それでも赤ちゃんが欲しい
不妊に悩む人々“最後の砦”
今、日本の全出生児のうちおよそ12人に1人が体外受精・顕微授精によって誕生している。
加藤恵一は、日々進化する「不妊治療」の牽引役。子宝に恵まれない人たちの切実な想いに寄り添う。
加藤が院長を務めるのは、 "最後の砦"とも言うべき東京・新宿のクリニックだ。ここで妊娠から出産に至るケースは年間3500例にも上る。世界でもトップクラスの出生数だ。
2022年に保険適用となった「不妊治療」。
加藤の指揮のもと、約30名の医師と高い培養技術を持つ約60人の「胚培養士」たちが日夜、患者の卵子や精子と向き合っている。
その不妊治療の現場に今回、初めてカメラが入った。
「あなたは不妊症で、着床不全だね」
患者にとって、加藤の言葉はときに冷たく聞こえる。
だが、現実を直視してもらうところから治療は始まるのだ。
加藤の父もまた不妊治療医。今ほど一般的ではなかった31年前、現在のクリニックを開設した。その後、父が施した「薬を極力使用しない治療」は、当時異端だった。そこには「患者の体にできるだけ負担をかけたくない」という信条があった。
父の背中を見て医師になった加藤は、思いを受け継ぎつつ結婚・出産年齢が上がってきた今の時代に合わせた治療を行っている。
不妊で悩んできた人たちにとって、宿った命を目の当たりにするのは人生が劇的に変わる瞬間だ。
でも「妊娠して終わりではない」と加藤は冷静に語りかける。
不妊治療の最前線に立つ医師の静かで強い思いに迫る。
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