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解像度にまつわる誤解


発端だったある投稿


先日だったか、気になるポストを見かけました。流石に四方八方からツッコミを受けていたようでもう消えていましたが。要約すると、

・海賊版を作られたくなければ高解像度のイラストをネットにアップするな
・アップする際は解像度は幅1200pixelで150dpiから200dpi程度に下げましょう

前半はともかく、後半に関しては、おかしなことを言う人だな…と思った次第です。さて、同時にこんな記事も目にしました。

神戸新聞NEXT|連載・特集|話題|「600dpiと言っただろ!お前プロじゃないのか!」サイズと解像度の区別ができない発注元 知ったかぶりおじさんが話題 

@kobeshinbunより

実は、イラスト、デザイン、印刷業と、画像を扱う職業において、重要でありながら、意外とちゃんと理解されていない単語。それが「解像度」です。


解像度=画像サイズではない

単刀直入にいうと、解像度とは一定の表示面積に対するビットマップ画像の密度です。一定の表示面積に対し画素が多いほど緻密に表示され、密度が高い(=解像度が高い)となります。

ビットマップ画像のサイズを示す際に使われる1600×1200pixelといった表記は画素数を示します。デジカメなどを購入する際、「192万(1600×1200)画素」のような表記を見たことがあるかと思います。1pixel=1画素。画素が多い程、画像のサイズは大きいわけです。普段、我々が画像サイズと呼んでいるのはこちらです。

ゲームや映像の画像サイズを示す言葉として「解像度」が用いられるのもあり、こうした誤解を生む原因かと思われます。しかしながら、実際は「低解像度(640×480pixel)のゲームより高解像度(2560×1440pixel)のゲームの方が、画面に表示される画像の密度が高い」というニュアンスで解像度という言葉が当てられているのです。テレビの4K、8Kなども同じです。結果的に画質を高密度にする関係上、画像サイズ自体も大きいのです。

webに上げる画像にdpiを指定する意味はない

解像度を示す単位にdpiというものがある。これはdots per inchの略です。インチあたりどれくらいのドットを収めるか?という意味です。基本的には画像を印刷する際に使用されます。300dpiならインチ当たり300ドットのサイズで出力を行うという話になります。もうお分かりかと思いますが、B5サイズの紙に72dpiで印刷する場合と、同じくB5サイズの紙に350dpiで印刷するのとでは、印刷に使う画像のサイズは後者の方が大きいと想像できますよね?そして後者のほうが緻密であり解像度が高いとなります。結果的に高解像度では扱う画像サイズが大きいゆえ、誤解が生じるのです(間違いともいえない)

そして、このdpiを指定した数値は、web上の閲覧を含む、印刷を考慮しない場において(例えばSNSに投稿する画像や、ゲーム用の画像など)において、全く意味のない数字だと理解できるはずです。ネットに画像を投稿する際、例えば1200×900pixelに対し、解像度指定を350dpiにしようが600dpiにしようが表示されるものは同じです。ちなみに、そのまま100%のサイズで印刷すると600dpiの方が小さく印刷されることは今までの話から理解できますよね??


解像度と不可逆です←???

Xで貰ったこのような引用についてやや考えさせられました。これも解釈次第ではこの限りではないのですが、dpiを指定するという点においては、不可逆ではないです。350dpiの画像を72dpiにしようが、そこから600dpiにしようが画像自体のサイズは変わりません。おそらくは、お絵かきソフト等において画像サイズと解像度が同時指定できるゆえの誤解です。…まいっちゃうね。

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解り難くしてる元凶の一例。画像はクリスタ。

解像度という概念は、あくまでも印刷物や画面など、一定の表示面積に対して、画像サイズを小さくすれば荒い画像となり(解像度が下がる)、大きくすれば緻密な画像となる(解像度は上がる)という前提があるから密度として成り立つのです。たしかに、「一定面積に対し、解像度を下げろ」という話なら、結果的に画像サイズを小さくすることになり、そして、小さくしてしまった画像を大きく戻すことはできません。そう言った意味では不可逆とも言えるのですが…。


絵描きは意外と理解していない

紙の同人誌を印刷、発注したり、グッズ制作などを通じて、「印刷」することを考慮するなら、まずは絶対に間違っていけない部分です。ところが意外にも会話が噛み合わないケースは多いのです。同業として悲しくなりますが、絵描きはその辺りが不勉強です。特にセミプロやアマチュア程その傾向が強い。印刷を念頭に置いた合同誌などを主催していると、一定確率で解像度を理解できない作家から、とんでもないフォーマットの原稿を渡されて胃に穴が開く思いをした人もいるのでは?と思います。今にして思うと印刷業者は大変な思いをしている。と身をもって感じます。

昨今はすべてがデジタルで完結していることも少なくないです。ゆえに、知らなくても仕方がないか…(恥はかくだろうけど死にはしないし…)みたいな気持ちではいます。


海賊版を作られたくないなら?

ネット社会。ましては世界中人間が閲覧できる今の時代では完全に防ぐのは難しいです。ですが、自衛することには意味があります。

さて、ご存じのとおりdpiの指定は意味がないです。そのまま印刷したら超小さくなるように1200dpiとかに指定してやることもできますが、大抵は印刷媒体に対して引き延ばして印刷するでしょうから無意味です。なによりお絵かきソフトでどうとでも弄れる数字です。また、Xに上げれば勝手に72dpiに固定されます(違ってたらゴメン)。

ある程度有効なのは、画像サイズです。昨今は2k4kのようなサイズを平然とネットに上げてしまう人も多いのですが、幅1200~1600pixelが妥当な線かと思います。それでもアップスケーラーなどが進化した現在では、1kを4kに画質の劣化抑えながらスケールアップすることは容易であり、抜本的な解決には至らないかなと…。

サインを入れるのはそこそこ有効でしょう。法的な根拠も主張しやすくなりますし、相手がサインを消したとするならば、知らなかった、うっかり、のような言い訳を封じ込めます。それでも海賊版を作ってしまう厚顔な輩はそこら中にいるので、完全に防ぐのは難しいですが、海賊版は作らせないという態度を示すことは大事なのです。なぜかって?「あなたがダメと言ってないからやりました」というような主張をする人間は驚くほど多いからです。

法的な手続きの話に関しては分野外なので割愛します。




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解像度にまつわる誤解|瀬尾辰也
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