誰かのためとか言い始めたら１アウト。こんなに頑張っているのにとか思ったら２アウト。やりたいからやっていますと言えなくなったら３アウト。チェンジ。生き方を変える合図だ。誰かのためは、簡単に「誰かのせい」になる。よかれと思ってやることで、よくなった試しはない。心配をするのは、相手のためではなく、自分のため。相手を信じていないからだと思う。

神奈川在住の女性Ｒ様から「伊東の温泉旅館を取ったのだが、連れがキャンセルになったので空き布団がある。よかったら来ませんか？」と連絡をもらった。Ｒ様はシングルマザーで、中学生の娘と小学生の息子を育てている。こどもたちは最高に可愛かったが、Ｒ様は「こどもたちが言うことを聞いてくれなくて困っている」と言った。一緒に行動させていただく中で、なぜ、こどもたちが言うことを聞かないのか分かった。それは、親が話を聞いていないからだ。

聞くことと質問することは違う。聞くと「言わせる」は違う。言わせるは、強迫で、支配だ。聞く力とは、相手の中にある深い部分の声に耳をすませることであり、自分が言いたいことを言うことではなく、相手が語りたいことを語り出すまで、黙って見守る力だと思う。心配をするのは、信頼をしていないから。自分のことを自分でやれないと思っているから。心配する人の心には「あいつなら大丈夫だ」がない。言われた側は「そんなこと言われなくてもわかってるよ」となり、押し付けがましさが嫌になる。

心配と注意ばかりをされて育ったこどもは、不良になるか自分の殻に閉じ籠り、誰にも自分の気持ちを開かなくなる。周囲の人々は、こどもたちを「なんで言ってくれないの」と責める。言わせなくしたのは自分なのに、そのことに気付かず、何度も何度も「言わせよう」とする。問題は、親の不真面目さではなく、親の真面目さだと思う。真面目さが、親もこどもも窮屈な牢獄に閉じ込めて、関係者全員が不幸になる。親はこどもを信頼できないし、こどもは親に安心できない。心配と不安に、日々が苛まれる。

心配よりも信頼をしよう。注意ばかりで、見ないし、聞かない。それは、こどもに「グレろ」と言っていることと同じだ。暴力的になったり盗難癖が出るのは、暴力や略奪に、こどもたちが苦しめられたからだ。言うことを聞いてくれないのは、親が、言うことを聞いていないからだ。寝る前に、こどもたちと一緒にカルタをした。私は「喧嘩両成敗！」と言いながら、大人の本気を見せつけた。だが、あっけなく敗北した。勝利に歓喜するこどもたちの笑顔は、この日一番可愛かった。Ｒ様は「遊んでくれてありがとうございます」と言った。私は「遊んでもらったのは俺の方です」と言った。昔から、何かを「してあげる」という言い回しが嫌いだった。遊んであげたのではない。遊びたいから、遊んだのだ。誰かのためとか言い始めたら１アウト。こんなに頑張っているのにとか思ったら２アウト。やりたいからやっていますと言えなくなったら３アウト。生き方を変える合図だ。