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安倍晋三元首相銃撃事件が起こった経緯とは

2024.08.13 公開

2022年7月8日に起きた安倍晋三元首相銃撃事件。なぜあの場所だったのか、なぜ安倍氏は標的にされたのか、安倍氏を自作の銃で撃った山上徹也被告はいつから襲撃を準備していたのか。警察庁による報告書、明らかになった供述、複数の関係者への取材などを基に再現ドラマで紹介した。

当時、安倍氏は参議院選挙の応援演説のため全国各地を回っていた。そして前日に選ばれた場所が4方面・3路線が交わる近鉄有数の乗り換えポイント・大和西大寺駅の駅前の北口ロータリー。その情報は前日の夜、自民党のホームページなどで発表された。

7月8日、事件の14分前に安倍元首相の乗った車が演説会場に到着。身辺警護の5人も配置についた。事件の2分前、山上被告は演説場所と逆方向に歩き始めた。

事件の17秒前、自転車に乗った老人が安倍氏の背後に停車。万が一に備えて警戒。老人のさらに後方を台車に段ボールを乗せた男性がやってきて、警戒が自転車と台車に向けられた、その一瞬の隙、11時31分に山上被告が、銃を取り出して発砲。

事件現場近くの商業ビルの3階で診療中だった中岡伸悟医師がその場で目にしたのは、タオルのようなものが首に巻かれた顔面蒼白で横たわる安倍氏だった。現行犯逮捕された山上被告は奈良西警察署に連行された。

山上被告は「安倍元首相の政治信条に対する恨みではありません」「母が宗教団体にのめり込み、多額の献金で家庭生活がめちゃくちゃになりました」「宗教団体のメンバーを狙おうとしました。でも難しいと思い安倍元首相を狙いました。安倍元首相は宗教団体と関係があると思ったからです」といった趣旨の供述を行った。この「宗教団体」とは、後に、世界平和統一家庭連合、いわゆる統一教会であることが明らかになる。

世界平和統一家庭連合は、世界基督教統一神霊協会として1954年に韓国で文鮮明氏によって創立された。日本では1964年に宗教法人としての認可を受け活動してきた。

その一方で30年ほど前から様々な問題が明るみに。裁判で、統一教会の行ったことが明らかになった事例がある。

小説を読むのが好きだった17歳の女子高校生は、「登場人物が教会に通っているのが素敵だった」という憧れで教会に通い始めていた。それが、たまたま統一教会の礼拝だった。

支部長から「2泊で教会の教えについて学べる」と声をかけられ、その合宿に軽い気持ちで参加を決めた。講義の内容は「堕落論」。「人類の始まり」とされるアダムとエバ、そのエバがサタンと不倫をしたためサタンの血が人類に引き継がれた、というものだった。つまり自分を含めて人類は皆、サタンと同じ堕落した存在だというもの。さらに、サタンなど相手にせず神の指示に従えば堕落しなかったと説かれた。

女性は、交際中の男性について「あなたが誰かとお付き合いしてる行為は神様の指示を無視して、サタンと関係をもったエバと同じ。だから別れた方がいいわ。でないと、あなたもその恋人も地獄に堕ちるんだから」と言われ、さらに次の講義は、堕落したとされる人類を救う唯一の存在だというメシアが韓国に誕生した、というものだった。その人の名は統一教会の教祖・文鮮明氏だ。

やがてこの女性は、彼氏からの連絡をさけるようになり入信を決意し、正式に統一教会の信者となった。入信後、「先生に手相を見てもらいなさい」と言われ、「双子のお姉さんを亡くしてますね」と霊能師。確かに彼女には、生後2週間で死んでしまった双子の姉がいた。

あなたを不幸から守るにはと、21万円の印鑑を勧められた。これは、彼女が以前双子の姉が亡くなったことをある先輩信者に話していた情報を先生と呼ばれる霊能師役の女性が事前に聞いていただけ。そんな占いを信じた彼女は後に先生役となり、同じ手口で印鑑などを買わせるようになる。いわゆる、問題になった霊感商法だ。

この女性は22歳のとき、文鮮明教祖の指名により結婚相手を決められた。その結婚式とは、世の中に教団の名前が広く知られることになる合同結婚式。信者同士が、教団が定めた初対面の相手と文鮮明夫妻の祝福を受けて一斉に結婚するというもの。そして、悩みなどにつけ込み不当に高額なつぼや印鑑などを買わせるという。

女性は、その後家族の必死な説得もあり脱会。教団を相手取り元信者たちと集団訴訟を起こし最高裁は統一協会側の上告を棄却、元信者たちの勝訴となった。

しかし、統一教会の霊感商法や高額献金はその後も行われていたという。その後、統一教会は2015年、世界平和統一家庭連合への名称変更を文化庁から認められた。 

山上被告は2019年、ある人物の襲撃を考えていた。それは世界平和統一家庭連合、いわゆる“統一教会”の韓鶴子総裁。2012年に教祖の文鮮明氏が亡くなった後、統一教会の総裁は妻の韓鶴子氏が引き継いでいた。愛知県での大規模な集会があるといい、山上被告は火炎瓶で襲撃しようと考えたのだ。

1980年、山上被告は生まれた。母方の祖父が会社を経営していて裕福だったが、4歳の頃父親と死別。山上被告の父方の伯父によると、山上被告が11歳の頃から母親は統一教会に入信、献金を始めたという。それに対し教団側は、当時の会見で母親の入信時期について「母親が関わり始めたのが1990年代後半」と、食い違う説明をしている。       

18歳のとき、母親に統一教会から脱会するよう説得し続けていた祖父が亡くなったという。山上被告は祖父の持っていた土地を母親が勝手に売り払い、統一教会につぎ込んだと供述。登記簿などによると山上被告の母親は奈良市内2か所の土地を相続していたが売却。このころ、母親は教団に多額の献金をしたとみられる。

伯父によると山上被告は、大学は経済的な理由で行けなかったといい、任期制自衛官として海上自衛隊に勤務を始めた。そのころ母親が自己破産。2005年に海上自衛隊を退官した山上被告は非正規の仕事を転々とした。そんな中、兄が自殺したことを知る。
 
世界平和統一家庭連合、いわゆる“統一教会”は莫大な資産を持っていた。大半は、多額の財産をささげた日本の信者たちの献金があったとされる。

2019年10月、山上被告は襲撃するために火炎瓶を用意して韓鶴子氏が訪れる集会場へ向かった。しかし、教団の活動に抗議する人たちともめ事を仲裁するための警察官が大勢おり山上被告は計画を断念。

事件の1年9か月前、2020年10月、山上被告は京都府内の工場で派遣社員として働き始めた。教団に関するブログなどは熱心に読んでいたようで、あるルポライターが書いたブログに「復讐は己でやってこそ意味がある。不思議な事に私も喉から手が出るほど銃が欲しいのだ。何故だろうな?」というコメントを残したとみられる。

2020年12月、書き込みから4日後、山上被告は独自に調べて銃の製造に取り掛かった。2021年3月頃、山上被告は自宅とは別に賃料2万円で一室を借り、そこで火薬類の製造を開始した。

2021年9月、山上被告はある動画を見た。それはUPF、天宙平和連合という、統一教会と創始者が同じNGO団体主催の集会。そこにはドナルド・トランプ氏がメッセージを寄せ、安倍氏のメッセージも。これを見た山上被告はターゲットを安倍氏に変えたという。

今から50年ほど前、文鮮明氏と安倍氏の祖父・岸信介元総理大臣との写真があった。教団は反共産主義を掲げていて、共産主義の拡大を防ぎたかった自民党や岸氏と思惑が一致し、接近したという。その関係は霊感商法などが社会問題となった後も、安倍氏の時代になっても続いてきた。

安倍氏が銃撃された月、自民党・青山繁晴参議院議員は日本テレビの取材に対して「派閥の領袖(長)の方は今までの政治のあり方の一端として、業界と連携して選挙をやると。その時にその票だけでは足りない。団体と関係ない票を足しても届かない時に旧統一教会の票を割り振ることがあるとはっきりおっしゃいました」と答えた。ある派閥の長から聞いたといういわゆる“統一教会の票の割り振り”。取り調べで、山上被告は岸氏が団体に関係があると思い、その孫の安倍氏も関係があると思ったと供述している。

総理退任後も自民党内の最大派閥である安倍派を率いていた安倍氏。一方、2021年11月、山上被告は火薬を乾かすためにガレージで自作の銃製造作業を続けた。2021年12月、この頃から自作の銃の試し撃ちを繰り返し、6丁のタイプの異なる銃を事件までに完成させた。その一つは、1度の発射で6発の弾丸が飛び出す散弾銃。

2022年5月、仕事を辞め無職になった山上被告。自身の残金は銀行口座に20万円ほど。カードローンの借金が少なくとも数十万円はあった。生活に困窮し7月に入って犯行を最終的に決意したという。

山上被告は安倍氏の演説スケジュールを自民党のホームページから確認していた。7月7日に岡山県・岡山市民会館で演説を行うことを知り、そこでの襲撃を計画し始めた。

そして、かつてブログに書き込みをしたルポライターに「母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産…この経過と共に私の十代は過ぎ去りました」「安倍は本来の敵ではないのです。あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会シンパの一人に過ぎません」という旨の手紙を書いた。この手紙と同じ内容の文書が、自宅から押収されたパソコンで作成されたことが解析で分かっている。

事件の31時間ほど前、山上被告は自分で作った銃の試し撃ちなのか、世界平和統一家庭連合の教団施設に向けて発砲した。

岡山県では、山上被告は会場近くのコンビニでルポライターに宛てた手紙を投函。演説会には会場を埋め尽くす聴衆がおり山上被告はこの日の襲撃を諦めている。その帰り、翌日に安倍氏が山上被告の自宅からわずか3㎞のところにある奈良県の大和西大寺駅で応援演説すると発表されたことを知る。

2022年7月8日、山上被告は事件の1時間30分ほど前に大和西大寺駅前に到着。その後事件が起こった。

安倍氏が襲撃された時、中岡医師は診療中だった。中岡医師が現場に向かうと安倍氏は出血がひどかった。そして痛覚も反応がない。AEDの電気ショックも流れず、それは心臓がほぼ止まってしまっていることを意味する。

事件の6分後に消防隊員が到着、その後、救急車が到着し搬送。救急車はドクターヘリと合流できる地点を目指した。安倍氏を乗せたドクターヘリは高度救命救急センターへ急ぎ、事件から約50分後、ドクターヘリが病院に到着。止血のため開胸手術が行われたが治療は困難を極めた。傷は心臓にまで達し、血液は輸血したそばから失われていく。

事件から4時間30分後、安倍昭恵氏が病院近くの近鉄大和八木駅に到着。病院へ到着後、医師からの説明を受けた。夫がいる部屋へ向かうとそこでは多くの医師や、看護師が心電図の波形を維持するために心臓マッサージを続けていたという。同日の午後5時3分、安倍氏は息を引き取った。

奈良県警は、司法解剖や様々な証拠を検証した結果、死因は左右鎖骨下動脈損傷による失血死と発表。左の肩から入った銃弾により鎖骨下にある動脈が損傷したことが致命傷になったという。

昭恵夫人は安倍氏のあまり知られていない素顔について、当番組に「バーベキューの時はみんなに焼きそばを作って振る舞ったり、家で若者たちにたこ焼きを作ったり、ゴルフの時に1ホール1ダジャレを言うようにというルールを作ったり冗談やユーモアが好きで、お笑い番組も観てましたし、映画や小説が大好きでした。私にも安倍の母にも私の家族にも本当に優しく、また人の立場によって態度を変えることなく誰に対しても丁寧だったと思います」と答えてくれた。

一方で、この事件をきっかけに、霊感商法など多くの問題を抱えたいわゆる統一教会と自民党との深い関係が浮き彫りとなった。安倍氏だけではなく、安倍派の大物議員らも含め多くの議員が教団関連の会合に出席したり、教団側から選挙支援を受けたりしていたことが明らかになったのだ。自民党は、いわゆる統一教会や関連団体と接点があった国会議員を180人と発表(2022年9月時点)。こうした関係に批判が高まるなか、岸田文雄首相は「(教団との)関係を遮断していると認識しておりますし、これからもこの方針を徹底するよう努力を続けてきたいと考えています」と語っている。

そして国は、世界平和統一家庭連合が高額献金や霊感商法などを通じ、多くの人に多額の財産的損害や精神的な犠牲を余儀なくさせたと認定。2023年10月、国は教団の解散命令を裁判所に請求した。 裁判所で国と教団双方の意見を聞いた上で解散命令を出すか判断することになる。解散命令が確定すれば教団は宗教法人格を失い、税制上の優遇措置を受けられなくなる。また、2023年12月には、教団の資産状況を適時把握できるようにする被害者救済のための法律が成立した。

弁護団によると山上被告は事件について「現在のような状況を引き起こすとは思っていなかった。宗教2世の人たちにとって良かったのか悪かったのか分からない」と述べているという。山上被告は殺人などの罪で起訴、事件をめぐる詳細な事実関係や犯行動機の核心は裁判で明らかになるが、現在、裁判がいつはじまるのか見通しはたっていない。

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