「スキマバイトは一度始めちゃうとやめられない地獄」52歳男性が訴えるタイミーの仕組みへの“不満”
■「一度始めちゃうとやめられない地獄」 スキマバイトで生計を立て始めると元には戻れない。その仕組みに不信感を抱きながらも従わざるを得ない日々を、シンゴさんは自嘲気味にこう表現した。「一度始めちゃうとやめられない地獄。まあ自己責任だといわれるでしょうが」。 話は変わるが、国会中継を見るのが趣味だというシンゴさんとの話は楽しく、興味深かった。ただ一つだけ、聞き流せないことがあった。どのような公助が必要かと尋ねたとき、シンゴさんが「外人に10万円を渡す前にまず日本人を助けてほしい」と言ったのだ。
ちなみに「外人」には「仲間以外の人」などの意味もあるので、私たち記者は「外国人」という言葉を使う。そのうえで外人とは? と問うと、「埼玉のクルド人」だという。シンゴさんは「クルド人はみんな国から毎月1人10万円をもらってるんですよね。『4人家族で40万円』だと、ネットで何人もの人が言っています」と訴えた。 結論から言おう。これらは悪質なデマである。たしかに日本には、クルド人に限らず生活に困窮した難民申請者に対し、国が「保護費」を支給する制度がある。金額は、生活費が単身者で1日2400円、住居費は上限4万円。「1人10万円」の根拠はおそらくこのあたりにあるのだろう。
しかし、保護費を受給できるのは原則初回の難民申請者のみ。予算規模も諸外国に比べて乏しく、受給者数は難民申請者の1割に満たないとされる。また、家族で受給したとしても、2人目以降は1日1600円(12歳未満は同1200円)なので、「4人家族で40万円」はありえない。 しかし、SNSなどに目を転じると、シンゴさんが言う通りの言説があふれかえっている。デマを真に受けた「困窮している日本人が哀れ」「クルド人は公金チューチュー」といった書き込みも目に付く。1923年の関東大震災の直後、根拠のないデマに踊らされた日本人がすさまじい数の朝鮮人や中国人を虐殺した惨事から、日本の社会は何も変わっていないのだと思うと、ぞっとした。