消費者庁の発足から半年、懸案進まず 「スピード欠く」
消費者庁の発足から半年が過ぎた。当初は花王の特定保健用食品(特保)「エコナ」問題での迅速な対応が注目されたが、その後はこんにゃくゼリーの形状規制の是非など懸案が積み上がるばかり。福島瑞穂・消費者担当相らがトップダウンで課題を提起する一方、9府省1委員会から職員を集めた「寄り合い所帯」の庁内では「誰が何をどこまでやればいいのか、あいまい」と戸惑う声も出ている。
「落としどころが見えない」。幼児や高齢者の窒息事故が相次いだこんにゃくゼリーに対する規制を検討している同庁幹部は、こう明かす。
福島氏は年明け早々、「避けて通れない」として、庁内のプロジェクトチームで形状規制などを視野に検討を始める方針を宣言。だが、直後に内閣府の第三者機関、食品安全委員会が、同製品の窒息リスクはモチに次いで「アメと同等」と指摘。こんにゃくゼリーに焦点を当てる理由が問われる形となった。
昨秋のエコナ問題では1週間余りで特保表示許可の取り消し手続き入りを決めたが、今回はすでに2カ月近くが経過。注意喚起にとどめるのか、アメなどにも規制をかけるのか。大臣が"振り上げた拳"の下ろし方に頭を悩ませている。
マーガリンなどに含まれ、過剰に摂取すると動脈硬化のリスクを高める「トランス脂肪酸」の含有量表示問題も先行きが不透明だ。福島氏は「表示義務化も含めた検討」を指示したが、同庁の検討会では食品関係の専門家から「コレステロールや肉類に含まれる飽和脂肪酸への対策が先では」といった疑問の声が相次いでいる。
国民の大きな関心を集めたトヨタのリコール問題では、福島氏が同社幹部を呼び、「消費者の安全確保と不安解消へ向けた迅速な対応」を求めるなど一定の対応はとった。ただ、国土交通省の対応に遅れがなかったか、情報収集が十分だったか、などの点にまで踏み込む気配はない。
「所管の法律に基づいて企業から日々報告を受けている役所(国交省)とでは、情報量やノウハウに圧倒的な格差がある」(同庁幹部)
寄り合い所帯だけに、業務の停滞感が募ると、出身母体ごとに他省庁出身者への批判も漏れる。また、「良く言えば組織横断的、悪く言えば一体感に欠け、意思決定スピードが遅い」(中堅職員)。「消費者庁に残るのか、『本省』に戻るのか」と春の人事異動を気にする職員も少なくない。
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