いじめ調査は何のため? 旭川の教訓 「罰する」では果たせない目的

有料記事

聞き手・狩野浩平
[PR]

 北海道旭川市の中学2年生、広瀬爽彩(さあや)さん(当時14)がいじめを受け、2021年3月に亡くなった問題で、いじめと自殺の因果関係を認めた再調査委員会が、調査の過程でAI(人工知能)を活用してデータ分析をしたことから注目されている。だが、副委員長を務めた野村武司・東京経済大学教授は「何も特殊なことはしていない」と話す。他のいじめ調査とは何が違ったのか。

 ――再調査委は、爽彩さんが亡くなる直前まで残した約4千行にわたるSNS投稿などについて、AIも活用して分析したとされています。

 SNSに残されているのは生前の爽彩さんのその時点での思いであり、極めて重要な1次資料です。委員全員がその価値に気がつきました。

 心理学を専門とする委員からの提案を受け、膨大な情報を、キーワードの出現頻度や傾向を見る「テキストマイニング」の手法で整理した上で、心理学・精神医学の視点で分析しました。分析自体をAIに頼ったわけではありません。

報告書「質的に大きなばらつき」 国はガイドライン改定へ

 亡くなった子どもが何を残しているのかは事案によって異なります。以前、私が調査に関わった事案では、携帯のSMS記録が重要な資料になりましたが、今の時代、多くの子どもたちがSNSに本音を投稿しています。SNSにも視野を広げて本人の心理状況を分析する手法は、今後、全てのいじめ調査に求められる、きわめてスタンダードなものと考えています。

 ――具体的にどのような分析をしたのでしょうか。

 心理学的には、SNS投稿の…

この記事は有料記事です。残り2610文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
狩野浩平
東京社会部|教育担当
専門・関心分野
いじめ、不登校、子どもの権利、ニューロダイバーシティー、幼児教育、性暴力