民につき続けたことで多くの国民が死に、国家は滅亡の淵まで追いやられた過去がある。それに懲りずにまた同じことをやっている。本当にこの国は滅んでしまいますよ」(福島教授) 福島教授が断固としてワクチンの問題を訴え続けるのは、これを自身の「遺言の一環」と位置付けているからだという。日本が誤った道に進んでいるのをどうにか防ぎたいという。 京大名誉教授の人生を賭けた訴えは、「一度動き出したら止まらない日本」の政策転換を促すことができるのか。今後も注目していきたい。 ---------- 福島 雅典(ふくしま・まさのり) 京都大学名誉教授 1948年生まれ。1973年に名古屋大学医学部卒業。1978年愛知県がんセンター・内科診療科医長。1994年には世界で最も使われる診断・治療マニュアル「MSDマニュアル(旧メルクマニュアル)」を日本で初めて翻訳・監修。2000年に京都大学大学院医学研究科教授に就任し、医薬品の適正使用や副作用被害防止などを扱う日本初の「薬剤疫学」講座を立ち上げるなどした。その後は、全国の大学の新規医療の研究開発を支援するセンターとして文科省と神戸市が創設した「医療イノベーション推進センター(TRI)」センター長などを歴任。 ---------- ---------- 窪田 順生(くぼた・まさき) ノンフィクションライター 1974年生。テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者等を経て現職。報道対策アドバイザーとしても活動。数多くの広報コンサルティングや取材対応トレーニングを行っている。著書に『スピンドクター“モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)、『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)、『潜入旧統一教会 「解散命令請求」取材NG最深部の全貌』(徳間書店)など。 ----------
京都大学名誉教授 福島 雅典、ノンフィクションライター 窪田 順生