ウロンダリアの神格について

 ウロンダリアにはこの地の特殊性から多種多様な神格が存在している。ここでは、ウロンダリアでも多くの人々が知り、信仰している『神教』の対象となっている神々について説明していく。

シグマス

 シグマスは『全知と座標』を司るとされており、突出した人気は無いもののウロンダリアの民の多くが知る存在で、しばしばウロンダリアの主神に等しい神格とされている。この神格は無限世界におけるウロンダリア、世界における個人のありよう、という相関性こそが祝福そのものである、という概念神であり、したがって全ての生あるものは意味がある、すなわち祝福されているという寛容な思想がある。

 その姿は逞しい肉体をした男性あるいは女性で、頭部は星の海を映す暗黒の球体となっている。

 教義は『一にして全、全にして一』『世界とは己そのものであり、すなわちそれは祝福である』というもの。よって全ての人は基本的にシグマスの信徒とも解釈ができる。

 知性、見識、視力、精神の安定に特に加護が働くとされており、魔術師には信徒が多い。

 また、彼の神像は男性、女性の肉体が重なった状態で立ち、また手足を広げて比率と相関を示唆しつつも(※ウィトルウィウス的人体図のようなもの)頭部は神秘的な滑らかな球体という描写がなされている。

※この項は加筆予定です。

陽炎の武神マリーシア

 ウロンダリアにおいては主に『幻教(幻像神教)』と呼ばれる神教の主神であり、古王国、新王国とも人間の信徒が多い。マリーシアは武神だが可愛らしく美しい姿をしているとされ、尊称は『陽炎の姫君』『銀の姫君』など。

 その姿は南国の海のように澄んだ青い目、輝くような銀髪と手足の見えるような銀の衣装、そして黒く見事なマントを羽織っていると伝わっている(※このマントが誰のものかは、物語を追いかけている方々には推察できるはず)。また、星神としての権能もあるとされ、才能と見識の発露である星の多い夜空もその象徴であるとも。

 ウロンダリアのとても星が多く色彩豊かな空は『女神が星の砂をこぼした』と形容され、この『星の砂をこぼした女神』が誰であるかはいまだに多くの神学者たちが研究している。このうち、信徒の多いマリーシアもそのような逸話が伝わっている。

 原初のウロンダリアは広大だが悪しき者も数多く訪れる厄災の地であったともされ、神々と人のそれらとの戦いは長く続き、少しずつ良き土地が定められていったと伝わる。彼女はこの時にいずこからか現れて新たに神々の勢力に加わり、ウロンダリアを広く安定させる絶大な働きをしたと伝わっている。それ以前の事についてはおそらくこちら。※無限世界イスターナルとウロンダリアで彼女の姿が違う理由は本編その他を読んでいる人には推し量れる模様。

 その教義は『生者必争、即ち武心無くして生無し』というもの。意味は、『生きとし生けるものは必ず争う宿命にあるので、その争いを制する清く猛き闘争心は無くてはならないもの』という美しく可愛らしい容姿とは裏腹に苛烈なもの。

 武神としては陽炎のように実態を掴ませず、基本的にはあまり武器を用いない無手での戦いが多いが、武器を持ったら手が付けられないとされている。

 ウロンダリアにおいての彼女は武力、武心、努力、内省、争いごと、恋愛、才能と努力、各種の職能、星見ほしみなどを司っているとされ、信徒は数多い。一方で争いを肯定しているために彼女の粘り強い信徒との争いごとに疲れ果てて強い拒否感を示す人もいる。

 またウロンダリアの上位魔族の姫たちからは大変に恐れられている神格でもあり、『中身は人食い鬼』『戦闘狂』など散々な言われようでもある。

 獰猛な古き狩猟の女神モーンとマリーシアは大変に仲が悪く、どちらか片方しかウロンダリアに居ない、という噂があると同時に、モーンを信仰する狩人たちもマリーシアを信仰することはほぼないとされている。

※この項は加筆予定です。

麗しきカイネ 

 近日掲載予定です。

戦女神ヘルセス

 ウロンダリアの八つの古王国、その東方の守りにして『猛き武人の国』バルドスタ戦教国せんきょうこくの主神。澄んだ青い目と流れる黄金の髪をした美しい女性の姿に、青白く燃える大鷲の翼を持つとされる戦女神で、尊称は『美しき大鷲』とされる。その教えは『戦翼教せんよくきょう』または『翼教よくきょう』などと呼ばれ、本国以外では傭兵団などに信徒が多い。

 その教義は『翼を持ちて俯瞰し、諸事勝利せよ』というもの。これは遠大で長期的な努力を大切なものとするほかに、なるべく高い位置から全体を俯瞰しては把握し大局での勝利を得る事が大切であると説いている。この思想は個人にとどまらず、長期的な国家の運営戦略や大きな戦での勝利を得る際に特に有効とされ、この思想によってヘルセスは戦女神と呼ばれている。

 また、彼女の思想を書物にまとめたとされる『大鷲の書』全六巻は兵法書としても人気で、ウロンダリアでは古代から読まれている教養書の一つとされている。

 一方、女神としてのヘルセスは井戸やかまど、料理、家庭での教育や女性の健康と美なども司っており、またバルドスタの女性特有の柔らかな『女言葉』も彼女の発案だとされている。働き者で武術のたしなみを身に着けた気が強めの女性が多いバルドスタでは、女性が信頼した相手にのみ用いる上品で柔らかな『女言葉』というものがあり、これが気の強いバルドスタの女性を魅力的にしている大きな要因となっている(※ウロンダリア編の第二章でのルインに対するアーシェラの言葉遣いがこれにあたる)。

 結果的に、硬派な男系国家に見えるバルドスタは実質は女性が男性を巧妙に動かしている女系国家となっており、その視点でバルドスタを俯瞰するとヘルセスの遠大な意図が見えてくるとされている。

※この項は加筆予定です。

嵐の父アダード

 アダド、アダガル(アダのオヤジ、という意味)などとも呼ばれる、ガシュタラ万藩王国ばんはんおうこくの主神。逞しい上半身には何も身に着けず、長い髪と髭を蓄えた壮年男性の姿をしている。棘だらけの栄螺さざえを模した戦槌と、沼藤ぬまふじの弦の絡んだ楕円形の火伏ひぶせの大楯を持ち、大抵は暴風雨と共に表現される、嵐と農業、漁業の神であり、また戦神でもある。

 十一人の妻と多くの娘たちがおり、この娘のうち、水と慈悲の女神シェアリスとその妹である豊穣の女神シュリラはガシュタラ万藩王国にとどまらずに人気が高い。

※この項は加筆予定です。

爛れの女神ムルマ

 古王国、新王国共に、ウロンダリアにおいて神像や小さな祠が最も多いと考えられている優しき女神。幼子を病気や不幸から強い思いで見守るとされ、それが自分の身をただれさせるほどに愛情深いとされている。または、人々の苦しみの一部を身代わりとして受けているとも。この性質により彼女はただれの女神』と呼ばれる。ウロンダリアの多くの地においては子供の生まれた女性がムルマに祈りを捧げるようになることが多く、彼女の教えと祈りの言葉を集まって捧げるただしずめのこうが各地で連綿と続いており、これに参加する女性はとても多い。その教義は『誰かの安寧を願えるのは幸せな事である』というもの。

 また、水辺や山、森などの危険な地域との境界には素朴な彼女の祠や神像が立てられ、その場所から先が危険地帯であることを示唆している事が多く、また、そのような場所で遊ぶ子供たちの安全を見守る意図もあるとされている。

 家庭や子供の安全、厨房に関する事全般、調薬、刺繍や宝飾品、衣服など女性の関わる手仕事、鉱石や宝石の採掘と加工を司っているが、意外な事に女性側からの道ならぬ恋心も司っているという噂があり、ウロンダリアには幾つかのそのような思い専門の祠や神殿も存在している(※全身を白い布で覆い隠して深夜にしか参拝出来ない、プロマキス帝国のムルマ神殿がもっとも有名)。

 穏やかで優しい教義に比しては少し強い爛れの概念や、女性の道ならぬ思慕にも加護を与える、という性質から、穏やかな彼女の本心はかなり苛烈なのではないか? という推察が古代からあり、しばしば彼女が神ではなく強大な魔族ではないか? という解釈やそのような宗教団体も現れては消えるが、聖王国にあるウロンダリアの神々を刻んだ『神名録しんめいろく』において、彼女が強大な魔族であるという説は明確に否定されている。しかし、彼女に関しての不穏な噂は定期的に浮上しては消える事がない。

 これは、彼女由来とされる『白き魔術』や呪術の類が幾つか民間に伝わっている事や、彼女に祈りをささげた道ならぬ恋の結果が幾つかウロンダリアに文学として残っているからであろうとされている。

 調剤に関しては植物や鉱石由来のムルマ学派がウロンダリアの医術の大きな一角を占めており、シスラ共和国には彼女の大きな神殿と共に調剤に関する大学と研究所が併設されている。また、各地の有人のムルマ神殿は薬の処方と薬の材料の買取を行っており、この伝達網はウロンダリアのほぼ全土に広がっている。

 これほどに信仰を集めていながら由来が分からず、また慈母の面だけではない謎に満ちたムルマは、ウロンダリアの女性の性向の一面に寄与しているとする説が根強い。

※彼女の大いなる謎はウロンダリア編の第四章で一部明らかになります。

※この項は加筆予定です。

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