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【石川】ワインラベル いきいき描く 自閉症 本多さん制作

2023年1月22日 05時05分 (1月22日 10時36分更新)
本多響さんがデザインしたワインボトルのラベル。カラフルで愛らしく、それぞれに家族の思いが詰まっている=金沢市俵町で

本多響さんがデザインしたワインボトルのラベル。カラフルで愛らしく、それぞれに家族の思いが詰まっている=金沢市俵町で

  • 本多響さんがデザインしたワインボトルのラベル。カラフルで愛らしく、それぞれに家族の思いが詰まっている=金沢市俵町で
  • アニメの曲を聴きながら、原画を仕上げる響さん=金沢市俵町で

金沢のワイナリー 絵も味わって

 ゆったりと泳ぐカブトガニ、ブドウの天敵ながらかわいいアナグマ…。自閉症で知的障害のある本多響さん(24)=金沢市=が家族とともに働くワイナリー「ヴァン・ド・ラ・ボッチ」(同市俵町)でボトルのラベルデザインをしている。色鮮やかで、どこか愛らしい生き物の描写が静かな人気を呼んでいる。 (沢井秀和)
 響さんは、ワイナリーが二〇一七年に生産を始めた九種類のワインのラベルを手がけてきた。アンモナイト、シーラカンス、哺乳類の先祖アデロバシレウス、タツノオトシゴなど。母でワイナリー社長の路代さん(54)、父で栽培・醸造責任者の雅人さん(58)、兄の立樹(りつき)さん(26)とともに題材として選び、響さん自らペンを執ってきた。古代生物が多いのは「ワイナリーとして進化している最中」との思いをこめている。
 題材は食害が多かった年にアナグマ、自前の施設がなく委託醸造していた最後の年にヤドカリとし、ワイナリーの歩みを象徴している。白ワインが水の生き物、赤ワインが陸の生き物、ロゼが両生類と決めている。
 取材した日には、図鑑を参考にしながら、一時間余りで原画を完成させた。「カエルの表面の模様をケチャップやチョコレートのような色にした」「アニメの主題歌を聴きながら、いろんなイメージをつくっている」。でき具合を尋ねると、そんな言葉をたぐり寄せてくれた。
 幼い頃から絵を描くのが好きで「言葉のコミュニケーションより、絵を描くことで集中でき、安心できるよう」と路代さんは言う。金沢市内の放課後デイサービス・就労継続支援施設で創作を続け、十五歳で個展を開いた。施設の活動で、ブランケットやタンブラーもデザインした。
 「酸味がきいた白ワインにブルーのシーラカンス、味の余韻があるワインにはおおらかに泳ぐカブトガニ。年ごとのワインの味とラベルの絵がマッチしている」。そう声をかけてくれるお客もいる。

「わくわくする」

 響さんは「ラベル作りはかっこいいキャンバス。(描いていると)わくわくする感じ」と表現する。路代さんは「ワイナリーは私たち夫婦が亡き後も、響が働ける場をつくりたいと始めた。私たちのワインは、家族みんなで汗水をたらしてブドウを育て、発酵させ、響のデザインしたラベルを貼って完成する。ワインとともにラベルの絵も味わってもらえると、うれしい」と話している。

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