堀田隆一:質問者が予想された通り,共通の語源があります.印欧祖語の *to- です.原初より指示詞の語幹として機能しており,英語の th- につながっています. 英語本来語である the, this, these, that, those, there, then, thence, thither, than などの語頭の th- が例となります.th- は,既出のもの,あるいは話し手も聞き手も了解しているもの,指さしできるものの象徴として,つまり「定的なもの」の象徴として機能しています.they, their, them, theirs, though は古ノルド語に由来しますが,これらの語頭の th- も同根です. 印欧祖語では *t の子音をもっていましたが,英語を含むゲルマン諸語では「グリムの法則」と呼ばれる音変化が生じ,その結果,英語や古ノルド語では th の子音となりました(ドイツ語を含む他のゲルマン諸語ではさらに d の子音となるなどしました). 印欧祖語の *t は,ラテン語やギリシア語では t のまま保たれたため,指示詞の語類にこの子音が観察されます.ラテン語で「そのような」を意味する tālis (英語の such に相当),「それほどの」を意味する tantum (英語の so much に相当)などが例となりますが,英単語 tales (補欠陪審員)や tantamount (~と等しい)はこれらに由来するラテン借用語です.ギリシア語 tautó は tó (the) + autó (self) からなり「同じ」を意味しますが,英語にも tautology (同義語反復)などのギリシア借用語として入ってきています. 印欧祖語 to- が指示詞の語幹であり「定的なもの」の象徴であるならば,印欧祖語 *kwo-, *kwi- は疑問詞の語幹であり「不定のもの」の象徴です.グリムの法則により,語頭子音は英語では hw- となり,現代英語の綴字ではおおよそ wh- と綴られています.what, when, whence, where, whether, which, whither, who, whom, whose, why などの疑問詞のほか,少し音が変化していますが,how や (n)either などにもこの語幹が含まれています. ラテン語やフランス語では疑問詞は典型的に qu- で綴られますが,これらも同根です.英語に借用されてきた語として quality, quantity, quantum, quasi, quiz, quote, quotidian などが挙げられます. 以下,音声コンテンツとなりますが,今回の話題に関連する3点を挙げておきますので,参考までにお聴きください. * 「#493. 指示詞 this, that, these, those の語源」 * 「#485. 関係代名詞の歴史 ー 意外と遅かった who」 * 「#2. 疑問詞は「5W1H」といいますが,なぜ how だけ h で始まるのでしょうか?」