東日本大震災および原発事故から13年の経緯から学ぶ

                                                                           鴨下全生

 災害時に発生する問題点の推移について記述する。災害サイクルに従い分類すると、まず、発災から72時間の超急性期、72時間から~1週間の急性期、1週間から~1カ月の亜急性期、発災から数カ月~数年の慢性期に分けられる1,2,3)

 超急性期は災害が発生し多くの住民が混乱しながら行動を行う時期となる。家屋の倒壊などの様々な障害に遭遇し、避難を行ったりするのがこのフェーズである。保健活動においては、住民の生命や安全の確保を第一に行うのがこの時期で、医療救護活動においては多数の傷病者が搬送されるが、交通機関やライフラインの断絶によって様々な困難が生じる状況となる。災害によって負傷した受傷者や、災害前から医療のニーズが高かった患者など、医療のニーズは非常に高まるが、それら全てに対応することができずに、トリアージが行われる場合もある。精神面でも、家族などの行方不明者に対する心配、生きていられたという安堵、再度起きる可能性のある災害への不安など、様々な感情が渦巻いており、その混乱から興奮状態になることもある。避難所や自宅で起きることとしては、飲料水や食料の不足、高齢者用の食品や幼児用の食品など特殊食品の不足、必要な介護が受けられない、障害等により避難所での移動やトイレの使用の困難などが起きる可能性がある。また、慣れない集団生活による緊張、ライフラインが断絶したことによる衛生状態や生活環境の悪化が起こる可能性がある。

 次の急性期では、避難所対策が重要となる。被害状況が把握できるようになり、ライフラインが復旧し始め、支援の受け入れ態勢が確立してくる。防災用品の備えは、おおよそこの時期までである場合が多く、三日が経過してもそういった支援が受けられない状況はあまり想定されていない。身体面で起きてくることは、様々なストレスによるアレルギーや喘息などの持病の悪化。服薬の中断による健康状態の増悪。野菜やビタミンの不足。慢性疲労や怪我の増加。運動不足や口腔内トラブル、感染症が起きてくる可能性がある。精神面でも、プライバシーが守られない、衣類の洗濯が出来ない、子どもの情緒が不安定となり泣き声が増えるなど、様々なストレスの要因が発生し、不眠、疲労感、苛立ちなどが蓄積していくようになる。また、治安の悪化などが起きてくるのもこの時期である。

 亜急性期では、避難所から次の住まいへの移行などが起こる。地域医療やライフライン、交通機関が徐々に復旧してくるが、それに伴い、避難所や医療チームの活動が徐々に終了していく。新たな負傷者は減少するようになってくるが、このあたりから、生活の基盤を確保できる人とできない人の格差が表面化していく。防ぎえた災害死・災害関連死が増加するのもこの時期である。

 慢性期においては、避難生活は長期化しているが、ライフラインはほぼ復旧し、仮設住宅対策やコミュニティづくり、精神疾患への対応などが重要となってくる。一般的には復興対策期、復興支援期などと呼ばれたりする。

 東日本大震災および原発事故とからめて考えていく。まず、震災と原発事故による、超急性期、急性期、亜急性期は、災害の規模と救助の困難さに大きな隔たりこそあれ、被災者の心理的には似たような経緯を辿る。しかし核災害という特殊性によって、その後が一般的な自然災害と比べ大きく異なってくる。すなわち緊急避難フェーズ以降は、放射能汚染という核災害の特殊性によって、本来であれば徐々に復旧させていくフェーズになっても、復旧することが不可能となったのである。また、天災ではなく人災であることによって、災害でありながら加害者と被害者という立場が生まれることとなった。このことも、問題を複雑にしている原因だと考える。自然災害のみであれば、行政が被災者や被害者の対応を行うことによるデメリットはあまりない。実際、震災などが起こった際には、行政の対応に注目が集まり、内閣の支持率が上昇するという現象が起きる4)しかし原発事故の場合は、原発政策は国策で進めていたものであり、賠償などの対応をすればするほど、国策の失敗として行政が追及されてしまう可能性が高まる。このことによって、通常の災害とは異なり、適切な対応を行うことが難しくなってしまったのではないかと考える。実際に、原発事故の問題の対処にあたった菅直人元総理の東京18区の選挙では、原発事故前から原発事故後で票の半分近くである8万票近くを失っている。民主党自体の問題とも言えるところはあると考えられるが、同じように民主党で総理を経験した野田元総理は逆に票を増やしている。また、2011年6月の世論調査でも原発事故対応について評価しないが63パーセントとなっていることからも、原発対応については厳しい目が向けられていることが分かる5)このようなことから、失敗した国策の処理には関われば関わる程、追及されやすくなってしまい、支持を失ってしまう可能性が高いのではないかと考える。

 これから、どうすべきかについてだが、今までに述べたように、政治家が失敗した国策の処理に関わった時に支持を失うという問題については、正直、解決策が思いつかない。どのような対応を行ったとしても、国の失敗という印象をぬぐうことはできないだろう。そして、その悪印象は、原発を作った当時の為政者ではなく、事故当時の政策の決定者に向くことになる。ただ、そもそも、国の失敗であるのだから、その印象がぬぐわれてしまったらそれこそ問題ではある。しかし、ある程度の解決策として提案したいのが、反対を押し切って原発を新設したり再稼働を行ったりした場合には、原発の名前にその政策を進めた決定者の名前(首相など)をつけるということを提案したい。現在であれば岸田原発一号機などとし、そこでの不祥事が起きた場合はその責任者の名前が一緒に報道されるようにするというものである。福島原発事故では地域の名前が原発につけられてしまっていたことによって、原発の問題を扱うたびにフクシマというマイナスの印象がついてしまうという問題もある。こういった問題についても、責任者の名前をつけることによってかなり低減できるのではないかと考える。少なくとも、反対の意見を押し切って政策を進めた場合は、問題が起きた際にその責任者の名前とともに報道されるようにするというのは一つの解決策ではないかと考える。野田原発2号機、安倍原発4号機のように、その原発を新設もしくは稼働した責任者の名前を冠した原発は、事故を起こした際には、責任者の名前と共に報道されることになり、責任の所在が明らかになる。そしてその原発は、やがて廃炉になる日まで、当時の首相の名前で呼ばれ続けるのである。そうすれば、『原発事故に国の責任はない』などという最高裁判決は、国民世論が許さなくなるだろうし、為政者も、自分の名前を冠したくないような政策を押し通せないようになるのではなかろうか?

 

参考文献

1.東京都保健医療局.「Ⅲ フェーズごとの災害時のイメージ」. フェーズごとの災害時のイメージ 内容.https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/nisitama//tiiki/kadaibetu_plan/saigaiguideline_phn.files/guideline_p15-22.pdf, (2024/03/29閲覧)

2.災害医療大学.「災害時における医療ニーズの変化」.災害サイクルから見る医療ニーズの変化【災害医療概論 5限目】.https://bigfjbook.com/gai-5/, (2024/03/29閲覧)

3.日本災害看護学会.「災害看護関連用語 災害サイクル」.災害看護関連用語 災害サイクル.http://words.jsdn.gr.jp/words-detail.asp?id=23#:~:text=%E7%81%BD%E5%AE%B3%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%81%AF%E3%80%81%E7%81%BD%E5%AE%B3%E3%81%8C,%E7%94%9F%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%9F%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82, (2024/03/29閲覧)

4.テレビ朝日.POLL 世論調査」.政党支持率推移グラフ - POLL 世論調査.https://www.tv-asahi.co.jp/hst/poll/graph_naikaku.html, (2024/03/29閲覧)

5.朝日新聞.「風評対策取り組むものの事故対応の評価低く 「内憂外患」だった内閣」.風評対策取り組むものの事故対応の評価低く 「内憂外患」だった内閣.

https://www.asahi.com/articles/ASR8X3RD7R8QUZPS002.html, (2024/03/29閲覧)