My 21 Days
4月16日。深夜0時。緩慢で不快な頭痛は不安定な天気のせいだろうか。頭が痛いとツイートし、カロナールを飲む。それからレッドブルも。Twitterの通知が届く。「お大事に」と。冗談めかして「ありがと、これだけで治った気がする」と返信したが、体調というものはどうも気分に左右される側面があるようで、本当に頭痛が吹き飛んだ。机の真正面には東京に引越してから間もない頃に組み立てた本棚。その扉に飾られた『夢をつかむ力』が目に留まった。「夢をつかむための第一歩を踏み出すぞ」と心に言い聞かせ、寝る前に2時間スパートをかけることを決めた。それがITパスポートの参考書を買ってから21日目の夜中であり、試験前最後の夜だったーー
言うまでもないが、勉強の仕方には人によって向き不向きがある。参考書も相性がある。だが、あえて合う合わないを承知の上で、3週間自分がどのような対策をしてきたのかの話をしよう(なお、会社からは情報セキュリティマネジメント試験を受験するよう指令が下っている。そのため、実質的な勉強期間は2週間程度、時間にして50時間ほどであった)。少しだけ付き合っていただけるとありがたい。
【使った参考書】(※過去問道場は使用しなかった)
・『ITパスポートパーフェクトラーニング過去問題集 令和05年上半期』
→黄緑色の表紙のテキスト。紙面で6回+PDFで21回分の問題と2回分の模擬問題が収録されている。巻頭によく出る単語集ベスト30や10問の○×クイズが掲載されているのも特徴。1298円。
・『出るとこだけ!ITパスポートテキスト&問題集 情報処理技術者試験学習書 2023年』
→オレンジ色のテキスト。重要項目が網羅されており、辞書としても使いやすい。付属の赤シートを使って重要ワードを隠しながら勉強するとよい。1738円。
・『イモヅル式 ITパスポートコンパクト演習第2版』
→最も役に立ったテキスト。サイズが小さめなので持ち運びしやすい。1ページに1問過去問が掲載されており、そのページに関連する重要事項の解説がまとめられている。出るとこだけ!で身につけた知識を有機的に結合していくのにベスト。1408円。
【勉強の進め方】
① ITパスポート試験は「ストラテジ系」「マネジメント系」「テクノロジ系」に分けられ、要求される知識は広範囲に及ぶ。そこで、はじめに過去問題集のよく出る単語集ベスト30と10問の○×クイズに加え、過去問を1年分解くことで、得意分野と苦手分野を炙り出した。このときに、何の勉強に重点的に時間を配分するべきかや、勉強に飽きてきたときやモチベーションが上がらないときにどの分野なら苦にならずに勉強できそうかなど、見通しを立てた。株式投資をしているので、やる気があまり湧いてこないタイミングでも簿記・会計や経営戦略、マーケティングといった分野であれば勉強しやすそうだと思えたのはよかった。
② 出るとこだけ!はページの順番無視で進めた。事実、私が最初に手をつけた章は第12章「システム監査」である。その後も、ページの順番は一切気にせず、虫食い的に勉強を続けた。解説のなかで分からない単語があれば、索引を用いてどんどん「この節が終わったらこっちに飛ぶか」とやっていった。
③ 知識が十分に身についた段階で、最後の追い込みとしてイモヅル式をメインに据えた。ここで、過去問以外に2冊使ったのが実はミソである。重要用語同士をどのように近接配置するかが、出るとこだけ!とイモヅル式とでは違っている。これによって、1つの用語に対する見方がある種平面的なものから立体的なものに変わったような気がする。
④ 最後に、どのテキストを使う際にも、登場する用語を一度は英語で書くことは意識づけた。たとえば、「ランサムウェア」という単語があるが、「ランサム(Ransom)」が日本語で「身代金」という意味であることが頭のどこかに残っていれば、そこから正解を導くといったことができる。逆に、日本語で与えられた文章に対して適切な略語を選ばせる問題でも、説明文と選択肢から「こんな英単語使ってそうだよな…」と推測することから解ける問題はある。Iパスは英語力の有無だけで50点くらい差がつく試験なのだ。
ここからはオマケにしてはかなり長話になるので、ITパスポートの勉強法だけ知りたいという方はここで切り上げてもらっても構わない(ヘタすると本体より長いかもしれないオマケってなんだよ)。これより下にITパスポートの攻略法など書いていない。だが、もし時間があるのであれば、どうか最後に、なぜ私がITコンサルタントの職に就こうと思ったのかを聞いてほしい。
少し前に、Discord経由で仲良くしてなった北大生から、「経済学で博士課程に行ってやりたかったのがITコンサルなの?」と聞かれた。意外かもしれないが、その答えは「Yes」である。
その理由は、部分的には大学院での研究テーマがIT技術の進展と教育の関係についてだったことで説明できる。大学院での研究テーマだからこそ、ITには思い入れがあるのだ。
だが、それ以上につかみたい夢がある。それは、「日本にハッカー精神やハッカー文化、それにリバタリアニズムを輸入すること」である。その先には、日本が自由で生きやすい社会になり、同時にGAFAMのようなビッグテックが生まれる素地が生まれることだろう。そうしたものを企業に実装するためには、たぶんITと経営について専門性を身につけ、コンサルとしてそういうソリューションを提供するのが有効っぽそうだ。
そもそもハッカー文化というものは、自由と工夫とユーモアと実力主義から成り立っているのではないだろうか。ハッカー文化の前身には60年代にベトナム戦争への反対や性規範からの解放を訴え行動したヒッピーたちの文化・思想がある。残念ながら私はカリフォルニアに住んでいるわけではないのだが、カリフォルニアはそうしたヒッピー文化の中心地だったと聞く。ついでに、カリフォルニアはゴールドラッシュの時代に多くの人が一攫千金の夢を求めて向かった地だ。
そうした常識や規範への囚われなさと、ゴールドラッシュ以来のアメリカンドリームと結びついた実力主義や自立志向と結びついたのだろう。だからこそ、シリコンバレーの起業家たちは「こんなものがあったら面白いよね」と常識や枠に囚われずアイデアを生み出すことが可能になったのではないだろうか。そして、枠からはみ出た人たちのアイデアを面白がる土壌や、出る杭を打たない土壌があった。さらにいえば、実力主義だからこそ、例えばASDやADHDなど発達障害を抱えている人やギフテッドなどのマイノリティにとっても生きていきやすい環境になっているのだろう。これもまたカリフォルニアのイノベーティブさに繋がる要因だと確信している。
ところで、よくあるクエスチョンは、「なぜ日本にはスティーブ・ジョブズがいないのか」である。日本の人口が1.2億でアメリカは3億なのだから、単純計算でアメリカの3分の1以上はスティーブ・ジョブズのようなイノベーティブな人がいなければおかしいはずだ。結論から言えば、その答えは日本の同調圧力にあると思われる。なにせ、日本は世界中の右翼やサンデルのような共同体主義者にとっての理想郷なのだ。側から見たりたまに日本を訪れたりする分には日本という国は非常に"Zen"に映るかもしれない。だが、実際に日本で生きるとなれば、生きづらさを抱えるほかないのだろう(これは私自身が直面している問題でもある)。そして、自同性原理故に、政治は同調圧力と同じ構造を有している。ならば政治の領域など小さくすべきだろう。それに、所得再分配政策は出る杭を打つ発想そのものだ。
※成功者の中には、少なからず過去に辛い経験をしてきた人もいる。イーロン・マスクが幼少期にかなり壮絶ないじめを受けてきたという話はあまりに有名だろう。そんなクソみたいな人生を価値あるものにするためにリスクを取った(取らざるを得なかったといった方が妥当かもしれない)人すらも、ただ「ある時点で金銭的には恵まれている」というだけで、国家権力を使ってそのお金すら奪うということに、一体何の正義があるというのか。金銭的豊かさは幸福を構成する1要素にしか過ぎないことを考えれば、金銭的平等が本当に平等を意味しているのかは極めて怪しいと言わざるを得ないはずだ。
世の中への怒りはおそらく誰しもが抱えているものであろう。その怒りの原因は人によって当然違ってくる。だが、原因が何であれ、怒りを表明する方法を、これまで日本人は知らなかった。その結果が昨年の安倍元首相の銃撃事件であり、つい先日の岸田首相に対する爆弾テロ未遂だろう。それが良い方法なのかといえば恐らくそうではない。
より洗練された怒りの表明とは、社会をよりよいものに変えていこうと足掻くことではないだろうか。英米保守派は自分達こそが自由主義者だと自認しているようだが、先に述べた「世の中への怒り」の原因にかなりの確率で抑圧があることを踏まえれば、彼らは自由主義者を名乗るに値しない。少なくとも、マイノリティの被抑圧ということに関していえば(特に発達障害者やギフテッドのケースでは)、ハッカー精神とリバタリアニズムが結びついたカリフォルニア的価値観を日本にインストールすることこそがベストソリューションに見えるのだ。
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