旧校舎で女性タレントら120人の制服撮影会 「性的興行」と反対も
2年前に閉校した埼玉県鴻巣市の市立小学校の旧校舎で、民間事業者が13~15日、女性タレントら延べ120人余りが参加する制服・浴衣の撮影イベントを開く。近隣住民らは「少し前まで子供たちが学んでいた校舎での性的な興行と言え、ふさわしくない」と反対しているが、旧校舎を貸し出す市は「法令上、貸し出しを拒否する理由がない」と説明している。
会場になるのは2021年度末に閉校した市立笠原小学校。主催する事業者は旧校舎を有償で市から借りた。
この事業者は昨年、埼玉県営公園のプールで水着撮影会を企画し、過度な露出の水着撮影をしていると指摘された事業者のうちの1社。主催者のサイトによると、今回のイベントで水着撮影はないという。
市は旧校舎の有効活用のため、一般の法人・団体・個人に有償で貸し出している。貸し出しにあたっては「公序良俗に反しない」「宗教的・政治的な利用はできない」などの規定がある。
市によると、5月に貸し出しの申請を受けた時点で、県営公園のプールでの撮影会を企画した事業者であると認識していた。
そのうえで貸し出しの是非を検討し、今回は水着撮影はないことなどから「表現の自由」の範囲内と判断した。東京都立川市でも1月に旧校舎を会場とした制服撮影会を実施し、その際にトラブルはなかったとの前例も踏まえたと説明している。
「過度な肌の露出があれば即中止」との誓約書も
また、過度に肌を露出する撮影があった場合にはイベントを即中止するという趣旨の誓約書も提出してもらったという。
一方、3日間で延べ約120人の女性をほぼ終日撮影するというイベント内容を知った近隣の市民からは「つい2年前まで子供たちのまなびやだった。住民感情として受け入れられない」といった反発が出ている。
8月初旬に住民と複数の市議、市民団体関係者らが市を訪ね、貸し出しの中止を求めたが、市側は「断る内容のイベントとは言えない」などと回答したという。
市議の一人は「若い女性、コスプレの制服、現実に使っていた校舎という組み合わせに性的な商品価値があるのだろう。自治体が関わるべきではない」と指摘する。
笠原小は明治6(1873)年開校で、150年近い歴史があった。少子化による児童数の減少で2015年に閉校方針を決めた市に対し、住民から学校存続を求める声が上がり、閉校の正式決定まで約6年を要した。今回の反対には、そうした経緯も関連しているとみられる。
笠原小の敷地内では現在、住民らによるグラウンドゴルフや少年野球、市民マーケットなどが随時開かれている。市が3年前、旧校舎や校庭をどう再活用すべきか住民にアンケートをしたところ、高齢者福祉施設やスポーツ施設、農産物の販売施設を求める回答が多かった。
少子化が進み、公立小学校・中学校の閉校が全国で加速するなか、残った旧校舎や校庭をどう活用していくかは各自治体の課題の一つ。再活用の例としては、映画・テレビドラマのロケ誘致、企業のサテライトオフィスの入居などがある。(稲垣直人)
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- 【解説】
旧学校校舎などは稼働率の低い自治体の財産で、活用しないと老朽化含めて単に自治体にとってコストとなってしまいがち。実際にはサテライトオフィスやロケ誘致なども恒常的に成功している例はそれほど多くはない。「住民の声」を優先するのか、施設の稼働率を優先するのか、両立の方法を模索するのか最終的には政治判断と手腕が問われるところ。
…続きを読む - 【視点】
記事によれば、住民は旧校舎や校庭を高齢者福祉施設やスポーツ施設、農産物の販売施設として活用することを望む声が多いという。そうした希望を実現せず、逆に住民が批判するイベントに対して「拒否する理由がない」との皮相な理由から使用料目当てで貸し出す市の姿勢に疑問を覚える。市のサイト(https://www.city.kounosu.saitama.jp/page/3172.html)によれば校庭は通常は開放されているようだが、イベント期間中は近隣住民は締め出されることにもなる。 極度に短い場合もあるスカートの制服やはだけやすい浴衣を着た女性の撮影に男性が群がるイベントが、市の掲げる男女共同参画やSDGsとどのような関係にあるのかについても市側に説明責任がある。 以前に水着撮影会の中止に関して「責任は重く、深く反省しております」と謝罪した会社が運営する今回のイベントにおいて、現場でいかなる事態が発生するかについてはその場になるまでわからず、許可した市がその責任を果たすためには当日の巡回や状況の点検・報告が不可欠である。
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