復興いちご 患者に元気 被災した妻の実家で栽培 共に立ち上がる

大粒の「復興いちご」を手にする高坂さん

■白河のつつじが丘接骨院 高坂又継さん(48)美紀子さん(46)
 宝石のように真っ赤に輝くイチゴに患者の顔がほころぶ。白河市北裏のつつじが丘接骨院。院長の高坂又継さん(48)と妻の美紀子さん(46)もうれしくなる。「ゼロからやり直して結んだ果実。きっと被災した人の励みになるはず」
 美紀子さんの実家は宮城県亘理町にあるイチゴ農家。20棟以上のハウスで栽培し、観光農園も営んでいた。しかし、東日本大震災による大津波で全て流された。
 高坂さんの接骨院も外壁が落下、隣接する住居部分も全壊するなど大きな被害を受け約1カ月間休診を余儀なくされた。高坂さんは接骨院の復旧、美紀子さんは実家の手伝いに忙殺される日々が続いた。
 1月末、美紀子さんの実家から接骨院に小荷物が届いた。生産の再開を告げるイチゴのパックだった。大粒の立派な出来栄えに2人は驚き、考えた。「これを『復興いちご』と名付けて患者さんに食べてもらい、元気を出してもらおう」
 21年前に開業した接骨院には体が不自由なお年寄りや体調を崩したスポーツ選手が県内各地から訪れる。生産が本格化するまでには、まだ時間がかかるが、少しずつでも送ってもらい、患者に振る舞いたいと考えている。
 震災と東京電力福島第一原発事故から1年近くがたつが、放射線問題など復旧・復興への道程は長く、険しい。高坂さんは「苦難から立ち上がる気持ちを宮城県の人たちと共有し、くじけずに前に進んでゆきたい」と話している。