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弁護士が教える黙秘実現のための6つのステップ- 逮捕されても話さないための極意

最近、黙秘権について、法曹界だけでなく社会全体で議論が活発になっています。これは非常に喜ばしいことです。しかし、現実の刑事手続きにおいて、被疑者が黙秘権を行使し続けることは、想像以上に困難なことです。適切な弁護士の助言と支援がなければ、黙秘を貫くことはほぼ不可能と言えるでしょう。
私は捜査弁護の研修講師として、多くの若手弁護士から「黙秘を助言したのに、被疑者が話してしまう」という相談を受けてきました。そこで今回は、私が実際の接見でどのように黙秘を助言し、被疑者に実行してもらっているかをお話しします。
最初にお断りしておきますが、今回は「黙秘することが最善策だと弁護士が判断した後」の話です。個々の事件で黙秘すべきかどうかをどう判断するかという点については、別の機会にお話ししたいと思います。
では、黙秘権行使を実現するための「6つのステップ」をご紹介します。

ステップ1.黙秘がベストであるという結論を明確に伝える

まず、「黙秘してください」と明確に伝えることが重要です。「黙秘することもできます」といった曖昧な言い方や、「言いたくないことは言わなくていい権利がある」といった被疑者の判断に委ねるような言い方では、黙秘は実現しません。弁護士である私自身が、黙秘が最善の対応だと確信していることを、自信を持って伝えます。

ステップ2.なぜ黙秘がベストなのかを説明する

次に、なぜ黙秘が最善の方法なのかを説明します。ここでは、私自身の思考プロセスをそのまま伝えるようにしています。この点がまさに「黙秘すべきかどうかをどう判断するか」の話しですので、詳しくは別のnoteにしたいと思っています。ここでは簡単に3つのことをお話します。
a) 話せば話すほど信用されなくなるリスクが高まる

  • 客観的証拠(防犯カメラ映像、通信履歴、GPS記録など)と矛盾する危険性

  • 供述が変遷してしまう危険性

b) 話せば話すほど検察官が起訴に踏み切りやすくなる

  • 検察官は被疑者の供述を弾劾する証拠さえ集まれば起訴の覚悟ができる

  • 黙秘状態だと、検察官はあらゆる可能性を潰す証拠を集めなければならず、起訴のハードルが上がる

c) 話すことで得られるメリットがない

  • 重大事件の場合、否認しても認めても不起訴になる可能性は極めて低い

  • 余罪が想定される事件では、1つの事件について話し始めると他の事件にも波及しやすい

ステップ3.黙秘がベストであることを「あなた自身が心の底から納得することが重要」と説明し、質問に答えていく

日本では、取調べに弁護士が同席する権利がまだ認められていません。つまり、取調室では被疑者が一人で黙秘を貫かなければなりません。そのためには、被疑者自身が心の底から黙秘が最善の方法だと納得していることが不可欠です。
私は「どんな些細な疑問でも構いません。不安なことは何でも聞いてください。そうしないと黙秘は実現できません」と伝え、徹底的に質疑応答を行います。

ステップ4.黙秘のやり方を具体的に説明する

多くの被疑者は「黙秘」の具体的なやり方を知りません。「記憶にありません」「わかりません」「覚えていません」と答えることが黙秘だと誤解している人も少なくありません。
私は2つの方法を提案しています:
a) 最初の質問に「黙秘します」と答え、その後は一切話さない
b) すべての質問に「黙秘します」と繰り返し答える

リスクを考えると前者の方が望ましいですが、完全に沈黙を保つことは想像以上に苦痛です。そのため、被疑者自身にどちらが耐えやすいか選んでもらいます。どちらを選んだとしても、今後の状況次第で変更することもあります。

ステップ5.黙秘すると捜査機関が行う説得の手口を予告する

捜査機関は様々な方法で黙秘をやめさせようとします。例えば:

  • 「黙秘していると家族と会えない期間が長くなる」

  • 「家族は黙秘してほしいとは言っていなかった」

  • 「お前の弁護士は若くて大丈夫か」

  • 「黙秘すると刑罰が重くなる」

こうした言葉を予め伝えておくことで、実際に言われたときのショックを和らげることができます。こちらは別のnoteで詳しくお話しています。

ステップ6.ロールプレイを行う

最後に、これまでの説明を理解し実行できるかを確認するため、ロールプレイを行います。私が捜査官役となり、黙秘をやめさせようと様々な働きかけをします。
特に注意するのは、「すでに話してしまったこと」「事件に関係のないこと」「雑談」です。これらは「取調べではない」「もう話したからいいだろう」と被疑者が考えてしまい、話してしまうことが多いものです。ロールプレイで一度失敗を経験させ、注意しておくことで、取調べ本番での失敗を防ぐようにしています。

助言後最初の取調べでその後が決まる

黙秘を実現できるかどうかは、弁護士の助言を受けた直後の取調べがカギとなります。ここで黙秘を貫くことができれば、被疑者自身の覚悟も決まり、最後まで続けられる可能性が高まります。捜査機関も、この時点で黙秘を崩せなければ、その後の取調べで話させることは難しいと判断するでしょう。最初の取調べで黙秘ができないと、その後も黙秘できたり出来なかったりを繰り返すことが多いのが私の印象です。 助言後最初の取調べが重要であるということは、6つのステップは初回の接見で全て行わなければならないということです。もちろん事案の複雑さにもよりますが、私は黙秘がベストだと判断できるだけの内容を聞き取れた段階で、細かい内容の聞き取りより、この6つのステップを優先します。事情の聞き取りは今後の接見でも可能なためです。

まとめ

私がお伝えした黙秘を実現するための6つのステップは、特別なものではないと思います。しかし、これらを適切に実行することで、ほとんどの被疑者が黙秘を貫くことができています。その理由は単純です。私は数多くの刑事事件を担当し、黙秘の有効性を幾度となく目の当たりにしてきました。その経験に基づく確信があるからこそ、被疑者の方々に心からの納得を得られる説明ができるのです。刑事事件で逮捕された際、最初の数日間の対応がその後の展開を大きく左右します。この重要な時期に、経験豊富な弁護士のサポートを受けることは、被疑者の権利を守り、最善の結果を得るために不可欠です。

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コメント

667
自供以外の証拠を捜査機関に捕捉されている場合、黙秘は意味がないように思いますが、如何でしょうか?
弁護士髙野傑
コメントありがとうございます!日本では取調べ期間中(起訴される前)には、捜査機関がどのような証拠を持っているかは被疑者の方も弁護人も教えてもらえないんです。また、仮に不利な証拠が−5あるとしても、黙秘をして−5に留めるのと、話しをしてしまって−10になってしまうのとどちらが良いか、ということも考える必要があると思っています。
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刑事弁護人の髙野傑です。早稲田リーガルコモンズ法律事務所パートナー弁護士です。 刑事事件について、わかりやすくお話しします。 メール:takano.s@legalcommons.jp Twitter:https://twitter.com/su_takano
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