東京在住の女性Ｙ様から「お金はほとんどないのですが、熱海に行きたい」と連絡が届いた。依存心が強く、自己啓発や占いやセラピーに多額の出費をした。常に「誰かになんとかしてもらおう」とばかり思っていた。自分でやらなくちゃってようやく思うようになり、坂爪さんに連絡した。お金もなくて、先行きも暗くて、薬を飲むほどではないけど鬱っぽくなっている。依存することと、助けてと言うことの違いがわからない。Ｙ様は、そのようなことを話した。

私は「誰に話しているのですか」と言った。Ｙ様は、目の前にいる私を見ないで、ずっと下ばかり見ていた。愚痴や悩みを畳の上に吐き出して、それを私に拾わせようとしているように感じた。私は「あなたの話し方には誠意を感じない。独り言みたいな話し方をやめなさい。俺に話すなら、俺を見て話せ。俺に悩みを拾わせるな」と言った。ハッとした顔をして、Ｙ様は続けた。嫌なことを我慢してきたから、自分の好きがわからなくなっている。自分の心を感じないように生きてきたんだなって思ったら、泣けてきました。そう言って、Ｙ様は涙を流した。

Ｙ様は彼氏がいると言った。彼氏とは体の相性もまあまあいいし、覚醒の話とかできるからうまく行っていると言った。私は「ギャグか」と思った。覚醒の話をしている割に、まったく覚醒していないじゃないか。彼氏とうまく行っているとか言うけど、本当はまったく違うだろ。本当は、彼氏の支配に悩んでいるだろ。優しさのマウントを取られ続けて、一緒にいるだけで生命力を奪われているだろ。体の相性に「まあまあいい」なんてないんだよ。最高か、最高じゃないか。それしかないんだよ。中間はないんだよ。まあまあいいは、全然よくないんだよ。

Ｙ様は「本当ですね！この前ブレスレットを作ってくれた人からも『人間関係を全捨てしろ』と言われました。彼氏やセミナー関係の友達を全員断捨離しろと言われました。生きている感じがしなかったのは、これか。彼氏といると、だんだん元気がなくなる。帰ってくるのが嫌になる。セックスも、彼に合わせて妥協をしている。彼氏は前戯をまったくしない。俺はそういうの嫌いなんだよねと言われて、私が折れた。彼氏と会わないと元気になる。なんでこんなにつまらないのだろうと思っていたが、これか。１００%合う人間はいないと思っていたから、人間関係は六割がいいと妥協していたけれど、そんな風に思って生きていたら、そりゃあ、生きてても楽しくなくなりますよね」と言った。

私は「あなた、その関係をうまく行っているって言ったんだよ。ズレまくりだよ」と言った。彼氏の悪臭がＹ様の皮膚に染み込み、一緒にいる私も悪臭を嗅がされているような気持ちになった。Ｙ様は「それって最悪ですね！」と言った。この瞬間、Ｙ様の顔つきが変わった。悪霊が取れて、スッキリした顔になった。１００%分かり合える人なんていないのだと、最初から諦めて妥協して生きる奴は俺の前から消えろ。１００%どころか、２００%も３００%も分かり合える人間が、この世の中にはいるんだよ。そう思える奴と一緒にいろよ。魂をクリアに元気に保ち続ければ、出会うよ。最高か、最高じゃないか。基準はこれだけだ。君に会うまでの俺は死んでいた。これまでの恋は全部予行練習だったんだ。そう思えるものが、本当の恋だ。