群馬県高崎市の漆山古墳、地権者が市に寄付
群馬県高崎市内にある「漆山古墳」とその周辺の土地約1500平方メートルが、地権者から高崎市に寄付された。漆山古墳は580年ごろに築造された、やや大型の前方後円墳。もともとの墳丘の長さは70メートル(現在は約40メートル)で、8メートルの奥行きを持つ横穴式石室が残っている。市は今後、史跡に指定するなどして保護するほか、案内板も設置する方針だ。
古墳があるのは上信電鉄「佐野のわたし」駅の南方。6世紀後半に現在の高崎市に置かれたヤマト朝廷の直轄地「佐野屯倉(みやけ)」があったとみられる土地に位置し、屯倉の管理者であった豪族が葬られている可能性が高い。
盗掘のため副葬品などはほとんど出土していないが、20年ほど前の調査で当時の馬具が見つかっている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産候補になった「上野三碑」との関連も指摘され、考古学上も重要という。
江戸時代から一帯の土地を所有する堀口家によって保全されてきたが当主が高齢化し、手入れが難しくなってきたため寄付を決めた。旧所有者の堀口吉久氏(89)は「先代から古墳の大切さを教えられ保存してきた。寄付を受け入れてもらい喜んでいる」とするコメントを市教育委員会を通じて寄せた。
東国文化の中心だった群馬県には古墳が多く、戦前に行われた全県調査で8423基が確認された。県内最大の古墳は墳丘の長さ210メートルの天神山古墳(太田市)で、国の史跡に指定されている。道路や宅地の造成で失われたものもあるが、高崎市内だけでも現在、100基ほどの古墳が残る。
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