※弊社記事はたぶんにPRが含まれますので
話半分で受け取ってください。

とある博物館の売店を運営することになった話

動物の浮世絵stock

 ある日突然博物館の売店をやることになった人の参考になるよう、売店運営の顛末をここに記す。

1. 事の発端

 それは昨年2023年の秋頃。いつものように新潟県立歴史博物館開催の企画展の内覧会に行ったところ、とある学芸員さんに「ちょっと話が……」と別室(食堂兼フリースペース)に通されました。「え、私たちなんかやっちゃいました……?(心当たりがありすぎる)」とビビっていたら「売店を運営しない?」という予想外の話が飛び出てきたのでした。

 ちなみに歴博(新潟県立歴史博物館)の売店は昨年2023年3月26日で閉店しています。

  • ミュージアムショップ「柏屋」閉店のお知らせ(3/26までの営業) | 新潟県立歴史博物館公式サイト
    http://nbz.or.jp/?p=28796

 このときの話は

  • 売店の運営期間は4月20日から6月9日までの春の企画展期間だけ。(でも、やる気があるならそのあとも入ってもらってかまわない。)
  • 販売する商品は委託販売の形で提供される。それとは別に自分たちで仕入れたものを販売してもかまわない。
  • このあと(11月頃)県報などでもテナントの募集をかける。が、たぶん応募はない。 (だから応募してくれない?)

という感じでした。このときは11月の募集のときに応募がなければ、ということで話を流しました。だって小売業なんてやったことないし……。

1.1. なぜ弊社なのか

 弊社はこれまで小売業をやったことがありません。一応、オンラインショップはありますが、趣味みたいなもので生業とはいいがたい……。そんな弊社になぜ白羽の矢が立ったのか。それは!

  • 内覧会などでちょくちょく歴博に出入りをしていてある程度勝手(お作法)がわかっている。
  • PCが使えればどこでも記事くらい書けるだろ。ヒマそうだし。

という乱暴な論理からです! かーちゃんは家でPCいじってると遊んでるって思うみたいだけど、こっちはちゃんと仕事してるんだからね!

1.2. 伝統ある歴博売店問題

 これはあとで知ったことですが、2000年の歴博開館当時も売店の応募はなかったらしいです。そのため長岡商工会議所が主体となって売店を運営するための会社「縄文屋」を設立。それが初代売店の「ミュージアムショップ縄文」です(2代目が「柏屋」)。この顛末については以下のウェブページに記載があります。

歴博売店問題は開館前から続く伝統なのか……って思った。

1.3. 応募なし

 同年11月に県報、および歴博のウェブサイトでテナント募集のお知らせが出ました。テナント募集についてはうちでも記事にしています。

 このときいくつか問合せはあったようですが、結局、契約まで至るものはなかったとのこと。

 かくして3月にはなし崩し的に弊社が売店を営業する運びになりました。まあ、いままで内覧会などでお世話になってるしね! 助け合いの精神は大事だよね!

1.4. 驚きの好条件

 「半ば強引に出店させた」という負い目もあってなのか、館側から提示された出店条件は驚きの好条件でした。話がうますぎて詐欺なんじゃないかと疑いたくなるレベルです。

什器あり!

 出店するにあたり、売店の什器(テーブルとか商品棚とか)はすでにあるものを使っていいとのことだったので、こちらで特別用意する必要はありませんでした。今すぐお店が始められます!

商品あり!

 販売する商品についても企画展関連商品を委託販売の形で販売できたので、こちらで仕入を起こす必要はありませんでした。在庫を抱える必要がなく、売れば売っただけ儲かるノーリスク・ローリターンな商売を今すぐ始められます!

 それとは別に過去に歴博の売店と取引のあった問屋を紹介してもらうこともできました。せっかくなのでそこから少量商品を仕入れたりしてみました。

家賃なし!

 テナント料については企画展期間限定のお試し出店という形でゼロ円でした。光熱費(電気代)も無料。今すぐ無料でお店が始められます!

 さあ、あなたもいますぐお店をはじめちゃう!? はい or YES!

2. 売店運営のために用意したもの

 売店を運営するにあたり、こちらで事前に用意した主なものは以下の通りです。

  • レジスター(CASIO SR-S200)/ メルカリで約3万円
  • キャッシュレス決済用端末(楽天ペイターミナル)/ キャンペーンで0円
  • 通信環境とそのルータ(HOME 5G HR01)/ メルカリで6千円
  • プリンタ(Canon TS5430)/ ケーズデンキで約1万円

 そのほか、商品陳列の際に必要になった小さなカゴや本立て、レジ袋などの小物をそのつどこちらで調達しました。

 余談ですが、レジ袋については私が「レジ袋は無料で配れ」教徒なので無料配布しました。
みんなもう忘れてるかもだけど、バイオマス25%以上のレジ袋や厚み50ミクロン以上のレジ袋は無料配布できるんだぞ。紙袋なんてそもそも容器包装リサイクル法の対象外だぞ。どんどん無料で配布しよう!

2.1. レジスターとその仲間たち

新潟県立歴史博物館 ミュージアムショップstock
 企画展期間を共に戦ったCASIOのレジ「SR-S200」。レジに残っていたデータから、どうやらうちに来る前は宮崎県都城市にあった「Route45」というお店で使われていたようです。そちらで活躍していたレジはうちでも元気に働いてくれましたよ!

 昨今、キャッシュレス化が進み、極端な話、スマホだけあればお店が始められるような時代が到来しています。新潟IT業界の老舗にして雄である弊社といたしましては、やはりキャッシュレス決済の導入をせざるを得ない!

 そんなわけでレジについてはいろいろ検討したのですが、予算と使い勝手の狭間でゆらりゆられて最終的にCASIOのレジスター「SR-S200」と決済端末「楽天ペイターミナル」を併用する体制に落ち着きました。

 決済オペレーションとしては

  • レジで商品登録をする。
  • 現金決済の場合はそのままレジで決済。レジのレシートが出力される。
  • キャッシュレスの場合はレジに表示された合計金額を楽天ペイターミナルに打ち込んで決済。レジとターミナル2枚のレシートが出力される。

という感じ。

 なぜ楽天ペイターミナルかって? キャンペーンで無料配布してたからだよ!

  • 楽天ペイ ターミナル導入無料キャンペーン!あなたのお店にVisa、Mastercard、JCBなどの主要6ブランドのクレジットカードや、楽天Edyや交通系ICなどの多数の電子マネーブランド、nanaco、WAON、Apple Payなどを0円で導入のチャンス! – 楽天ペイ(実店舗決済)
    https://pay.rakuten.co.jp/business/campaign/terminal/

 最初は「Squareターミナル」をメインの決済端末にしようと考えていました。POS機能が利用できますし、レシートの発行もできます。キャッシュレス取引はもちろん、現金取引にも対応できるので、これだけで商売がはじめられます。
 一方、楽天ペイターミナルは単純にキャッシュレス決済ができるだけでPOSレジ機能はありません。画面があってできそうな雰囲気はありますが、雰囲気だけです。

 ただ、ミュージアムショップだと商品点数が多いのでSquareターミナルの小さな画面だといろいろ(商品リスト的にもオペ的にも)溢れちゃいそうだなぁと思ったのと、客層的に現金決済が多そうだな(実際、営業期間中通してキャッシュレス割合は25%くらいだった)という懸念もありました。
 だとすると下手にSquareターミナルとか使うより普通のレジスター使ったほうがいいんじゃね? という結論に至り、普通のレジと楽天ペイターミナルの二段構えになりました。

 あとまあやっぱり「楽天ペイターミナル」が無料でもらえたからね。しかも楽天銀行口座があれば売上金が翌日に振り込まれる上に振込手数料も無料。楽天経済圏万歳! 楽天経済圏に繁栄あれ!

新潟県立歴史博物館 ミュージアムショップstock
 SR-S200と楽天ペイターミナルはどちらも58mm幅のサーマルロールペーパー(レシート用紙)を使用しますが、ペイターミナルはロール径40mm以下のものしか入りません。そこで、レジでいいところまで(ロール径が40mm以下になるまで)使ったら取り出して、ペイターミナルに流用する、という方法を取っています。

2.2. 通信環境

 現代社会において仕事するのにネットは不可欠。楽天ペイターミナルでキャッシュレス決済するのにもネットが必要です。

 歴博側から売店に光回線を引くこともできるとは言われたのですが、2ヶ月しかいないのに物理回線を引くというのはどうもオオゴト過ぎる(し安くない費用がかかりそうな)ので、ドコモのHOME 5Gを契約しました。HOME 5Gはルータとインターネットをドコモの携帯通信網でつなぐので、ドコモの電波があればどこでもネットが使えます。
 この手のサービスはドコモのほか、auやソフトバンク、楽天などからも提供されています。ではなぜドコモなのか。

 歴博はドコモしか電波が通じないからだよ!

 ソフバンはよくわかりませんが、auと楽天はガチで電波がないです。窓際ならワンチャン、という感じ。歴博の受付でも入館料を決済するためにauユーザらしき人がよく窓際に走ってます。楽天はもともと歴博に限らず屋内最弱なので、歴博だからというわけではないかも。(プラチナバンド対応してからはわからない。)

 ドコモしか通じないのは歴博のなかのひとの常識になっていて、歴博勤めをはじめてからドコモにキャリア変更した人もいます。
 24年前から電波が悪いとわかってるのならキャリアに問い合わせてフェムトセルやらレピータやらを提供してもらえばいいのでは? と素人ながらに思ったりしますが、開館から24年経っていてなおそれをしていないのはなにか理由があるのかもしれません。

 なお、HOME 5Gで必要になるルータ「HR01」はメルカリにて6,000円で手に入れました。型落ち品ですが普通に使えます。通信速度は下り50Mbps/上り10Mbpsくらい。写真をアップロードするときに「さすがに自宅の光回線よりは時間がかかる」とは感じましたが、それ以外でとくに困ることはありませんでした。ADSLよりずっとはやい!

3. 商品について

 売店で取り扱った商品は主に以下のような感じです。カッコ内のパーセントはおまけ情報で、売店売上全体における割合です。

  • 企画展「動物たちの浮世絵」関連商品(60%)
  • 新潟県立歴史博物館の各種図録(3%)
  • 縄文土器のレプリカ(4%)
  • 古書(3%)
  • ボードゲーム「UMATAKA」(10%)
  • 売店オリジナル商品(20%)

 売店オリジナル商品以外は受託販売の形での取り扱いでした。こうしてみると意外とうちオリジナルの売上も伸びたな。

3.1. 受託販売について

 受託販売(委託販売)は販売元から預けられた商品を販売元に代わって販売し、その売上の一部を販売手数料としてもらえる、という形態です。手数料の割合としては売上の10%から20%くらいが相場の模様。最終的に売れ残ったものは送り返せばいいので、在庫を抱えるリスクがありません。
今回、売店運営に勧誘してくれたなかのひとも「委託販売なのでほとんどノーリスクで運営できますよ!」というマルチの勧誘みたいなことを言ってました。

3.1.1. 企画展関連商品

動物の浮世絵stock
 開場式にて企画展商品の紹介をするうちの代表(左)とFMながおかの山田アナ(右)。

 これを販売するために今回弊社が売店に入ることになったと言っても過言ではありません。売上的にもこれが全体の半分以上を占めています。

 売れ筋は絵葉書、クリアファイル、マステ、マルチクロス(眼鏡拭き)あたり。手紙を送る機会が減っていると言われる昨今ですが、それでもなんだかんだ絵葉書は売れるんだなと思いました。試しに絵葉書サイズのフォトスタンドを仕入れてみたらそれなりの数が出たので、絵葉書を販売するときは一緒にフォトスタンドも販売するといいと思います。
あと、取り扱ってみて思いましたが、浮世絵と物販は相性がいい感じがします。

新潟県立歴史博物館ミュージアムショップstock
 人気だった企画展関連商品の集合写真。

3.1.2. 図録

新潟県立歴史博物館ミュージアムショップstock

 歴博の出している図録(越後文書宝翰集えちごもんじょほうかんしゅうや研究紀要なども含む)と縄文土器(レプリカ)の販売はこれまで歴博の受付の人がやっていた業務を肩代わりする形で受託販売していました。

 図録は在庫を歴博から預かり(いくらかの在庫が受付に置いてあり、そこから売店の在庫分をスルーパスしてもらう形でした)、月末にその販売数を歴博に報告します。その後、歴博から請求書が届くので、記載された金額を入金します。

 図録は全53種。それぞれ10冊程度の在庫を預かっていたので、総冊数は500冊ほど。これを毎月棚卸するのは大変だなと思ったので、在庫管理はスリップ(売上カード)を作って挟むことで対応しました。

新潟県立歴史博物館 ミュージアムショップstock
作成したスリップ。

 図録販売時にスリップを引き抜き、販売日を記入して保管しておきます。あとは月末に保管しておいたスリップを集計するだけです。正確な在庫数を把握しておく必要がないので、月途中での在庫の追加もラフに行えます。
 また、図録には価格が書かれていないのですが、これもスリップに価格を書いておくことで解決できました。スリップを作って挟む手間はありますが、これは我ながらスマートな解決方法だったと思います。

3.1.3. 縄文土器

動物の浮世絵stock
 歴博で縄文土器を購入すると学芸員がガチ梱包してくれます。鶏頭冠は売店店員が梱包します。

 「縄文土器(のレプリカ)」は歴博の互助組織「新潟県立歴史博物館 友の会」の管轄で販売されているものです。より正確には友の会の分科会である「土器造り同好会」。

 商品ラインアップは以下の4種類があります。

  • 縄文土器(小):火焰土器の2/3サイズのレプリカ。19,800円
  • 縄文土器(中):火焰土器のレプリカ。49,800円
  • 縄文土器(大):縄文雪炎のレプリカ。89,800円(現在実質取扱なし)
  • 鶏頭冠:火焰土器のトサカの部分だけのレプリカ。1,600円

 ひとつ数万円する土器を買う人なんてそんなにおらんやろーと舐めていたら、GWが終わるまでの間に鶏頭冠(1点)も縄文土器(小2点、中1点)も在庫がなくなりました。なくなっただけじゃなく、縄文土器については予約まで入っていました。土器ヤバい。

 この「縄文土器」については「土器造り愛好会で作られてる」とか「いや、在庫は埼玉から送られてくる」とか「駄作は巨匠が割って処分している」とか、歴博内でまことしやかな伝承が様々囁かれておりいろいろ謎でした。
 そんな中、ようやく捕まえた信頼筋の話によると小・中は群馬の沼田市、大は十日町で作られているとのことでした。ちなみに巨匠がダメ出しすることはあるが割って処分することはない模様。また、そのままだとキレイすぎるので、ウェザリングのために土器造り愛好会の野焼きのときに焼くことがあるそうです。

という感じで、そのへんの諸情報がごっちゃになって、まことしやかな伝承が醸成されてきたみたいです。

3.1.4. 古書

新潟県立歴史博物館ミュージアムショップstock

 売店の棚の多くを占有している古書も委託販売しています。古書についても図録と同様に月末に販売数を報告し、あとから請求書が回ってくるスタイル。商品は古書店の人が月に一度くらいふらりとやってきて補充していきます。それはさながら古書の妖精。

 余談ですが、古書を取り扱う場合、法律的には受託販売でも古物商許可申請が必要ということになっているのでご注意ください。うちも売店営業を始める直前にこれに気づいて最寄りの警察署に相談しに行きました。

3.1.5. UMATAKA

新潟県立歴史博物館 ミュージアムショップstock

 ボドゲの販売は学芸員経由で期間途中に突然飛び込んできたのですが、単価が大きいため(税込7,700円。拡張セットも一緒に買うと税込9,900円)、最終的な売上に占める割合としては大きくなった感じです。しかもぼちぼち売れるんだこれが。

 売り始めた当初はまだUMATAKAの通販もはじまっていなかったので、実質歴博の売店でしか購入できない状態でした。そんな状況もあってか、最初に受け取った在庫はあっという間になくなり、急遽、新潟市まで在庫を受け取りに行ったのはいい思い出です。

3.2. 売店オリジナル商品

新潟県立歴史博物館 ミュージアムショップstock
 企画展チラシのデザインをそのまま使用したクリアファイルはなかのひとのウケが非常によかったです。

 委託販売だけでも全然よかったのですが、せっかくなのでオリジナル商品も作ってみました。

 終盤で歴博のシンボルマークの使用許可が下りたので、Tシャツやステッカーなども作成してみました。

 そのほか、初代ミュージアムショップ「縄文」のころに作られてそのまま歴博の屋根裏で眠っていたパズルや絵葉書、Tシャツ(130cmサイズのみ)なども販売しました。

4. レジの取り回しなど

 レジの設定や釣銭の額など。設定は CASIO SR-S200 に使用したものですが、ほかのレジでもだいたい同じような設定ができるようになっていると思います。

4.1. 部門の設定

 受託販売の取引(受託販売の商品を販売したとき)は「売上」ではなく、「預り金」または「受託販売」という科目で処理します。そうするとレジに商品を登録するときに受託販売の商品とそれ以外の商品の売上を分ける必要が出てきます。より正確に販売状況を把握する場合は委託元ごとに部門をわけて計上したいところ。

 CASIO SR-S200は「部門」を最大で10部門まで登録できるので、委託元別に部門をわけて使用しました。精算時に部門別の売上が出力され、それをそのまま各販売元への預り金として記帳すればいいだけなので記帳がラクです。

 下位機種のSR-G3は3部門しか登録できないので(そしてPLU機能もない)、そっちだったら詰んでいた。かもしれない。

4.2. PLU

 基本的に受託商品についてはPLU(Price Look Up。短縮番号みたいなもの。PLU番号をレジに打ち込むと商品名と値段が呼び出される)を登録して対応しました。

 PLUを使ったのはレシートに商品名を表示したかったのが最大にして唯一の理由です。部門入力だとレシートには

企画展 165
企画展 880

としかプリントされなくて、ちょっと味気ないじゃない? PLUで登録すると

絵はがき 165
マルチクロス 880

というふうに商品名をレシートに出力することができます。

 あとPLUを使うと精算時にPLU別の販売数が出力されるので、うまく利用すれば細かい売上の傾向なども把握することができるかも。でも、今回はそのデータはあんまり活用しませんでした。

バーコード対応したいところ

 なんだかんだ商品点数が多いので、できればバーコードスキャナの導入とそれに伴うPOSの導入までしたくなるところです。商品の打ち間違いが減るし、在庫管理も同時にできるのは魅力。

 ただ、バーコードスキャナに対応しているのはCASIOのレジだと最上位機種のSR-S4000のみ。そのうえCASIOのレジはソフトウェアの作りが平成時代然としているので、正直、バーコードスキャナを導入するつもりならAirペイとかSquareとかを導入したほうがいいと思います。
 また、いずれにしてもバーコードスキャナを導入しようとすると金額的には10万を越えてくるので、2ヶ月の期間限定運営ではちょっと手が出しにくいです。

 つーか、CASIOはハードウェアの出来がいいので、あとはモダンなソフトウェア(アプリケーションから開発の体制までふくめた意味でのソフトウェア)をちゃんと作ることができればこの業界で覇権握れるポテンシャルあると思う。

 ……などと思っていたら、このあいだカシオからレジスターおよび関連サービスの提供事業を終了する旨のメールが来たのであった。〜完〜

4.3. 釣銭

新潟県立歴史博物館ミュージアムショップstock
 釣銭ケース。たしかセリアで買いました。写真の状態で13,300円。

 釣銭の初期設定は43,300円に落ち着きました。内訳は以下の通り。

  • 五千円札 – 4枚
  • 千円札 – 10枚
  • 五百円玉 – 10枚
  • 百円玉、五十円玉、十円玉、五円玉、一円玉 – 各50枚

 最初は五千円札2枚で33,300円にしていたのですが、休日など人が増えると5,000円札がなくなることがあったので、途中から5,000円札を2枚増やしました。(それでも一度だけ5,000円札が足りなくなって追加したことがあった。)
 年齢層によるものなのか、施設の性格によるものなのか、はたまた給料日前後のお金の使い方の違いによるものなのか、意外と万券をぺっと出す人が多い印象があります。

 期間中に両替して用意した券と硬貨の合計枚数は以下の通り。カッコ内の本数は棒金(1本50枚)での本数です。

  • 五千円札 – 40枚
  • 五百円玉 – 70枚(1本と20枚)
  • 百円玉 – 300枚(6本)
  • 五十円玉 – 180枚(3本と30枚)
  • 十円玉 – 450枚(9本)
  • 五円玉 – 160枚(3本と10枚)
  • 一円玉 – 100枚(2本)

 千円札はわりとコンスタントに入ってくるので、両替で手に入れることはありませんでした。
 両替と関係ないですが、レジで現金を扱ってるとお金を枚数でしか捉えなくなってきてヤバいっす。五千円札40枚なんて金額にしたら20万円という大金なのに、枚数でしか考えてないので取り扱ってるときの感覚は1円玉40枚とそんなに差がない。

4.4. キャッシュレスの割合

 キャッシュレスの利用割合はだいたい25%でした。半分から1/3くらいかなと予想していたので、思ったより現金派多かった。

 キャッシュレスは決済ごとに3%ちょいの手数料を持っていかれるので、現金のほうがありがたいと言えばありがたいです。
 が、現金はまったく手数料がかからないかといえばそんなこともなく、釣銭を用意するための両替で手数料を取られます。最寄りの第四北越銀行の場合、500枚未満だと1回330円。しかも銀行は平日しか開いてないので(それも15時まで!)、週に1度の貴重な休みを割いて両替に行くしかない。キャッシュもキャッシュレスも一長一短があります。

5. 客層とその傾向

 歴博の客層は文句なくいいです。カスハラとは無縁のエデン。「博物館」という施設によって客がフィルタされてるのは多かれ少なかれあると思います。敢えて言うなら常連にめんどくさそうなのがいますが、世のカスハラ事案に比べれば全然かわいいものです。

 客単価(ここでは売店の売上を入館者数で割ったもの)は200円弱でした。歴博のとある学芸員の話によるとほかのミュージアムショップの客単価も200円くらいらしいので、まあ標準的な結果と言えます。

5.1. F1・M1層

 ちゃんと記録を取ったわけではないので完全に印象の話になりますが、一番お金を落としていってくれた(印象がある)のはF1層(20〜34歳の女性)でした。浮世絵の企画展なので年齢層高めかと思いきや、意外にF1層が多いです。しかもおひとり様F1層が平日にふらりとやってきて、少なくない量の企画展関連商品を買っていってくれたりします。
 次点でおひとり様M1層(20〜34歳の男性)。金額の大小にこだわらず数点購入していくことが多いです。
 また、UMATAKAの購入者もほとんどがおひとり様F1・M1層でした。

 しかし同じF1・M1層でも複数人のグループになると渋くなります。
 F1グループの場合、あーだこーだしゃべりながらものを見ているのですが、最終的に購入したものはそれぞれ絵葉書1枚(165円)だけというパターンが多いです。それでも購入してくれるだけありがたくはある。
 M1グループはなにも買わないことが多いです。

「かわいい」は買わない

 F1・M1グループに限らず、ある商品を見て「かわいい!」という言葉を発する人はだいたいそれを買いません。人は「かわいい!」と発することでなにか欲求が発散してしまうのかもしれません。買う人は音も立てず静かにそれを手に取ってレジに持ってきます。

5.2. 高齢者と家族

 意外にお金を落とさないなぁと思ったのは老夫婦。印象としては老夫婦ペアの7割くらいは売店を素通りします。展示見るのに疲れて売店を見る余力がないのか(企画展の展示品数が非常に多かったためか、一度企画展室に入ると出て来るのに2時間くらいかかる印象でした)、そもそも売店の存在が目に入っていないのか。

 ファミリーもお金を落としません。子供やお父さんがなにかを欲しがってもその要求はだいたいお母さんファイアウォールで焼き尽くされます。そして要求が通らなかった父と子の溜飲を下げさせるかのようにほぼほぼ自販機でジュースを買います。
ただし、同じファミリーでも3世代家族構成の場合はお金を落としていってくれることが多いです。とくにおばあちゃんが元気な家族はなんだかんだお金を使ってくれる印象があります。

5.3. ツアー客

 バスツアー客も何回か遭遇しましたが、お金の落とし具合はツアーによって異なる感じ。

 地域的な傾向としては、関西からのツアー客はヒモが固く、安いもしくは割引率の大きい商品を好む傾向があります。同じ1,000円の品でも90%OFFと書いておけば買ってくまである。
 一方、東京からのツアー客は比較的ヒモが緩めでなんかよくわからないものを買っていく印象があります。
 とはいえ、ツアーの場合はおみやげを買う場所(時間)がほかで用意されていることが多いので、全体的にこちらが期待したほどミュージアムショップではお金を落としていかないというのが正直な感想です。ツアー客は基本属性が高齢者であるというのもあるかもしれません。

 また、バスの時間の都合上、レジに並ぶタイミングが集中するのでその瞬間だけやたら忙しくなり、結果、やたら忙しくなるわりにそれほど上がりはないという印象になります。経営的にはなにも売上がないよりはいいですが、レジ係的にはあまり嬉しくないお客です。

5.4. 遠足・修学旅行生

 5月・6月は小・中学生の遠足が多く、それらが入館者数を押し上げます。1回に50人から100人程度の来館者になるので、入館者数的にはツアー客よりも影響の大きい団体ですが、小・中学生は売店を利用しないので、売店的にはプラスもマイナスもありません。
 敢えて言うなら入館者数がいたずらに増えるため計算上の客単価が大きく下がり、客観的なデータが取りにくくなるといったところでしょうか。まあ、未来の顧客だと思えばね。

5.5. 無料観覧者

 招待券や無料観覧日など、無料で入館した人はお金を落としません。まあ、これはわりと予想できた傾向です。
 無料観覧日だった5/18は入館者数的には51日間の営業期間中2番目に多い入館者数を記録しましたが、客単価としては下位25%に入っています。

5.6. 集合的無意識?

 これもデータをちゃんと取ったわけではなくまったくの肌感覚の話なのですが、新しい商品を入れたとき、ある一定の時間が経過すると売れはじめる傾向がある、気がします。客の目に触れた回数がある一定数を超えると売れはじめる、というか。

 来館者がみんな毎週のように来館しているとか、来館者のほとんどが知人同士だとかであれば何度も見聞きして購入に至るということはありそうですが、実際にはほとんどの人が一見さんで他人同士のはず。
 もしかして来館者、ひいては人類の意識はなんらかの形でどこかにつながっていて、全体で知識・経験が蓄積しているのでは? などととりとめのないことを思ったりしました。

6. 売上や収益など

6.1. 売上の傾向

 売上としてはやはり入館者数が増える土日が多いです。ただ、平日の売上もゼロというわけではなく、土日の半分から同程度の売上があります。平日は、来館者の絶対数は少ないながら、F1層がお金を落としてくれるので客単価としては休日より高いまである。

6.2. 売上と利益

 企画展期間51日間の来館者数は約1万人。売上は約200万円。受託販売商品の手数料はおおむね販売価格の15%なので、うちの手取りは概算で30万くらい。そこから参加費(レジの購入などにかかった初期費用やバイト代など)を差し引くと利益はちょいプラスくらいでした。

 ただ、普段からこれくらいの売上が上がるかというとちょっと難しいだろうな、というのが正直なご感想。今回は

  • 大型連休があった
  • 企画展関連商品があった

という二大要因があったのでこの売上が出せたと思っています。

6.2.1. 例年5月の入館者数は多い

 過去の年報をみても年間を通してもっとも入館者数が多いのは5月か8月。つまり今年の月間入館者数はこれがピークの可能性があるのである!

これがピーク、かつ客単価が変わらないと仮定すると、今年はもうこれを越える売上は上がらないということになります。

6.2.2. 企画展関連商品の存在

 企画展関連商品は売上全体の60%を占めています。浮世絵は物販とも相性がいいと思うので、ほかの企画展でもこれに匹敵する物販ができるかというとちょっとどうかなぁ? という感じです。次の企画展は佐渡なんですけど、佐渡関連商品で売れそうなものってなに? 金塊? 寒ブリ?

6.3. 人的資源

 企画展期間が51日間。そのうち休館日が7日あったので、実質的な営業日は44日。都合により3日ばかり午前中の店番をバイトに任せましたが、それ以外は全日店番をしました。

9:00-17:00勤務なので8時間。
5月の出勤日数は 31日 – 4日(休館日) = 27日。
よって5月の労働時間は 27日 x 8時間 = 216時間。
所定勤務時間? 会社役員は定額働かせ放題ですよ?

 正直、この身ひとつで毎日営業し続けるのは無理です! 仕事自体の負荷よりも時間的、身体的に拘束され続けるのがつらい! 毎日夕ごはんのことしか考えられなくなる!
 今回は51日間限定の営業だったのと、どれくらい上がりが出るかわからなかったので、できるだけ自分たちだけ(定額働かせ放題)で回したのですが、期間限定だから我慢できた。恒常だったら我慢できなかった。

 もし歴博の開館日に合わせて売店も開けておくとなると店番要員を少なくとも2、3人は確保する必要があると思います。またレジにバーコードリーダを導入するなど、オペレーションの改善も必要でしょう。
 そうなると(前の話ともつながるのですが)それに見合うだけの売上(粗利)が見込めるのか? となってくるわけであります。

6.4. 掛率7割が分水嶺かも

 コロナ禍前のR1年の年間入館者数が5万人。客単価200円とした場合の年間売上は1,000万円。
一方、単純に休館日を週1(52日)とすると営業日は365日 – 52日 = 313日。営業時間を8時間とすると年間営業時間は2,432時間。時給1,000円で基本ワンオペしてもらうとするとバイト代は年間で243万円。

諸々の経費を考えても、継続的に運営するつもりなら平均して掛率(仕入原価率)7割以下の商品を開発・開拓・販売したい感じです。

6.5. 無人販売

 ガチャや自販機などを導入して無人化するというのも手ではあると思います。
 治安はいいので、料金箱だけ置いて無人販売しても回りそう。QRコード決済なら自分で金額を入力して決済する方法が使えるので、無人販売でもキャッシュレスが使える。

6.6. 小売りは連続式

 やってみてわかりましたが、小売りはバッチ式ではなく連続式だ。
 仕入が足りなければ販売が止まるし、買掛を忘れて仕入れするとキャッシュがショートするし、自転車をこぎ続けるように仕入と販売を同時に回し続けるバランス感覚が必要でした。まあまあムズいぞこれ。世の中の小売業者、よくやってんなぁ!

7. 売店まわりのあれこれ

7.1. 昼飯食うヒマが微妙にない

 歴博ではIPM(Integrated Pest Management:総合的有害生物管理)の関係で、フリースペース(食堂)などの決められた場所でしか飲食ができません。これは歴博のスタッフも例外ではなく、ごはんはもちろん、飲み物を口にするにもフリースペース(食堂)などの飲食可能スペースに移動する必要があります。

 その一方、売店にはお昼の時間関係なく客が来るので、微妙にお昼を食べる時間がありません(むしろ12時台に売上のピークを迎えるまである)。

 その結果、お弁当を持参し、開館前の9時台に食堂でブランチをとり、9:30から17:00の間は飲まず食わずで店番をするというスタイルが完成しました。
 まあ、平日は客少ないし、割り切ってレジに「お昼食べに出てます」って札でも立ててごはん食べに行っちゃっても別にいいとは思うんですけど。

新潟県立歴史博物館ミュージアムショップstock
 ありそうであんまりない食パンサイズのサンドイッチケースがとてもよかったです。

7.2. 虫を見つけたら捕まえろ

 IPMに関連して、館内で虫を見つけた場合はチャック付きのポリ袋に捕獲して担当者に報告する必要があります。また、捕獲する場合は生きた状態だと大変喜ばれます。
 売店あたりで発見される虫はゲジが主ですが、たまにコオロギやモリチャバネゴキブリなどの大物が発見される場合もあるので覚悟を決めて営業に挑みましょう。

新潟県立歴史博物館 燻蒸stock
 売店に入ったときに配布された環境保全マニュアル。虫カビ絶許の心得が書いてあります。

 IPMの下で活動すると世の博物館・美術館がいかに虫の侵入やカビの発生を防止することに心血を注いでいるのかがわかります。そして、いつかどこかの美術館で発生したカビ騒ぎがいかにありえないことだったのか、改めて思いを巡らしたのでした。

新潟県立歴史博物館 燻蒸stock
 燻蒸のための養生作業中の売店。歴博では毎年6月に館内の燻蒸が行われます。今回は企画展終了翌日に燻蒸作業が入ったため、最後の棚卸作業ができなくてヤバかった。

7.3. 容赦なく明かりが消える17時10分

新潟県立歴史博物館 ミュージアムショップstock
 17:10になると館内は消灯となり、スポットライトの下でレジ締め作業をすることになります。

 歴博のエントランスホールでは来館者がいようがいまいが毎日16時になると床の拭き掃除がはじまります。営業時間中に掃除をはじめるとか、民間ではなにか事情がない限りないことなので、最初は結構ビックリしました。

 そして17時10分になると館内の明かりが消え、常夜灯のみになります。連休中などは閉館時間を過ぎても客(来館者)が残っていることが何度かありましたが、そのときも容赦なく消えました。ちなみに空調も16:30になると止まります。

 しかし売店は客がいなくならないとレジ締めができないので、レジ締めは明かりと空調の消えた館内で行うことになります。とはいえ、売店の天井にあるダクトレールと壁面側のダウンライトだけはなぜか手動でON/OFFできるようになっているので、完全に真っ暗というわけではありません。コンセントも生きているのでデスクランプも使えます。空調はどうにもなりません。

 では歴博受付のレジ締めはどうなってるかというと、歴博は16:30が最終入館なので16:30になると受付でレジ締め作業がはじまります。閉館時間の17:00には現金の回収を済ませ、あとは最後の来館者を見送る体制に入ります。

 なお、最後の来館者がみんな退館したかどうかの判断は、雰囲気です。一応、最後に警備員が展示室などをぐるっと一回りして残っている人などを含めて確認するので、常設展から警備員が戻ってきたら来館者ゼロ確定と考えられます。そのあとエスカレータの電源を落とす作業が入れば確実。
来館者が少なくて「これもう客いねーな」という日は閉館前に受付のお姉さんからゼロ宣言が出ることもあります。いろんな意味でキュンってなります。

なんだかんだで今日も売店にいます

新潟県立歴史博物館2024夏期企画展 大・佐渡島stock

 そんなこんなで手探りで右往左往しながらの約1ヶ月半の営業を大過なく終え、なんとか歴博への義理は果たせたかな、と思っております。新潟県立歴史博物館の職員・OBの皆様、受付の皆様、企画展受付の皆様、来館者の皆様より多大なるご支援とご利用をいただきましてまことにありがとうございました。

 そんな売店ですが、なぜか夏の企画展期間中も営業しています。春展で得たノウハウとアガリを全部ぶち込んでる。この話は夏期企画展が終わったときにでもまた。

 それでは皆様、新潟県立歴史博物館 夏期企画展「大・佐渡島」の売店で会おう!

参考

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