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加納新太

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2024年8月 4日 (日)

「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(8)

 第八回です。前回から間があきましたが、続きました。
 
 2024年7月20日から8月18日のあいだ、横浜みなとみらいの各地でドラクエ関連の展示イベントがありました。「ドラゴンクエストカーニバル in 横浜・みなとみらい」といいました。
 
 横浜ランドマークタワー69階に、ドラクエ3の展示がありました。こちらに、堀井雄二さんが手書きで記したドラクエ3の制作資料が公開されていたので、見に行って、例のごとくメモをとりまくってきました。
 
 展示量はそう多くはなかったのですが、いろいろとおもしろい部分がみつかりましたので、また皆さんにお知らせします。
 
 
 当記事は、堀井雄二さんが書いたドラクエ3の制作資料から、(製品版とは違う)初期構想を読み解いていこうというシリーズです。
 
 
●ご注意:当ブログの内容を紹介する際は、URLを示し、出典を明らかにして下さい。どこかの誰かが言っていた風説としての紹介・言い回しを変えての自説としての流布をお断りいたします。
 
 第一回はこちら。
「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(1)
 第二回はこちら。
「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(2)
 第三回はこちら。
「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(3)
 第四回はこちら。
「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(4)
 第五回はこちら。
「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(5)
 第六回はこちら。
「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(6)
 第七回はこちら。
「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(7)  
 
 ※注:「ドラゴンクエスト」を、私がどういうふうに「読んで」いるのか、情報のスキマをどういう形で埋めて空想しているのか、ということを、自分勝手に語るエントリです。
 こうにちがいない! ということではなく、こういうふうに捉えれば、読み手の私は心豊かなキモチになれますという、そういうニュアンスです。
 小説版、外伝等は参照しておりません。
 
 当記事に掲示する画像のうち、再現画像はすべて、「ドラゴンクエストカーニバル in 横浜・みなとみらい」にて展示された制作資料を、私が部分的に再現したものです。画像で示されている内容は、株式会社スクウェア・エニックスと共同著作者の著作物です。著作権法第32条に基づき、研究を目的とする引用としてこれらを掲示します。展示会場で書き写したため、写し間違いが生じている可能性があります。これらの画像の転載・改変・再配布を禁じます。孫引きも遠慮してください。
 (特記ある場合を除き)テキストによる引用部も出所は同じであり、扱いは同様です。


 
 
■資料の概要
 
 イベントの展示では、ドラクエ3のアイテムリストの一部が公開されていました。私が見たことのなかったものです(以後カーニバル版資料と呼称)。
 
 これらアイテムリストは、定規できっちり引かれた罫の中に、ていねいに清書されていました。「ドラゴンクエストミュージアム」で展示されていたもの(ミュージアム版資料)は、ラフに書きなぐったものでしたので、ミュージアム版とカーニバル版は、別の時期に書かれた別バージョンだとわかります。
 
 カーニバル版資料の内容は、かなりの部分、製品版の内容と一致します。ですので、製作がかなり進んできた時期に、ほぼほぼFIXの内容を提示するというつもりで作成されたものと推定できます。
 
 ですので、ミュージアム版資料がに作られ、カーニバル版資料はに作られたことになります。
 
 推定ですが、ミュージアム版資料は、ドラクエ3のアイデア出し合宿(というものが行われた)の直後くらいに、白地図と同じようなタイミングで書かれた。
 書かれた意図は、チュンソフトに詰めている制作スタッフに、現状のアイデアを把握してもらうため。
「いまのところ、こういうアイデアを持っていて、こういう効果のアイテムを必要とするから、先に作れるところを作り始める場合は、これらのアイテムが実現可能となるようにしておいてくれ」
 といったようなことだったでしょう。
(ミュージアム版資料はファックスでチュンソフトに送られた)
 
 いっぽう、カーニバル版資料は、シナリオのアイデアがかなり整理され、システム側の仕様も煮詰まって、「アイテムは合計何個実装可能」だとか、そういうことがわかったあたりで、「じゃあ、決定版のアイテム表をだしましょう」ということで書かれたのかなと思います。
 
 イベントでは、ドラクエ3の企画書の1ページ目も公開されていましたが、書式や文字のていねいさが、企画書とアイテム表でよく似ていました。ですからアイテム表は、企画書の一部としてエニックス上層部に提出するものだった可能性もあります。
 
 さて、ここから中身の検討に入ります。
 
 
■ひかりのよろいの効果がちがう!
 
 今回の資料でいちばんびっくりしたのこれです。


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 ひかりのよろい。勇者のみが装備可能。製品版にもある鎧です。というか、のちの世に「ロトのよろい」として伝承される見込みの伝説的鎧です。
 
 その効果が。
「ゾンビ(ディスペル防≠3)ダメージ1/2をむこうにかえす」
 
 ぱっと見ただけでも、我々のしってるひかりのよろいと違う。
 
 
 この文言、わかりづらいですが、かみくだくとおそらくこういうことです。
 
「ゾンビからもらったダメージの半分を、そのゾンビにはね返す」
「ニフラム耐性が完全耐性でないモンスターは、すべてゾンビとみなす」
 
 ディスペル防というのはニフラム耐性のことです。ミュージアム版資料の呪文リストに、ニフラムの効果として「ディスペル」と書いてありました。

 ドラクエ3 極限攻略データベースさんによれば、ドラクエ3のモンスターのニフラム耐性は0から3までの4段階で、0は無耐性(成功率100%)、3は完全耐性(成功率0%)です。
 
 で、ディスペル防(ニフラム耐性)が「3ではない(≠3)」モンスターの攻撃を反射するということは……。
 
 つまりニフラムがちょっとでも効く可能性があるモンスターの攻撃を、いつでも半分はね返すという、アタックカンタ的な効果が指定されている。この文言からはわからないけれど、ひょっとして呪文やブレスも半分はね返す想定なのだろうか?
 
 さて問題は、なんでこんなことになっていたのかだ。
 
 
■ゾンビ反射の理由
 
 以後、「ひかりのよろい(ゾンビからの攻撃を反射)」の能力を、「ゾンビ反射」と呼称します。
 
 勇者専用鎧が、ゾンビ反射の鎧として設定された理由は明白です。
 ドラクエ3の物語そのものが、「生命あるもの」vs.「ゾンビ」の対立のお話だからです。
 
 この話は何度してもいいと思うから何度でもしますけれど、ゾーマはゾンビの帝王です。「非生命の世界の王」という言い方でもいい。
 
 終盤のボス三連打で出てくるバラモスゾンビの正体は、上の世界で倒したバラモスの死体です。ギアガの大穴を囲っていた壁をこわして穴を通って行った「何か」の正体はバラモスの死体です。バラモスの死体を魔力で取り寄せたのはゾーマで、バラモスの死体をゾンビにつくりかえたのもゾーマです。
 ……ということを想像してほしい、と期待していると思うのです。この物語は。
 
 ゾーマというのは、ネクロマンサー(死体をあやつる魔法使い)なのだ、ということが、ここでは示唆されていると思うのです。
 
 おそらく、ゾーマのキャラクター造形において参照されているのは『指輪物語』のラスボス・サウロンだと思います。サウロンは「死人つかい」「死人占い師」と呼ばれ、これは原語ではNecromancer。ついでにいえば、ドラクエ3は、それまで登場していなかったエルフとホビットが登場し、火山の火口にだいじなアイテムを投げ込む物語です。これを指輪物語の影響ぬきに書いたとしたら私はバリイドドッグみたいにめんたま飛び出るよ。
 
 ゾーマが「なにゆえ もがき いきるのか」と問うのは、べつに哲学的問いをなげかけているのではなく、「君はなんでまた、生命ある存在であることにこだわるのかね」という、そのまんまの意味だと(私は)解しています。
 
「しにゆくものこそ美しい」というのは、死者の王であるゾーマが、「私の世界は美しい」と自画自賛しているわけで、「わが腕の中で息絶えるがよい」というのは、「うちの国民にしてあげるからおいで」くらいにかみくだいてやるとめちゃくちゃわかりやすい。
 
 ようするにゾーマのあの名台詞は、ひとことふたことにつづめていえば、「死ぬってサイコー! 死体ってサイコー!」くらいのことなんですね。まあ私見ですけれど。
 
 ゾーマは死者の王なので、彼の世界はである。アレフガルドを死が統べる世界にしようとするから、アレフガルドを闇に閉ざす。
 ゾーマと対になる存在、大地の母神、生命の世界の女王ルビスを屈服させる。
 
 そこに、ある上の世界から、生命の力あふれる若者がやってくる。生命の世界の女王ルビスを復活させる。そして光ある世界から光(の玉)を持ってきて、光と生命の代表闘士となってゾーマと対決する。ドラクエ3はそういう、生命(光)と非生命(闇)との対立のお話です。
 
 さてそこで、生命の世界の女王ルビスを助けたときに、同時に手に入る「ひかりのよろい」。
 そこで手に入る最強のよろいが、「非生命の側の存在を文字通りはじき返す(ゾンビ反射)」ものだったらめっちゃシビレるよな! このアイデアは最高だ! イェッフゥー! と堀井さんは思ったにちがいないと私は思うわけです。
 
 たしかに、この符合はめっちゃキマってる。
 どのくらいキマってるかというと、「1・2のロトのよろいと性能がぜんぜんちがっちゃうけど、ちがっちゃってもいいからこっちのほうがいい!」と堀井さんが思いそうなくらいキマってる。かっこいい……。
 
 ちょっと余談だけれど、堀井さんは、そういう「違っちゃうこと」をあんまり気にしない人らしいです。ドラクエ6のラミアスのつるぎは、どう見ても絶対に後の世に「天空のつるぎ」として伝承される剣なのだけど、備わっている特殊効果は、天空のつるぎとは全く別のものです。
 
 そういう齟齬を「なんで違っちゃっているのか」「本当は天空のつるぎじゃないんじゃないか」みたいな感じで、物語や設定的にうまく合う理屈を探している人もいるみたいなのだけど、もちろんそういうのを「シャーロキアン」的に掘っていくのも面白いのだけど、大前提として「堀井さんはそういうのあんまこだわらない人」で、「違うようにしちゃったけど、まあいいんじゃない」くらいの処理をする人っぽいよという点は、ちゃんと握っておいた方がいいのかもなってときどき思います。
 
 ところで、「いのちのよろい」はどうなったんだっけ……。
 
 
■いのちのよろいの行方・再び
 
「堀井さん手書き文書」から推測する初期版ドラクエ3(6)で取り上げたのですが、ミュージアム版資料には「いのちのよろい」という防具が指定されています。
 
(余談だけど、ここで俎上にのってるふたつの鎧が、「いのち」と「ひかり」なの、最高にいいよな!)
 
 これは、攻撃呪文とブレスのダメージを軽減し、歩くとHPを回復する、という鎧で、効果としては完全に、製品版のひかりのよろい、およびロトのよろいと同一です。
(ただし「戦士も装備できる」というところだけ違っていた)
 
 当初の予定ではおそらく、これが勇者の最終装備となり、エンディングでそのまま、この鎧がロトのよろいとして伝承されることになる、というプランだったはずです。
 
 でもそのあとに書かれたカーニバル版資料には、いのちのよろいの欄はなく(アイテムリストそのものが、全体のうち何枚かを抜粋したものにすぎないので、展示されてないだけかもしれない)、そのかわりのように、ゾンビ反射能力をそなえたひかりのよろいが記述されている。
(これは戦士には装備できず、勇者専用となっている)
 
 そして最終的な製品版では、名前が「ひかりのよろい」、効果は耐性と回復(いのちのよろいのもの)、装備可能者は勇者のみ(ひかりのよろいの仕様)となったわけですね。 
 ここで疑問に思うのは、ひかりのよろい(ゾンビ反射版)が思いつかれて「これだ!」となったとき、いのちのよろいはどうなったんだろうってことです。
 
 
●可能性1
・いのちのよろい(耐性防具・回復)を設定した。
・新たにひかりのよろい(ゾンビ反射)を設定した。
・その両方を実装するつもりだった。
・でもけっきょく、その2つをガッチャンコして、名前はひかりのよろい、効果は耐性と回復、というかたちになった。
 
 ようは、「いのち」と「ひかり」の両方がゲームの中にある、と想定している時期があった、という場合。
 
 当初はいのちのよろいをロトの鎧にするつもりだった。
 だが、ひかりのよろい(ゾンビ反射)という、すげー物語に即した鎧を思いついてしまった。
 こっちを勇者の最終装備にしたい。
 じゃあ、いのちのよろい、ボツにする? うーん。それはそれで惜しいよね。ロトのよろいと同じ効果を持つのは、いのちのよろいのほうなんだよね。
 
 それなら、両方ともゲームに採用しよう。「勇者の最終装備はひかりのよろいだけど、後世に残ったのはいのちのよろいでした」くらいでいいじゃん。
 いのちのよろいは勇者も装備できるから、勇者が装備した時期もきっとあるでしょ。だから問題ないよ。
 
 しかしながら、当然というか、中村光一さんか千田幸信さんあたりから、「それはちょっと、さすがにさァ……」と物言いが入る。
 
「だって、この仕様だと、戦士がいのちのよろいを、勇者がひかりのよろいを装備するのが最適解になるよ。『ロトのよろいは勇者じゃなくて、マッチョなピンクおじさんが着ていたやつです』って話だよ。それはさすがに、夢がないよ」
 
 堀井さん、「ムムム……」。言われたことがもっともすぎるので二の句がつげない。「やっぱ、勇者専用の鎧は、ロトのよろいと同じ効果じゃないとダメかぁ……」
 そんなわけで、ひかりのよろい(ゾンビ反射)はボツになった。
 
(注:見てきたように書いてますが想像です)
 
 
●可能性2
・いのちのよろい(耐性防具・回復)を設定した。
・新たにひかりのよろい(ゾンビ反射)を設定した。
・いのちのよろいはボツにした。
・しかし、その後さらに、ゾンビ反射の能力をボツにした。
・名前はひかりのよろい・能力は耐性&回復、という折衷案を採用した。
 
 こっちは、いのちのよろいを不採用にして、そのかわりにひかりのよろい(ゾンビ反射)を採用したという場合。
 
 この場合は、
「ロトのよろいとひかりのよろいは性能が違っていてもいい! ていうかひかりのよろいはロトのよろいでなくていい! ロトのよろいは歴史のどっかでぽろっとまぎれこんできたよくわからない何かです!」
 とかいう、めっちゃロックなディレクションを堀井さんはしたことになる。すげえ。
 
(後世になって、ルビスがひかりのよろいの性能をいじくりました、とかでも全然いいですけどね。前述のとおり、「ひかりのよろいはロトのよろいです。性能がちがっているけど、それでもロトのよろいなんです」でもいい)
 
 ところが、ひかりのよろい(ゾンビ反射)を採用できない理由が出てきてしまった。
 
 その理由は単純だ。「この性能、あんま強くないね」ということが判明したからだ。
 
 ひかりのよろい(ゾンビ反射)が手に入るのは、当然、終盤だ。終盤の敵は、大多数が、ニフラム完全耐性を持っている。そうなると、ひかりのよろい(ゾンビ反射)は、反射効果を発生させないので、単に打撃に強いだけの鎧ということになってしまう。
 
 なにより、この性能の鎧は、ゾーマ戦において、ほとんど何の意味もない。ゾーマのニフラム耐性は当然100%だから、ダメージを反射しない。まほうのよろい着たほうがましかもしれない。
 
「堀井さん、これ、ダメですね」
「むむぅ」
 
 いっぽう、いのちのよろい(耐性防具・回復)のほうは、終盤でめちゃくちゃ強い。終盤戦は、ブレスと呪文の連打戦になるので、ブレスと呪文を軽減する効果はあきらかに優秀。
 そしてゾーマは、ブレスと呪文がメインスキルなので、いのちのよろい(耐性防具・回復)は最高の切り札になる。
 
「やっぱこっちかぁ。ロトの鎧も、この性能だしなぁ」
 
 そんなわけで、いのちのよろいは、名前と装備可能者だけ若干変更されて、最終装備となり、これがロトのよろいになることになった。そんな感じかしら。
 
 余談ですが、ミュージアム版資料では、ゾーマ戦のキーアイテム「ひかりのたま」のもうひとつの効果として「戦闘中に使うとニフラム」が書かれていました。
(正確には「怪物をディスペル。」と書いてある。
 
 死者の世界の王ゾーマへの切り札に「ニフラム」の効果をつけようと堀井さんが思ったのは、ひかりのよろいにゾンビ反射を付けようと思ったのとまったく同じ理由であり、そしてその効果をボツにしたのも、ひかりのよろいと同じ理由だと思います。
 
 というか、「このゲームにニフラムという呪文を入れよう」と思った理由がまさにそれですよね。ニフラムはFC版ドラクエ3で初めて実装された呪文です。
 
 
■うっかり書き忘れたので追記(20240804)
 
 ひかりのよろい(ゾンビ反射)は、たぶん上記のような事情でボツになったわけですが、ボツにしようと思った段階ですでに、「ニフラム耐性を参照して、ダメージをはね返す」というギミックをシステムに組み込んでしまっていたのだと思われます。
 
 なんでかというと、製品版に登場する「やいばのよろい」が、まさに「ニフラム耐性が完全耐性じゃない敵のダメージを少量はね返す」という性能だからです。
 
 おそらく「ひかりのよろい(ゾンビ反射)をボツにしよう」と決定したはいいけれど、ゾンビ反射のしくみはもうプログラムされている。今からそのしくみを抜こうとしたら、バグが出そうだ。だから抜くに抜けない。
 でも、何の意味もなくなったゾンビ反射のシステムをそのまま残しておくには、容量が惜しい。このへんのプログラムを抜けば、代わりに何か別の物が入るかもしれないのだ。
 
 じゃあどうする? という話になったとき、「ひかりのよろい(ゾンビ反射)をいくぶん弱くしたような性能の鎧を入れよう」ということになったのではないか。それが、我々のよく知る「やいばのよろい」なのではないか。
 
 やいばのよろいを、「ニフラムが効く可能性があるモンスターの打撃を少量反射する」くらいの性能にすれば、ひかりのよろい(ゾンビ反射)のために組み込んでいたプログラムをそのまま利用できる。中盤で入手できることにすれば、ひかりのよろいのスペシャル感とカチあわない。ゲームの中に、ちょっと変わった魅力的な防具がひとつ生まれたことになるので、プレイヤーもうれしい。
 
 そんな感じで、実はやいばのよろいは、「勇者専用の鎧をどうするか」という試行錯誤の産物だったんじゃないかというお話でした。
 
 
■FC版3にふうじんのたて?
 
 続きまして……。
 ふうじんのたてって書いてありましたよ。え?

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 ふうじんのたては、次回作、FC版ドラクエ4で初実装されることになる盾で、その後、リメイク版ドラクエ3にも追加実装されました。効果は、4では道具使用でニフラム。リメイク版3は特殊効果なしのただの盾です。FC版ドラクエ3(製品版)にはこの盾は存在してません
 
 ですが、今回公開された設定資料をみると、「FC版ドラクエ3にふうじんのたてを実装するプランがあった」ことになります。
 
 しかも、その特殊効果が「ブレスのダメージが2/3になる」です。強い。
 
 この強い盾を、堀井さんはドラクエ3に実装するつもりだったが、何らかの理由があってボツにしたことになる。その理由とは何だろう。
 
 これは結論から先に言いますが、おそらく、「ふうじんのたてをボツにして、そのかわりに、ゆうしゃのたてを入れた」のだと思います。
 
 というのも。
 
 カーニバル版資料のアイテムリストに、盾は7種類載っていました。紙1枚に対して、盾が7つ書いてあるリストです。
 そして、製品版のFCドラクエ3に実装された盾は全7種類です。
 
 つまり、システム側が要請した仕様として、「実装できる盾は7種類までです」という条件があったのだろうと推定できます。
(全アイテム数はx種類までです、という条件があって、その中で堀井さんが「盾に配分できるのはそのうち7個だな」と配分したのでもいい)
 
 そして、カーニバル版の盾リストに書かれていた盾を、弱そうなものから順に並べ替えると、
「かわのたて」「せいどうのたて」「てつのたて」「なげきのたて」「みかがみのたて」「ちからのたて」「ふうじんのたて」
 です。
 
 おそらく全7種類であろう盾のなかに、「ゆうしゃのたて」が入っていません
 
 説明不要でしょうが「ゆうしゃのたて」は、製品版ドラクエ3の終盤で手に入る一点ものの盾。勇者専用で、ブレスダメージを2/3にする特殊効果をもちます(リスト上のふうじんのたてと同一数値)。
 
 カーニバル版資料が書かれた段階では、「ゆうしゃのたて」を装備するプランではなかったのです。
 おそらく、戦士と勇者が装備できる「ふうじんのたて」がこのゲーム最強の盾であり、これが最終装備になるという想定だった。勇者専用の盾を実装するという心づもりは、堀井さんの中にはなかった。
 伝説の盾はこのゲームには存在しない、という形で作られる予定だったのです。それはなぜか。
 
 
■ゆうしゃのたてがなかった理由
 
 ゆうしゃのたてに相当する盾を導入するつもりがなかった理由も、想像可能です。
 
 ドラクエ3の終盤は、ドラクエ1とほとんど同じ、まったく同じに近い物語が展開します。高貴な女性を救ってしるしを手に入れ、太陽の石と雨雲の杖で、虹の橋をかける。
 
 これ、ドラクエ1をそのままなぞってるじゃん、と思ったところでエンディングがきて、どんでん返しが起こります。
「逆だ! ドラクエ1の主人公が、オレの冒険をなぞっていたんだ!」
 
 このどんでん返しを最も印象的な形で体験させたいというのが、堀井さんの目指していたことです。
 
 だから、ドラクエ3の終盤は、ドラクエ1に近いほどいい。近ければ近いほど、「未来になって、俺の子孫は、俺の冒険をそのまま追体験することになるんだな……」という実感が強くなるからです。
 一から十まで同じにすることはさすがにできないが、近づけたほうがいい。
 
 さてドラクエ1に、伝説的な盾は存在しません
 ロトのつるぎとロトのよろいは存在していて、竜王戦の切り札となりますが、ロトのたてはないのです。店売りのみかがみのたてが最終装備となることが多いでしょう。
 
「ドラクエ3終盤は、ドラクエ1をなぞる展開になる」
「ドラクエ1に近いほうがよりよい」
「ドラクエ1に、ロトのたてはない」
 
 だから、堀井さんは、ドラクエ3に、ロトのたてに相当する勇者装備を入れることを考えなかったのだ……と推定できます。
 
 この論を裏打ちする根拠もあります。それはドラクエ3のエンディングのメッセージです。

かれが のこしていった
ぶき ぼうぐは ロトのつるぎ
ロトのよろい として
せいなるまもりは ロトのしるしとして
のちのよに つたえられたという。

 
 多くの人が、感動をおぼえながらも、「ん?」と思った点だと思いますが、「ロトのたては?」
 
 ひとつには、この文章にロトのたてを加えると、そのぶん冗長になり、感動をそぎます。「ロトのそうびとして」みたいにくくっても、味わいが減ります。
 
 そういうこともあるでしょうが、それ以前に、
 
「堀井さんはこのゲームに、ロトのたてに相当するものを入れるつもりじゃなかった」
 
 という条件を加えると、がぜん、飲み込みやすいのではないでしょうか。
 入れるつもりじゃなかったから、それに関する言及もなかったのです。「ゆうしゃのたて」のことなんて考えてもいなかった状況で、このエンディングメッセージは書かれた。だからロトのたての話は出てこないのである。
 
 しかし、例によって、複数のスタッフから、何度もこういうことを言われる(推定)。
 
「ロトのたて、ないの?」
「このふうじんのたてが、ドラクエ2のロトのたてになるの?」
 
 堀井さんが雑誌に持ってたドラクエの連載ページでも、「ドラクエ1にロトのたてって本当にないんですか?」というハガキがお子様たちから届く(私、見たことある)。
 
 そうなると堀井さん、「やっぱ、ロトのたてが求められているよなぁ……」。
 あったほうが、喜んだり、納得したりする人が多いのだったら、入れようか。
 
 しかし、制限があって、ゲームに入る盾は7種類である。どれかを抜かないとゆうしゃのたては入らない。
「ああ、じゃあ、このふうじんのたてを、ゆうしゃのたてっていう名前にして、勇者専用にしよう。効果は……ふうじんのたてのままでいいかな」
 
 という……そういう処理がなされた。
 
 
■体験をつくるということ
 
 私が興味深いと思うのは、盾をひとつボツにすることになったとき、堀井さんは、「なげきのたてを抜こう」という判断をしなかったことです。
 
 なげきのたては呪われたアイテムで、デメリットがあまりにも強く、通常プレイでは役に立つことが極めて少ないものです。
 いっぽう、ふうじんのたては極めて強力。戦士がふうじんのたてを、勇者がゆうしゃのたてを持つことができれば、心強いにちがいありません。
 でも、堀井さんはそうしなかったのです。
 
 なげきのたてを抜くということは、「うっかり呪われてしまい、やっかいごとを抱え込む」という「魅力的な体験」をひとつ削ぐことになるからでしょうね。
 
 ふうじんのたてがあれば強いでしょうが、「いい装備を手に入れて楽になってうれしい」という体験は、他の装備でいくらでも提供されています。
 いっぽう呪い装備は、数じたいが少なく、体験の機会が少ない。これを減らすということは、ただでさえ少ない「呪われるという魅力的な体験」がますます減ってしまう。
 
 ついでにもうひとつ。
 ふうじんのたてをゆうしゃのたてにして、勇者専用にしたのは、「ブレス耐性装備を減らそう」という意図があったかもしれません。
 
 つまり、「呪文攻撃に比べて、ブレス攻撃は、防具でふせぎにくい」という仕様を作ろうとしたかもしれないということです。
 
 製品となったFC版ドラクエ3には、呪文を防ぐ防具として、「まほうのよろい」「まほうのほうい」があります。これらは、すべての属性の呪文ダメージを減衰させてくれます。防具で呪文を防ぎやすいのです。
 
 いっぽう、ブレス耐性の防具は、FC版にはドラゴンメイルしかありません。そしてこの鎧は、炎属性のダメージしか減らしてくれません。氷のブレスには効果がないのです。
 カーニバル版資料のドラゴンメイルの欄には、「ファイア ブレス ダメージを2/3に。」と明確に書かれています。ドラゴンメイルが炎しか防がないのはバグとかミスではなく、明確にそういう仕様にしようという意図があってのことです。
 
 そうなっている理由はいくつか考えられます。
 
 ひとつは、フバーハの呪文の存在です。ブレスのダメージはフバーハをかければ減らすことができるのですから、「それを使うという体験をしてくれ」という意図はあったでしょう。
 ドラクエ3にはマジックバリア(呪文防御。のちのシリーズで導入された)はないので、「ブレスは防御呪文で対策できるが、呪文攻撃は防御呪文で対策しにくい」という仕様になっています。
 マホカンタはありますが、ドラクエ3のマホカンタはホイミも反射してしまう使いづらい呪文です。おまけに一人にしか効果がありません。
 
 もうひとつ。ドラゴンメイルが炎ブレスしか防がない理由は、「ゾーマが氷のブレスを吹いてくるから」にちがいないと私は思います。
(ゾーマが氷属性の攻撃だけを使ってくるのは、「炎=生命の象徴」「氷=非生命の象徴」という表現をするためだと思います。いてつくはどうが「凍てつく」なのもきっとそれが理由です)
 
 フバーハはいてつくはどうで解除されてしまうし、氷のブレスを軽減する装備はない。よって、我々のパーティーは、ゾーマの氷雪攻撃をフルサイズで浴びるしかない。そういう状況を意図的に作ろうとしている。たぶん。
 
 そして、FC版ドラクエ3において、ゾーマの氷ブレスを防ぐ、ただふたつの防具が、ひかりのよろいとゆうしゃのたてなのです。
 
 すさまじい氷のブレスを浴びて、他の仲間たちが、魂も凍りつき、ばたばたと倒れていくなか、精霊ルビスに愛され、光をたくされた、この世にただひとりの若者が、それでも耐え抜いて倒れずに立っている
 
 そういう「体験」を提供しようとして、「ブレスは防具で防ぎにくい。例外は勇者装備のみ」という仕様になっている(と思う)。
 
 ところが堀井さん、氷ブレスも軽減してくれる「ふうじんのたて」というアイテムを実装しようとしてしまった。これは、勇者だけでなく、戦士も装備できるものだ。
「でも、ほとんど大多数のプレイヤーは、勇者に装備させるでしょ」
 くらいに考えて、これはOKだよねと判断していたのだけど、だんだん気になってきた。
 
 そのころ、「ロトのたてもあるべきでは?」という話がでてきて、堀井さんもその気になった。ひとつ盾をけずって、ゆうしゃのたてを入れよう。
「あ、ふうじんのたてを勇者専用にすれば解決では?」
 そうすれば、ブレス耐性盾を「絶対に勇者が装備する」というかたちになる。ゾーマの猛攻にひとり耐える勇者、というイメージが絶対的なものになる。
 
 それで、ふうじんのたてが、ほぼそのままゆうしゃのたてにスライドするという処理になった……とまあ、こんな物語があったのではないかと想像するわけですね。
 
 
■ふうじんのたてのその後
 
 ドラクエ6まで出たあとに、リメイク版ドラクエ3が作られました。リメイク版にはふうじんのたてが追加されました。
 
 されましたが、リメイク版のふうじんのたては、特殊効果のない、中盤むけのただの盾でした。
 
 ドラクエ4・5・6にはふうじんのたてが出ていて、どれも道具使用でニフラム(に近い)効果がありました。5ではそれに加えてブレス耐性つきでした。
 
 リメイク版3はそのあとに出たのに、そういった特殊な性能が全部なくなっています。
 
 考えられる理由としては、まず、ブレス耐性を備えたドラゴンシールドを実装することにしたから。
 おそらく「FC版の3は戦闘がちょっときつかったよね。もうちょっとマイルドでもいいよね」という判断があったでしょう。戦闘のきつさの原因は主に、敵のグループ攻撃が痛いからなので、それを防ぐものが提供された。まほうのたても追加されました。
 
 ブレス防御としてはドラゴンシールドがあるので、ふうじんのたてにブレス耐性はいらないねという話になる。
 
 ニフラムについては……。
 前述のとおり、ニフラムというのはドラクエ3では、「非生命の世界」「死者の世界」に対抗するための力を象徴する呪文です。だから勇者はニフラムを習得し、ひかりのたまは二フラムの効果があるというプランが一時期存在したわけです。
 
 ここに「MPを消費せず無限にニフラムが打てる盾」を「勇者以外が使える」状態を設定するとどうなるか。
「非生命の世界に対抗する力を象徴するもの」を、勇者でないキャラクターが持っているという意味になる。
 
「無限にニフラムを打てるアイテムを勇者だけが持つ」なら、たぶんよかった。でも、ドラクエ6まで話が進んで、ふうじんのたてはそういうイメージのアイテムではなくなった。
 
「二フラムを戦士が持ったら、この物語がだれのお話かってことがブレるよね」
 
 たぶんそういう判断になって、「ふうじんのたてに二フラムの効果はつけられないね」ということになったんだろうと思います。
 
 
 続きます。

 

 

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