8月の株式市場は大荒れの展開で始まった。日経平均株価は1日と2日の2日間で大きく値下がりし、下げ幅は7月末比で3192円(8.2%)に達した。全面安となった2日は終値ベースで約6カ月ぶりの安値となる3万5909円で取引を終えた。
株急落の最大の要因は米国の景気指標の下振れだった。米国の景気減速の可能性が意識されて米国株が大きく下げ、投資家心理の悪化は日本にも波及した。1月の新NISA(少額投資非課税制度)のスタートに合わせて資金を投じた国内の個人投資家にとっては、厳しい局面だ。
実際に米景気が減速すれば、米市場で収益を上げてきた日本企業にもその影響が及ぶのは避けられない。日本の景気の先行き不透明感も増す。
今回の株価急落は日銀が7月31日の金融政策決定会合(MPM)で追加利上げを発表した直後に起きた。この日のMPMでは、量的引き締め(QT)として国債買い入れ額を現在の月6兆円程度から段階的に減らし、2026年1~3月には同3兆円にする方針も決めた。
今後の日銀の金融政策はどこへ向かうのか。それを探るため、いま一度、今回の日銀の決定を振り返りたい。
円安に対する姿勢が変化
「現実の物価が上振れるリスクはかなり大きいと評価し、対応を打った」。植田和男総裁は31日の記者会見で利上げの理由をこう語った。経済・物価の情勢を踏まえつつ、円安が進行し、日銀の想定を超えた影響を物価に及ぼす流れを案じたのだ。
短期金利はリーマン・ショック直後の08年12月以来となる水準に戻る。植田氏は「(名目金利から物価変動の影響を除いた)実質金利は非常に深いマイナスであり、景気に強いブレーキがかかるとは考えていない」とした上で、「金利を少しずつでも早めに調整した方が後で楽になり、全体としてはプラスになる」との見解を示した。
植田氏が強調したのは、いわゆる「悪い円安」に向き合う必要性だ。ただ、わずか3カ月前はトーンが違っていた。
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