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【100の職種プロジェクト】第8回 知的障害、広汎性発達障害、ADHD×キャリアサポーター 

100の職種プロジェクトは、社会で働くさまざまな障害や特性がある人たちが、どんな職種や業種でどのように働いているのかインタビューし、障害種別・特性と職種・業種をかけ合わせた100通りの働き方を発信するプロジェクトです。個人が診断を受けている障害名に左右されず、個人の経験や環境に着目しながら、多様な人たちのさまざまな働き方やその環境について探求し発信し続けています。多様な選択肢のある社会を実現すべく、Collableのインターン生が取材を行っています!

今回は、デル・テクノロジーズ株式会社で人事本部キャリアサポートセンターに勤めている、新濃彩花(しんのあやか)さんにお話をお伺いしました。


Q.まずは新濃さんの障害とお仕事について、簡単にお聞かせください。

私は知的障害、広汎性発達障害と注意欠陥多動性障害(ADHD)の3つをもっています。読みが苦手で、文字を追うのに時間がかかったり、必死に追った結果内容を理解できなかったりします。なので音声読み上げシステムを利用してスムーズに対話しています。
また、上がりすぎてしまうテンションについては、コンサータというお薬の服用や、思いついたことを口に出す前にノートに書き留めることで抑えています。薬を飲むと自分が何を考えているか分かるようになるので、真っ暗な世界から色鮮やかな世界に変わっていくイメージです。そこからやっと自分がスタートできます。

あとは、相手の立場に立てないことがやたらと多くて、最近まですごく困っていました。そこでコミュニケーションについては、今まで生きてきた中で関わった方々の行動履歴を分析して、新しく会う人に対しても相手の気持ちを予測することで自分なりにうまくやりとりすることができていると思います。

仕事は、障害者雇用メンバーの支援です。障害者雇用で勤めている方のトレーニングやその人たちが他部署から受け取った業務の指揮もしています。私は当事者でありながら支援者をしています。

補足:デル・テクノロジーズ株式会社は、障害者雇用の取り組みとして、キャリアサポートセンターにて障害のある方を訓練生として雇用したうえで、1年間の研修プログラムを経て部門へ配属する「研修型雇用」に取り組んでいます。新濃さんはこの研修プログラムを修了し、現在はそのプログラムの運営側のポジションで働いています。

Q.具体的な業務内容を教えてください。

トレーニングの実施に関しては、その人の困っていることをメインに扱います。例えばコミュニケーションについて、質問に対して明確な答えが出せない人には1問1問を数多く出題する「100問100答」というトレーニングを出して簡潔に答えてもらう練習をしています。また、技術的なことでは、Excelの使い方や複数のタスクを管理するコツなどを教えることもあります。
それから、1on1(ワン・オン・ワン)と呼んでいる個別面談で、悩みや頑張りたいことを聞き出すことも支援として行っていますね。それぞれの苦手分野に合ったトレーニングを用意するためにも、個別面談とトレーニングはセットで行うことも多いです。
本プログラムに採用された方は1年間のトレーニングを終えた後、社内の別部門に移行し活躍してもらっています。また別部門に移行しない方には継続して支援を行っています。メンバーによっては長期的なお付き合いになりますね。

補足:1on1(ワン・オン・ワン)とは?
トレーナーと1対1で行う面談で、メンバーのメンタルサポートや自己理解のサポートを目的としています。 

Q.このお仕事を選んだ理由をお聞かせください。

大学を中退して、他の会社で今と全く違う仕事をしていたときに、LinkedInを通して今の会社からオファーがきたんです。研修生として1年間トレーニングを受けるうちに、「楽しい」「私もトレーニングする側になりたい」という気持ちが生まれ、トレーナーを目指すようになりました。当時の研修トレーナーにすごくお世話になり、その方に憧れたことも志望理由の一つです。

Q.現在の仕事で、自分の特性と合っていると感じる部分はありますか?

質問内容から外れるのですが、前職では知的障害という障害だけで個人が判断される会社で、ある意味配慮が行き届きすぎている環境でしたね。例えば私が依頼された仕事に取りかかろうとしたときに「これは障害者だったら無理だよね」「こんな難しいのやってるの?ごめんね」と言われてすごく苦しかったです。

そもそも私は障害種別や特性で仕事を判断しようとしていないんですよね。障害によって、この仕事が合う、合わない、は考えたことないし、考えたくもないです。それとは対称的に、現在は障害名によるイメージで個人が判断されずに仕事をしているのですごく働きやすいと感じます。

私に出来ないことがあるのは分かっていますが、実際に出来なくて困った時には周りの人の助けを借りたり、便利なツールを利用したりします。それって障害者も健常者も変わりませんよね。だからこそ障害に甘えたくないし、みんながお互いに出来ないところを補い合いながら同じ土俵で戦っていきたいと考えています。そういった理由から、私は困っているときにはアラートを出すので、そうするまでは過剰に手助けはしないでほしいって思っちゃいます。その点、私は障害に対する意識が他の人とズレているかもしれませんね。

Q.働く上で大切にしていることはありますか?

これを言ったらよく驚かれちゃうんですけど、一番は「自分のため」に仕事をすることですね。「メンバーのため」に支援業務をしていると、仕事としてやっている感覚になってしまって…私は自分が成長するために今の仕事をしているとはっきり言えます。

楽しいなって思う瞬間は、メンバーと1on1をしていて、後から「助かりました」と言われたり、私が出した課題や提案に対してすぐ実践してくれたりと、関わった人の成長の瞬間を見られた瞬間は嬉しく思います。メンバーの姿をみて学ぶこともあるし、私も頑張ろうと思えるんです。

それから、特に大切にしているのは「常に笑顔でいること」です。メンバーの前だけですけど(笑)。上司が困っていたら周りは不安になりますよね。過去に私の障害のことで上司が困った顔をしていて、自分が原因で困らせてしまっていることにすごく苦労した覚えがあります。だから私はメンバーが安心していられるように笑顔を心がけています。加えて、相手の頑張りを認めたうえで一緒に解決策を提案することも大切です。

Q.将来のビジョンがあれば教えてください。

今の仕事は、それが今のベストだと思っているから続けています。今後、もっとやりたいことができたり、他に楽しそうだなって思える仕事があれば転職するつもりです。人は変わっていくし考えも変わるので、もっと自分に合う仕事がでてきたらそっちに行きますかね。

そのためにも、自分の思った通りに動けるようにキープしておくことを意識しています。私の考えの根本には、障害関係なく「皆同じ人間」ということを社会として認識してほしいという大きな目標があります。そのためにやりたいと思ったことを惜しまずできる環境を、常に自分で整えておこうと思っています。例えば、この取材してもらえるならそこで伝えていこうということで時間を確保したり、将来やりたい仕事が出てきたときにすぐ移れるようにしておくなどですね。障害者だからではなくて、自然と誰もが寄り添い合える関係でいられる社会を目指していきたいです。

Q.最後に、学生時代にやっておいてよかったことはありますか?学生たちに向けてメッセージをお願いします!

勉強の面白さを知っていたことですかね。小さいころに母親とゲーム感覚で勉強をしていて、今でも自分のことや人のことを楽しんで分析できているので良かったと感じています。

学生時代にやっておいたほうが良かったと思うのは、習い事とか塾に通うとかですかね。それも、無理矢理強制されるのではなく、自分のやりたい習い事をすることです。私は今社会人をしていて、習い事や趣味などに充てられる時間が少ないです。学生時代の部活動がそのまま職に繋がることもありますよね。将来の視野を広げるためにもやっていて良いことだと思いますね。 

学生に伝えたいことは、自分ができること・好きなこと・得意なことを仕事にすることをおすすめします。好きなことの方が得意になりやすく、進んでいけると思うんですよね。自分の出来ることの中から、好きなことと得意なことを仕事にできると良いんじゃないかなって思います。理想が高いかもしれませんね。ぜひこの3つに当てはまるものは何?と考えてみてください。あとは、最初から不安な仕事はやめましょう!(笑)


新濃さんが将来のビジョンを見据えながらも今のお仕事を楽しめているのは、「自然と誰もが寄り添い合える関係でいられる社会を目指していきたい」というお話にもあったように、障害者と健常者の壁を社会的に無くしたいという大きな目標を持っていたからでした。トレーニングにはコミュニケーションに関するものが多くありましたが、ご自身が日頃から分析を積み重ねて掴んだ「人との接し方」を、今のお仕事に活かされていているということが伝わりました。今回は新濃さんが行っている研修メニューの詳細は省略させていただきましたが、「相槌のレパートリーを考える」「タスク管理の仕方」など私も気になるものばかりでした!
ここでは掲載しきれないお話も沢山ありましたが、新濃さんの働き方を少しでも伝えられて嬉しく思います。インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!

参考記事:
障がい者雇用担当者交流会FLAT(ふらっと)セミナー「デル・テクノロジーズの研修型雇用」~障がい者雇用の新たな道とその実践~


取材にご協力いただく当事者の社会人の方を探しています。障害や特性と職種をかけあわせた100のパターンを発掘するためにはまだまだ事例が足りません。ご協力いただける方は以下のフォームよりお知らせください。事務局より数日内にご連絡させていただきます。
なお、以前フォームにてご連絡いただいた方にはご連絡をさせていただいておりますが、メールエラーなどで届いてない事例が相次いでいるようです。ご迷惑をおかけしてまして申し訳ありませんが、もしご協力いただける方は改めて下記のフォームよりお知らせいただけますと幸いです。

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この記事を書いたのは「りな」。インドア派な大学3年生。趣味はお弁当作り。休日は作ったお弁当を家で食べています。

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