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【書籍化決定、コミカライズ企画始動】Aランクパーティーから追放された俺、その直後に美少女コンビのSランクパーティーに勧誘される。「クズは不要」と言った元仲間達がどう困ろうが今更手遅れだから 作者:銀色の侍

第一章 パーティー追放編


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クビ宣告

初めての追放系の作品に挑戦してみました。もしよろしければ読んでみてください。


 「お前は今日限りでクビだ。ウチのパーティー【真紅の剣】にはもうお前みたいなクズは不必要な存在なんだよ」


 これまで何度も苦楽を共にした仲間から告げられたのは無情な解雇宣告であった。


 たった今パーティ―からのクビを告げられたのはパーティ―内で《拳闘士》の役職についているムゲン・クロイヤと言う名の黒髪の16歳の少年であった。

 そしてクビを告げたのはこのパーティー内で《魔法剣士》の役職を持ちリーダーを務めている同年代の赤髪の少年、真紅の剣の使い手たるマルク・ビーダルであった。


 「……一応理由を訊いてもいいか? どうして俺をクビにしようと?」


 大事な話があるから宿屋にすぐ来いと言われ来てみればいきなりのクビ宣告に少し驚きを見せるムゲンは説明を求める。だがそんな彼の反応を見てマルク以外の二人のパーティーメンバーが面白そうに笑い出す。


 「そんなこといちいち言わなくても分かりきってるでしょ?」


 「そうそう、あなたがどうしようもなく『無能』だからクビにするのよ」


 嘲りの声と共にそう言ったのは《魔法使い》のメグ・リーリスと《聖職者》のホルン・ヒュールの二人であった。

 彼女たちともこれまで何度も共に背中を預けて戦って来た間柄だ。だが今の二人の自分を見る目は完全に仲間を見る目ではない。まるでもう壊れて使えない不良品の魔道具を見る目だ。


 このムゲンと呼ばれる少年が何故無能扱いなのか、それは彼の持つ魔力量に問題があったからだ。

 

 この世界の人間は皆が大なり小なり魔力を保有している。だがその魔力総量は決して皆が等しく同程度のものではない。それぞれの持つ魔力量は異なり魔力の量が多ければ多い程に扱える魔法、武器や魔道具の質は上がり、そして冒険者として与えられる役職も幅広く変わってくるのだ。


 ムゲン以外の三人の持つ魔力量は彼に比べ多い。だからこそ三人は様々な魔法も扱え質の良い魔道具も扱える。だがそれに対して魔力量が少ないムゲンは精々魔力を肉体に纏わせる肉体強化ぐらいしかできない。だからこそ彼は『無能』の烙印を仲間達から押されたのだ。

 ギルド内に設置されている魔力測定の水晶で具体的な魔力量の数値を参考にするならムゲンの数値は500でありその他の3人は2000越えと彼の魔力総量は4分の1程度なのだ。


 痛い所を突かれ黙り込んでいるムゲンを見てメグとホルンの二人の小馬鹿にするような笑い声は次第にボリュームが大きくなる。そしてその嘲笑に被せるようにマルクはムゲンへ冷酷に告げる。


 「俺達は今やAランクの一流冒険者だ。そんな優秀な俺達の中にお前みたいな無能をいつまでも置いてやる事はできないんだよ」


 「無能を引き連れていたら私達の評価が下がる恐れもあるからねぇ」


 「私達の今後の為にもあなたには身を引いてもらいたいの。あなただって身の丈に合わないパーティーでは肩身が狭いでしょう?」


 このライト王国内にあるファラストの街、その冒険者ギルド【ファーミリ】は有名ギルドの1つで多くのパーティーが登録しているがその中でもムゲン達のようなAランクは少数だ。ギルド内でもAランクとなればそれだけで羨望の眼差しを向けられる。

 この四人の中でムゲンは周りの目など気にしないタイプであったが他の三人は違った。自分達は特別だと、選ばれた存在だと調子づき始めたのだ。その傲慢ぶりは次第に増長、ついにはこうして魔力量が少ないと言うだけで彼を自分たちのパーティーから追い出そうと考えたのだ。


 「それにお前は元々はソロで活動していたんだ。別にまた独りでも問題ないだろ」


 そう言うとマルクはまるでゴミでも捨てるかのようにムゲンの目の前に彼の荷物を放り捨てる。


 「荷物は纏めて置いてやった。もう出て行っていいぞ」


 「あんたが居ると私達のパーティーの名前に傷がついちゃうのよ」


 「分かってくれるわよね。無能の無能のムゲン君?」


 あまりにも一方的で非情な元仲間達の行為、しかしムゲンは特に怒りも悲しみも見せず足元に放られた荷物を手に取ると一言だけ口にする。


 「それがお前達の判断なら受け入れてやる。あばよ」


 「はん、予想以上にすんなりクビを受け入れたな。自分が無能だって負い目があった証拠だ」


 ほとんど言い返さず自分達の前から去ろうとするムゲンを最後の最後まで侮辱するマルク。他の二人も一切嘲笑を隠さずクスクスと彼の去り行く背中を見て笑っていた。


 「(本当…いつからコイツ等はここまで醜く歪んでしまったんだろうな)」


 背中を叩く元仲間達の嘲笑を受け止めながらムゲンは過去のパーティーメンバーを思い返していた。


 実は元々ムゲンはソロ冒険者として独りで活動していた。そんな彼とパーティ―を組んで欲しいと言ってきたのはあの3人の方からなのだ。

 ムゲンよりも後からギルドに加入した3人はまだ駆け出しで純粋な心根の持ち主だった。ムゲンの魔力量が低い事だって決して馬鹿にせず、依頼の中で彼に何度も救われその都度感謝の言葉をくれたものだ。だがパーティ―のランクが上がるにつれ次第に彼等は変わって行った。そして内心ではそんな3人に対してムゲンの方も見限り始めていた。酷い時にはモンスターから助けても、身を挺して庇って自分が傷ついても礼の一つも言わず『お前が無能だからそうなったんだ』と言う始末。


 「(それでも…それなりの時間を一緒に戦って来た仲間だから我慢していたが……)」


 どれだけ侮蔑されても昔の美しい過去が彼をこのパーティーに引き留め続けていた。だが今回の3人からの理不尽なクビ宣告でもうムゲンとしても呆れ果てて3人を仲間と見れなくなった。だからこそ彼は碌に反論もせず身を引いたのだ。


 宿屋を出ると彼の心象とは裏腹に外は快晴でありその暖かさにため息が漏れる。

 

 「さて…これからどうするかな?」


 パーティーをクビになった彼は落ち込むよりも先にこれからどうするかを悩んでいた。

 

 元々はソロで活動していた訳だしまた元のソロ冒険者に戻るとするか。それにハッキリ言って魔力量の低いオレと組もうなんて奇特なヤツも居ないだろうしな。

 幸いにもまだAランクパーティーとして稼いできた蓄えはある。金が入れば無駄遣いばかりしていたあの3人とは違い物欲が低いのが功を奏した。とは言え何もしなければいずれは素寒貧だ。


 「とにかくまずはギルドに行って掲示板の依頼でも見て来るか?」


 いつまでもウジウジしても仕方がないと自らの頬を叩きギルドの方へと足を運ぼうとするムゲンだったがその歩みは背後から止める者たちが居た。


 「あ、あの待ってください!」

 

 「少しお前と話がしたいんだが…」


 背後から聞こえて来たのは二人分の女性の声。

 踏み出そうとした脚を止めて振り返るとそこには予想外の人物が立っていた。


 1人は桜色の長く美しい髪をした自分と似た年ごろの少女。そして髪の色と同じ桜色を基本とした色調の服装をしており袖の無いノースリーブやミニスカートが少し目につく。

 もう1人は水色のショートヘア―にツリ目をした同じく十代後半と思われる少女。そしてその身には少し露出の高い鎧であるビキニアーマーを着ており目のやり場に少し困る恰好をしている。


 そしてムゲンを呼び止めたこの二人だが彼には見覚えがあった。


 「Sランクパーティ―【双神】の二人が俺なんかに何の用だ?」


 彼の前に現れたこの二人はファラストの街の冒険者の間では知らない者は居ないと言っても過言ではない二人組だった。何しろこの二人はたった今自分が脱退した【真紅の剣】より更に上ランクであるSランクパーティの冒険者なのだ。

 元々は違うパーティ―名だったがその強さから神の様に冒険者間では崇められいつしか【双神】などと言う大層なチーム名に変わったらしい。


 冒険者ギルドの最高ランクパーティーとは接点などなかったムゲンは当然だが何故呼び止められたのか分からない。

 一体何の用だろうかと思っていると桜色の少女がオドオドとしながら話しかけて来た。


 「あの、その…ム、ムゲンさんってその…パーティ―をクビになったって聞いたんですけど本当でしょうか?」


 大人しそうな顔をしている娘に随分とストレートに心を抉られた。

 そもそもどうしてその事実を知っているのかとも思ったがその理由はすぐに解った。大方マルクがギルドの受付でもうすでに【真紅の剣】から自分の脱退を伝えて処理していたのだろう。


 そんなことを考えていると水色のツリ目の少女が経緯を語ってくれた。


 「さっき【真紅の剣】のメンバーが受付嬢に話していたのを偶然聞いたんだよ。『ムゲンはオレ達に付いて行けないからパーティ―脱退を希望していた』とさ…」


 どうやら自分が宿屋へと足を運ぶ前から連中は勝手にそこまで手はずを整えていたらしい。

 ムゲンの脳内では受付嬢に馬鹿笑いをしながら自分を勝手に脱退処理している連中の姿が浮かび少し不快感が顔に出てしまう。

 

 そんな彼の表情の変化を敏感に察知した桜色の少女は何故か慌てて頭を下げた。


 「ごめんなさい。傷を抉るような真似をしてしまって…」


 「いやそっちが謝る必要はないだろ。俺の方こそすまない」


 元仲間であるAランクパーティとは違い最上位のランク冒険者の二人は特に尊大な態度を取る様子はなく少し毒気が抜けてしまう。

 だがこの直後に水色の少女から放たれた言葉にムゲンは思わず呆気に取られてしまう。


 「なあお前さ、今は誰ともパーティ―組んでないんだろ? だったら私らと新しくパーティ―を組んでみないか?」


 まさかのSランクパーティーからのその申し出にムゲンが呆気に取られてしまうのは無理も無い事だった。

 


 

もしこの作品が面白いと少しでも感じてくれたのならばブックマーク、評価の方をよろしくお願いします。自分の作品を評価されるととても嬉しくモチベーションアップです。

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