なぜ「無理」なのか
無理だと書いた理由はこうです。
仮に天体1の加速度に対する式を解くとしましょう。つまり天体1の位置を表す関数を見つけようとします。その方程式には天体2の位置(を表す関数)と天体3の位置(を表す関数)が含まれています。最初に天体1に関する方程式を解こうとしている段階では、残りの天体2に対する方程式、および天体3に対する方程式は放置したままです。
つまり、天体2と天体3それぞれの位置の関数の形を、この時点の我々は知りません。天体2と3の位置を表す関数が不明のままでは、万有引力に現れる距離も不明です。運動方程式の右辺の関数が不明のままでは、それを満たす解(この場合は、天体1の位置に相当する関数)を見つけることは不可能です。
天体1の位置を表す関数以外の部分が既知である方程式ならば、その未知関数(天体1の位置)を見つけることは原理的に可能でしょう。しかし、求めたい量(この例では天体1の位置)以外にも、未知の量が同じ方程式の中に共存しているのです。
これを連立微分方程式とよびます。求めたい量に対して微分操作を含む方程式であり、求めたい複数の変数に関して、独立せずに複数の方程式が絡み合っているものです。
ニュートンの時代の科学者にとって、その絡み合いはとても解(ほぐ)せるようには思えませんでした。しかし、この複雑な三体問題に果敢にも挑戦する人たちが登場します。
それは18世紀の数学者オイラー、ラグランジュ、そしてポアンカレといった天才たちでした。彼らがどのようにこの問題に挑み、どんな答えを得たのか。結論を言えば「三体問題」はいまだに完全には解決されず、現在でも科学者がその答えを探し続けています。
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