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エコノミスト(英国)

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日本と韓国の若い男性たちの間で反フェミニズムが広がっていると、英誌「エコノミスト」が報じている。両国に共通しているのは、優秀な女性に対する反発、経済的見通しの暗さ、そしてネット上の煽りだという。

僕は「逆差別」の犠牲者


ソウル在住のシェフ、キム・ウソク(31)は、韓国社会における女性の地位に疑問を抱きながら育った。専業主婦の母親が気の毒でならず、自分はフェミニストなのだと思っていた。

だがこの数年でその考えは一変した。ネット上の一部の女性活動家たちが小さなペニスを嘲笑するなど、侮辱的な発言を目にしてショックを受けたのだ。

「男としての尊厳が攻撃されている気がしました」とキムは言う。2010年代以降、韓国社会は女性よりも男性を差別するようになったと彼は考えている。

キムには恋人がいるが、彼のような考えを持つ韓国人男性の多くは女性と付き合っていない。

先進国では男女間の意識の乖離が拡大しており、若い男性はより保守的に、若い女性はよりリベラルになる傾向が見られる。その傾向はとくに東アジアで顕著だ。

男性より学歴が高く、就職競争でライバルとなり、子供をほしいとは思わない女性たち──そんな現状に男性はうまく適応できていない。

2021年のある調査によれば、韓国の20代男性の79%が、自分は「逆差別」の犠牲者だと考えている。お隣の日本でも、同年の調査で18~30歳までの男性の43%が「フェミニストが嫌い」だと答えた。


ジェンダー平等は達成されている?


そもそも東アジアの国々は、家父長的な傾向がかなり強い。日本と韓国は、本誌エコノミストの「ガラスの天井指数」(富裕な29ヵ国の職場環境における女性の働きやすさを評価した指標)で、共に最下位グループに属している。

経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち、韓国は男女間賃金格差が最も大きく、女性の賃金が男性より31%も低い。日本でもその差は21%に上る。

世論調査会社イプソスが2023年に実施した調査では、韓国人の72%が「家で子供の世話をする男性は男らしくない」と考えており、調査対象30ヵ国中、最も多かった。

それでも、東アジアの多くの国で女性の生活は向上している。同地域の「娘より息子を好む」傾向は廃れつつあり、学業での成功が男女を問わず期待されるようになった。いまや韓国、中国、台湾では、女子の大学進学率が男子を上回っている。

日本ではまだ男子のほうが高いが、その差は約6ポイントにまで縮んでいる。女性の社会進出も進んでいる。日本では25~39歳の女性の有業率(仕事をしている人の割合)が2022年に初めて80%を突破。韓国でも25~29歳の女性の74%が職に就いている。

だが、こうした女性の躍進こそが、反発を招く一因となっている。「若い男性たちは、学校でも職場でも自分より優秀な女性に囲まれています」と指摘するのは、ソウル大学のイ・ヒョンジェ教授だ。

彼女によると、多くの男性は「ジェンダー平等はすでに達成されている」と感じており、すでに平等な社会なのだから、さらなる女性支援策は不公平だと思っている。女性を家庭に縛りつけたいわけではないが、それでも不満が募っているのだ。

日本では20代男性の童貞率が40%超


東アジアの男性が反フェミニズムに傾く要因はほかにもある。父親世代と比べて、経済的な見通しが暗いのだ。

日本は1991年にバブル経済の崩壊に見舞われ、数十年にわたる目覚ましい成長期に終止符が打たれた。韓国は1997年のアジア通貨危機で大打撃を受けた。それ以降に生まれた世代は、低成長時代を生きることを余儀なくされている。フルタイムで働く「サラリーマン」モデルは崩壊し、非正規やパートタイムの仕事が増加の一途をたどっている。

日本では2023年、インフレ率が40年ぶりの高水準を記録した(約3%で、先進国基準で見れば依然として低水準)。そして実質賃金は過去2年間下がり続けている。

韓国では、学生でもなく、仕事もしておらず、職業訓練も受けていない、いわゆる「ニート」状態の若年男性の割合が、2000年の8%から21%へと急増。対照的に、女性のニート率は、同期間に44%から21%に減少した。

一方、恋愛市場の競争はシビアさを増しており、結婚する人は減り続けている。20代後半の日本人女性の60%以上が未婚であり、これは1980年代半ばの2倍にあたる。

日本では男性の初体験の年齢は昔から高かったが、その傾向はいまも変わらない。2022年の調査では、20代男性で性経験がない人の割合が40%を超えていた。また同年の政府報告書によれば、20代男性の4割が交際経験がないと回答している。

結婚をめぐる動向は韓国と台湾でも似たり寄ったりで、そのため、これらの国々では少子高齢化が急速に進んでいる。韓国の出生率は世界最低の0.72。台湾は0.87、日本は1.2だ。

韓国では男性との関係をすっぱり断ち切ってしまう女性すらいる。2019年には同国で少数派ながら「4B運動」が出現した。女性たちが結婚や出産のみならず、男性とのデートや性行為まで、4つすべてを拒絶するという運動だ(Bは韓国語で「非」を発音したときの音)。

彼女たちは「男性との生活は自由のない生活に等しい」と考えている。「家父長制と闘うつもりはありません。それよりそこから立ち去る決断をしたのです」と、4B運動の実践者であるキム・ジナは言う。

「キムチ女」「ツイフェミ」「弱者男性」


ネット上で女性に対する怒りが煽られていることも要因の一つだ。

冒頭のキムは、男性の権利擁護団体「新しい男たちの連帯」を率いるペ・インギュをSNSでフォローしている。ペは「フェミニズムは精神病だ」と主張する、YouTubeで人気のインフルエンサーだ。

韓国では、男性の間で「キムチ女」という侮蔑語が流行している。これは若い韓国人女性を、「物欲が強く、支配的で、男性に寄生して生きている」と揶揄する言葉だ。日本でも、ツイッター上のフェミニスト、略して「ツイフェミ」が侮蔑的に使われるようになった。

その日本では、欧米の「インセル」(女性と性的関係を持てないのは、自分の外見や社会的地位のせいだと思い込んでいる男性)に似た、「弱者男性」と呼ばれるグループが出現している。

「恋愛に関しては、圧倒的に女性が主導権を握っています」と、ホリイケ・タケシ(25)は言う。彼は過去に一度も女性と付き合ったことがなく、それは低収入と容姿が原因だとして「弱者男性」を自認している。

こうした反フェミニズム感情の高まりは、東アジアの出生率低下にさらなる拍車をかけそうだ。韓国政府の調査によると、20代後半の韓国人男性の60%以上が、結婚して子供を持つことは人生に「必要」だと考えている。一方、同年代の女性でこの考えに同意したのは34%にすぎなかった。

はたして東アジアの男女は妥協点を見出せるのだろうか。

ある出会い系アプリが離婚経験のある独身者を対象に2023年に実施した調査によると、韓国人女性の37%が「家父長的」な男性は最悪の交際相手だと答えた。そして、同程度の割合の韓国人男性が、「フェミニスト」とは付き合いたくないと答えている。


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