1980年代にアルツハイマー病脳内において低下している神経伝達物質が検索されました。その結果、アセチルコリンが低下していることが分かりました。また、アセチルコリンを合成する神経細胞が変性していることも見いだされました。そこで、研究者たちは「脳内アセチルコリンレベルを上げれば、症状が緩和されるのではないだろうか」と考えたわけです。脳内でアセチルコリンを分解する酵素がアセチルコリンエステラーゼなので、これを阻害する薬品の設計と合成が精力的に行われました。その結果、コリンエステラーゼ阻害剤であるドネペジルが開発されました。国外でも同様の薬品を合成する努力はなされましたが、総合的にドネペジルを超えるものはありません。ドネペジルは比較的副作用が弱いこと、および、一日一回の副用ですむことが長所です。アセチルコリンエステラーゼの阻害剤は強すぎても弱すぎてもよくありません。
アルツハイマー病の発症機構カスケードにおいて、アセチルコリン低下は下流に位置します。