サイエンス

地球の軌道上を漂う「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」の撮影に日本の宇宙開発企業が成功


耐用年数を過ぎた人工衛星や、打ち上げに使われたロケットの一部、多段ロケットの切り離しで生じた破片など、意味のある活動を持たずに地球の衛星軌道上を周回している人工物のことを「スペースデブリ」または「宇宙ゴミ」と呼びます。スペースデブリは宇宙開発が進むほど増加しており、それぞれ異なる軌道上を動くため回収することも難しいですが、デブリを回収するプロジェクトを進めている日本の衛星技術会社が特定のデブリの動きを捉えて撮影した記録を報告しています。

JAXA | CRD2 Phase I / ADRAS-J Update: Fly-Around Observation Images of Space Debris Released
https://global.jaxa.jp/press/2024/07/20240730-1_e.html


Spacecraft travels to metal object orbiting Earth, snaps stunning views | Mashable
https://mashable.com/article/space-junk-rocket-debris-footage

スペースデブリは数10mのロケットや人工衛星のパーツから、宇宙飛行士が活動中に落とした数cm程度の工具まであります。スペースデブリの移動速度が遅い場合は地球の重力に引かれて大気圏に突入しますが、重力に引かれないほどの速度を持つものは秒速3~8kmの速度で移動しているため、宇宙ステーションなどに衝突するとかなりの破壊力を生み、大きな損傷を与えることになります。また、大気圏に突入した場合でも、サイズの大きいものは地表まで達し、危険な落下物になりえます。

東京に本拠を置く宇宙開発企業のアストロスケール(Astroscale)は、スペースデブリの除去サービスの開発に取り組む世界初かつ世界唯一の民間企業です。アストロスケールは2024年7月30日、「スペースデブリよ、私たちはあらゆる角度からあなたを監視しています!」という文言とともに、軌道上を移動する廃棄されたロケットの撮影に成功したと発表しました。


実際に真上や真下からもロケットを捉えており、「あらゆる角度」から撮影に成功しています。全体を詳細に撮影して形や大きさを把握した上で、予定の捕捉ポイントにも大きな損傷がないことを確認できたとのこと。


今回公開されたスペースデブリは、温室効果ガス観測技術衛星の「いぶき」を打ち上げた際の重さ3トン、全長約11mのロケットで、約50mの距離から撮影されました。この件を報じた海外メディアのMashableによると、秒速7~8kmで移動するスペースデブリに、撮影用の宇宙船でここまで近づくのはかなり困難であるとのこと。アストロスケールは撮影の方法について、「非協力的な物体に安全に接近する搭載衝突回避システムの有効性を実証しました」と説明しています。

大規模なスペースデブリ除去ミッションは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「商業的スペースデブリ除去実証プロジェクト」の一環として実施されており、JAXAはアストロスケールが撮影に成功したことを伝えるプレスリリースの中で「今回の成功は、世界的にも情報が少ない長距離軌道上のデブリの運動、損傷、劣化状況を明らかにするために、高画質の画像と十分なデータを取得することを目的とした『フライアラウンド観測サービス』の技術的実証になります。アストロスケールの『ADRAS-J』による今回の安全な完了は、深刻化するスペースデブリ問題の改善に向けたデブリ除去技術の獲得と、軌道上サービス市場における日本企業の競争力強化という2つの目標の達成に向けた着実な一歩となります」と語りました。

撮影された映像はJAXAのYouTubeチャンネルでも公開されています。以下が広角で撮影されたもの。

CRD2 Phase I:「周回観測」の連続画像(広角)2024.7.15 / Sequential images of "Fly-Around Observation(Wide)" - YouTube


以下は望遠で、より拡大して撮影されたものです。

CRD2 Phase I:「周回観測」の連続画像(望遠)2024.7.15 / Sequential images of "Fly-Around Observation(Tele)" - YouTube


今回の撮影は偵察作業であり、次の段階ではロボットアームでスペースデブリを捕獲し、低軌道に下ろして大気圏で燃やすことになります。将来的には、低地球軌道(LEO)に自力で操縦できない不活性人工物がほとんど存在しないように掃除し尽くすことが期待されています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
スペースデブリの増加を食い止めなければ将来的に宇宙旅行などが不可能になると欧州宇宙機関が報告 - GIGAZINE

地球から月軌道周辺の宇宙に広がる「シスルナ空間」の安全保障のジレンマとは? - GIGAZINE

SpaceXが運用中のStarlink衛星100基を自主的に大気圏に突入させて処分することを発表 - GIGAZINE

「スペースデブリ規制」違反でアメリカ当局が初となる罰金を民間企業に科す、古い衛星が軌道から適切に離脱しなかったため - GIGAZINE

宇宙を漂うゴミ「スペースデブリ」を除去するミッションのターゲットが小さな物体との衝突によってバラバラになったことが報告される - GIGAZINE

スペースデブリを宇宙で燃料化する取り組み - GIGAZINE

宇宙空間を漂う「スペースデブリ」を回収する方法はあるのか? - GIGAZINE

in サイエンス,   動画, Posted by log1e_dh

You can read the machine translated English article here.