東京都知事選で注目を浴びた石丸伸二氏は、ユーチューブの動画拡散で支持を広げた。交流サイト(SNS)調査会社によると、期間中の関連動画の視聴は1億5000万回を超えた。専門家は「支持者が演説を短く編集した『切り抜き動画』が多く見られた」と分析。背景に、再生数を稼いで収益を上げる「アテンションエコノミー(関心経済)」があると指摘する。
石丸氏は自身の公式チャンネルや街頭演説で政策や主張を発信。支持者には、それらを収めた動画の拡散を呼びかけた。
都知事選候補者のSNS戦略を分析した「ネットコミュニケーション研究所」の報告書によると、選挙期間中の石丸氏に関連する動画の視聴数は1日当たり約1000万回に上った。目立ったのは支持者らの「応援アカウント」による切り抜き動画だ。石丸氏の公式を大幅に上回り、計3000万回に達した投稿者もいた。
戦略が奏功した要因は何か。東大大学院の鳥海不二夫教授は「石丸氏はバズる(拡散される)ことの重要性を理解し、再生数につながる話し方をしていた」と指摘。再生数が上がるほど広告収入を得られる「関心経済」を利用した側面があるとし、「石丸氏はコストをかけず、第三者が動画を作るインセンティブ(動機づけ)を与えた」と語った。
ただ、SNSは利用者の視聴履歴を基にアルゴリズム(計算手法)が表示内容を選別するため、情報が偏る恐れもある。ネットコミュニケーション研究所の中村佳美代表は「切り抜かれた動画をうのみにするのではなく、真偽性や政策の実行可能性を見極めることが重要だ」と話した。