「生成AI教育は令和の公教育の責務」 文科省検討会議

「生成AI教育は令和の公教育の責務」 文科省検討会議
学校での生成AI利用を巡って意見が交わされた検討会議=オンラインで取材
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 学校現場での生成AI利用のガイドライン改訂に向けて議論している文部科学省の検討会議(座長・石川正俊東京理科大学学長)の2回目の会合が8月8日、オンラインで開かれ、生成AIの事業者や有識者へのヒアリングが行われた。生成AIの技術がめざましい速度で進化する中、ヒアリングの出席者からは「AIの使い方を積極的に学ぶべきとの言説があるが、AIを使いこなすにはむしろ人間自身の素の能力が必要だ」「生成AIの教育の機会提供は、令和の時代の公教育の責務」といった意見が出された。

 同会議は、生成AIによる社会の変革が急速に進む中、昨年7月に作成した学校現場で活用する暫定的なガイドラインの改訂版の取りまとめに向けて議論を進めている。同日は、Google合同会社や日本マイクロソフトなど教育現場に生成AIを提供している事業者や、学校現場での普及に取り組む検討会議委員を務める有識者から取り組み状況や意見などのヒアリングが行われた。

 この中で、㈱GenesisAIの今井翔太社長は「生成AIの現在地と未来及び教育への影響」をテーマに研究者の立場から報告した。今井社長は生成AIの進化について、言語はすでに医師国家試験や司法試験に合格できるレベルに達し、数年後にはホワイトカラー的な能力に関してはほぼ全ての能力で人間を超えると予想されるとの見方を示した。

 その上で子どもたちに対する教育については、「問題解決能力はAIには勝てず、解決すべき問題を見つける」ことが求められる時代が到来すると指摘し、「教育段階では従来教科よりAIを積極的に学ぶべきとの言説があるが、AIを使いこなすにはむしろ人間自身の素の能力が必要であり、AIに関しては最低限の教養があればよい」との意見を述べた。

 同会議の委員から「最低限の教養とは、どの程度の内容と考えるか」と質問が出されると、今井社長は「生成AIツールがどうとか複雑なテクニックなどはすぐ更新されるのであまり意味はなく、一般的な生成AIの仕組みを知ることが最低限の教養と考える」と答えた。

 続いて検討会議の委員を務める、NPO法人「みんなのコード」の利根川裕太代表が、同法人の活動状況を報告し、全国の小中高100校を対象に「みんなで生成AIコース」を提供したプロジェクトや千葉県の小学校で実践した授業事例などを紹介した。この中で利根川代表は、学校が心配しがちな有害なメッセージが検出されるとエラーとなる仕組みに触れ、4211人が利用しエラーを送信したのは3人のみだったことや、授業では児童とAIの対話が進むにつれて創造的な内容になったことなどを説明し、大変意義のある成果が得られたと強調した。

 その上で学校教育での生成AI利活用について、「子どもたちがよりよく生きるために、AIの教育の機会を提供することは令和の時代の公教育の責務と考えている」と提言。AI活用を巡っては世代をまたいで格差が広がる可能性もあり、小学校からの積極的な活用を推進すべきとの考えを示した。

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