静岡県・下田の海岸で遊泳中の20代の中国人女性が潮に流され、約36時間も漂流しているところを、千葉県館山沖を航行中の日本のタンカーに奇跡的に発見された。タンカーの乗員が海に飛び込み、文字通り命がけで女性を救助。最後は海上保安庁のヘリで病院へ運ばれた。女性の命に別条はなく、入院の必要もなかったという。
これ、よかった、よかった…という〝奇跡の美談〟で済ましてエエんか? 断っとくが、ワシは何も助かった相手が中国人やから、こんなこと書いとるわけやないで。
女性は、まだ「海開き」も行われとらん海岸で泳いどったという。富士山でも「山開き」前に登った登山者が亡くなる事故があったばかりや。ただしワシは、ルールを破り、危険を承知でやったことやから「自業自得」やの、無法な行為で救助する人たちに迷惑かけて…なんて、というつもりは毛頭ない。
相手が何人(なんぴと)であろうと、遊泳禁止を守らんで泳いでいようが、海で助けを求める人がおったら、何をおいても救助の手を差し伸べるのが「海の男」のシーマンシップや。タンカーの乗員は2メートルもの高波にもかかわらず、ためらわず海に飛び込んだ。そして〝1秒でも早く〟と女性を病院に運んだ海保も当然のことをしただけなのである。
せやけどや。この女性が「海から帰ってこない」という友人らの一報を受けてから、警察も海保も広い大海原を必死で行方を捜し回っとったんやで。助かった女性は、カメラの前で名乗り、「海開きの前に泳ぎに出てすいません。救助してくれた皆さんにご迷惑をお掛けしました」と頭を垂れ、ひとこと礼を言い、わびを入れてもバチ当たらんやろ。
中国政府や在日本中国大使館が代わりに感謝したのも聞かん。さらに蘇州の日本人母子を(殺人鬼から)守った中国人女性同様、中国国内で報道されることはないやろ。そりゃあ無理やろな。沖ノ鳥島周辺の公海上に勝手にブイ設置されたかて、「情報収集中」などとしか言えん〝ヘタレ〟の日本政府はすっかりナメられとるからな。
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宮嶋茂樹
みやじま・しげき カメラマン。昭和36年、兵庫県出身。日大芸術学部卒。写真週刊誌を経てフリーに。東京拘置所収監中の麻原彰晃死刑囚や、北朝鮮の金正日総書記(いずれも当時)をとらえたスクープ写真を連発。著書に『ウクライナ戦記』など。