pixivは2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
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ランダルが部屋から全然出てこない。
これは今に始まったことじゃないけど、彼は古書や論文、実験の器具に囲まれながら生活していて一度スイッチが入ると研究に没頭してしまう。
だから定期的に此方から呼び出して外に出さないといつまでも出てこないのは勿論、やつれた状態でリビングに現れることがしばしば。
いつも心配して食事を差し入れるこちらの身にもなって欲しいのだが、何度注意しても結局集中してしまうと部屋に籠りきりなので半分諦めかけている。
私が妥協するしかないのも癪ではあるが。
今日は持ち運んでこれる食事ではないのと彼が籠城し続けている時間が長過ぎるため、気分転換も兼ねて彼を呼びに来たのだ。
正直、あの部屋にいる時の彼を尋ねる時は少し緊張するから本当は早めに出てきてもらいんたかったんだけど。
やや埃っぽい廊下を歩きながら例の部屋まで歩みを進め目的地を目指す。
この奇妙な家の間取りも最初は覚えるのに手こずったものの今では慣れたものだ。
似たような景色が広がる迷路のような道を何度か曲がっていくとようやく目的地が見えた。
重厚感のある扉の前で立ち止まる。
一度深呼吸をしてからノックを3回。.....案の定返事は無い。
「ランダル!ランダル!」
.....やはり返事は無く。だから嫌なのだ。
仕方なく装飾であしらわれた取っ手を下げて扉を押すと鈍い音を立ててゆっくりと開いていった。
室内は相変わらず薄暗く気味が悪い。
換気をあまりしていないようにも思えるほど空気から既に埃っぽい気がする。
大きな本棚に標本、謎の人形、ホルマリン漬けのような何か....とにかく視界に入るものがクセのあるものばかりで早く戻りたい。
暗がりの中を少し進むと側にいくつか骨格標本が飾られているのが見えた。
見たことのない魚のような生き物から哺乳類らしき動物だろうか、あとは人体のようなものも見えたが…..そこにはあまり触れたくない、というか触れてはいけない気がする。
骨格標本といえば昔水族館で見たクジラの標本を思い出す。
家族や友人と何度か行ったことがあり、その大きな骨格を色んな角度から撮って写真に収めていた。
思わぬところでノスタルジーを感じ、その場に立ち止まる。
そして少し屈んだ体勢でそれを眺めながら暫く思い出に浸っていると後ろから声をかけられた。
「何を見てるの?」
「ッうわっ!?は、ぁ......ランダルか....。ビックリした。」
「フフ、ごめんね。私の部屋だから基本私以外はいないけど。......で、ナマエが来てくれたってことは出なきゃいけないのかな?」
「そうそう。早く出てきて、ていうか換気もして。」
「......分かったよ。一旦作業にキリをつけるから。」
彼が書類と本を片付けている間にもう一度標本を眺める。
綺麗に並ぶそれらは部屋のオブジェとして馴染んでいた。
昔は家族や友達と何度か水族館行ったんだよなあ....今はもう行けないけど。
「ナマエはその標本に興味があるの?」
「えっ、あ〜.....。ちょっと昔を思い出すんだよね、懐かしくて。」
「フーン........。」
なんというか、聞いておいてこの態度.....。
もしかして拗ねたのかもしれない。
少しドライかもしれないけどランダルから直接過去のことを聞かれたことはあまり無いし、此方から話すことも基本的には無い。
全く話さない訳ではないのだが、こうしてあまりいい顔をしないことも珍しくなかったから控えていた。
彼はいい歳だろうに意外と子どもっぽいところがやや見受けられる。
でも私の人生はランダルのものではないし、全てを話す必要なんて無いとも思っている。
今回もきっと話しても話さなくても微妙なアクションだろうな。
というか話して彼の変なスイッチを押すのも嫌だし、後からネチネチ引き摺られるのもとても面倒だ。
結局ランダルが求める言葉なんてさっぱりわからないので、とりあえず話題を逸らすことにした。
「この標本の背骨?とか大きい口や尖った歯ってカッコいいなって思うの。」
「そうだったの?ナマエはあまり此処へは来たがらないし苦手だと思ってたよ。」
「そりゃあね.....、ホルマリン漬けみたいなものは苦手だけど、こういう骨だけの標本なら造形美として良いな〜って。」
「そっか。まあ苦手なものがあるなら普段来る気にはならないね、残念。あと…..因みに私も尖った歯はあるんだけど.....」
見てみる?と言われたのでせっかくだから見ておく。
するとランダルが屈んで私に見やすい高さに合わせて口を開けてくれた。
私のとは違いよく見ると殆どの歯が鋭利な形になっていた。
奥歯の方は私と似ているが、前歯周りは全て犬歯のような尖りがあり全然違う。
前々から彼の身体は人間からは逸脱してるように感じていたけど、こんなに違うものなのか。
普段の格好も相まってなんだか吸血鬼のようにも見える。
「えっ、ランダル凄い.....!こんなに近くで見たことなかったけど結構迫力あるよ。ちょっと感動してる。」
思わず食い入るようにじっと見つめてしまう。
今は引っ込めているが折り畳まれた舌も彼の血色の関係なのかかなり赤味が強いようで驚いた。
こうして少し比べるだけでも私とは違う部分が多過ぎる。
それなりに共に過ごしててもまだまだ知らないことが沢山あるようだ。
「あぁ、ごめんランダル。そろそろーーー....」
「そんなに近くへ来たら食べられてしまうよ?」
言葉を続けようとすると遮られ、気付いた頃には私の頸に手が回っており迫るそれに口を塞がれてしまった。
「んっ....!?んぅ、ン、んんっ.....!」
「ン、ん.....、はっ......。」
くちゅりと唾液の交わる音が耳に入り羞恥を煽る。
背中に回る腕がより私たちを密着させ逃げられなくなってしまう。
身を捩って抵抗しようとするが、それがかえって彼に身体を押し付けているような体勢にもなり余計に恥ずかしくなる。
「ぁ....んっ、ゃ.....ッ、ンっ.....」
「.....ん、はぁ....。.....ねえ、そんなに私を煽ってどうする気?」
抱き締められたまま背筋をなぞられたかと思えば、ブラのホックのある位置を緩く撫で下へ指を食い込ませてくる。
外そうと思えばいつだって外せる、そう知らしめるような動きが余計にこの先の想像を掻き立てるのでパニックになってしまう。
そんな私を他所にランダルは指を差し込みグイっと伸ばしたホック部分をパチンと肌に当てて焦らしてくるのだ。
「ぁ、ゃだ.....、そんな....ッ」
「ん、ちょっと.....。」
その刺激から逃げようとして腰は突き出て胸をランダルの身体に押し当てる形になってしまう。
早く離れたいのに.....!体勢に耐えられず更に顔に熱が集まっていく。
だんだん腰が重くなり下に落ちそうになるので脚の力で支えるが、頑張っても内股気味になってしまう。
「ぁ、ん......、ぅ.....ッ!」
動揺した隙に再び唇が合わさり舌が侵入してきた。
私とは違う長いそれは上の歯から順に上顎を辿っては擦り、着実に咥内を犯していく。
必死に酸素を取り入れようと口を開くのに彼の舌がすぐに捕えにくるせいで上手く呼吸ができない。
互いの唾液が音を立てて絡まり呼吸を薄め、掬いきれなかった分が顎へ伝い服を濡らしていった。
短く息を吸う中で、背中に回されていた手がするすると降りてきて腰、お尻、内腿にくると全身が強張り一気に危機感が増す。
それ以上はダメ、本当にダメ......!
強く思って抵抗しても実際には震えながら彼の服を握るだけで押し除けることも叶わない。
内腿を撫でる骨貼った手はいよいよ真ん中へと近付いてきて嫌でもビクビクと反応してしまう。
もう無理ーーー........!
一瞬全身に強く力が入りすぐに脱力感に襲われる。
膝からガクンと落ちるとすかさず彼の腕で腰を支えられた。
「フフ....、気持ちよくてイっちゃった?」
「はぁ.....、はぁ......ッ、....ば、か......っ!」
「ナマエってば警戒心薄過ぎだから。」
あとね、男は皆馬鹿なんだよ。
そう続けて眼鏡越しに笑う憎らしいその顔をひと睨みして私は瞼を閉じた。
キスをするお題シリーズの最後です。
※軽度な性的描写あり
舌の長いキャラとするキスは格別なんですよ….♡