今年5月末に女優の本橋由香さんが亡くなりました。2021年初め、首のリンパ節の腫れに気付き、検査の結果、「原発不明がん」と診断され、治療を受けていました。原発不明がんとは、いったい、どんながんなのでしょう。
がんが胃や肺にできると、それぞれ胃がん、肺がんと呼びます。どのがんももともと発生した臓器の細胞の特徴や性格を持っています。
肺の細胞ががん化した肺がん(原発性肺がん)と大腸がんが肺に転移した転移性肺がんは、治療法も治療薬も違います。
ゲノム医療すなわち、遺伝子変異に基づき、抗がん剤を選択する場合を除き、原発性肺がんには肺がんの、大腸がんの肺転移には大腸がんの抗がん剤をそれぞれ使います。
65歳の男性Aさんは、最近空咳(からせき)があり、体を動かすと息切れがします。心配になり病院を受診し、CT検査を受けました。胸の真ん中の気管や心臓がある縦隔のリンパ節が多数腫大し、気管を圧迫しており、両肺に複数のがんとみられる転移も見つかりました。
緊急で大学病院に転院し、縦隔リンパ節生検をして、病理検査や遺伝子検査を行いました。病理検査結果は発生臓器が分からない原発不明がんとのことです。がんマーカーも異常はなく、日々状態が悪くなっていく中、原発不明がんで最もよく使う抗がん剤治療を開始しました。
原発不明がんとは、組織を取って病理検査で転移したがんと診断されたものの、全身をいろいろ調べても、もとのがん(原発巣)が特定できないがんの総称です。