天建寺渡し船事故から72年 遺族の語りに児童ら学ぶ

高原敦
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 筑後川で児童6人が犠牲になった72年前の「天建寺渡し船転覆事故」を語り継ぐ授業「命について考える日」が、児童らが通っていた佐賀県みやき町の三根東小学校(当時は南茂安小)で14日にあった。児童142人が参加し、遺族の話を聴いたり発表したりした。

 旧三根町(現・みやき町)の町史などによると悲劇が起きたのは1950年2月13日午前8時すぎ。気温1・5度の寒空の下、筑後川で渡し船が転覆。通学中の小中学生41人を含む45人が川に投げ出され、南茂安小の児童6人が亡くなった。

 この日は、弟の福田紀男さん(当時小3)を亡くした古賀絹子さん(92)=佐賀市=が来校し講話。「(弟は)大きな声で『行ってきます』と登校しました。随分経ってから鐘の音が聞こえ、飛び出すと、みんなが『船が沈んだ』と言って堤防へ向かっていました」と振り返った。

 紀男さんの遺体は後日、下流で発見された。「色白のままのかわいい顔でむしろの上に寝かされていた。母もきょうだいも悲しみました。72年経っても忘れられない悲しい思い出です」と声を詰まらせた。

 事故から4年半後に橋が架けられ、渡し船は廃止された。現場付近には「学童遭難之碑」が建てられ、記憶の風化を防いでいる。古賀さんは「(今も)子供が事故に遭ったと聞くとドキドキします」と打ち明け、「お父さんもお母さんもきょうだいもみんなあなたたちを愛しています。命は一つです。大切にして下さい。お願いします」と訴えた。

 このほか、命の大切さについての考えや思いを6年生たちが発表した。中村美枝子校長は「古賀さんの話やこれまでの学習から、命の有限性や連続性に気づき、感謝した上で輝かせていってほしい」と話していた。(高原敦)

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