任天堂、「最長寿」ゆえの苦しみ 4〜6月純利益55%減
任天堂が2日発表した2024年4〜6月期の連結決算は、純利益が前年同期比55%減の809億円だった。四半期の減益幅が5割を超えるのは17年7〜9月期以来、約7年ぶり。前年同期にマリオの映画などが大ヒットした反動が出た。「ニンテンドースイッチ」が任天堂の据え置き型の主力ゲーム機として「最長寿」になったことも低迷に拍車をかける。
純利益は直近の市場予想平均(QUICKコンセンサス、797億円)を上回った。売上高は47%減の2466億円、営業利益は71%減の545億円だった。任天堂はドル建てやユーロ建ての現預金を保有し、円安局面は評価益が生じる。4〜6月の期中平均レートが1ドル=約156円で推移し、為替差益に306億円を計上したが補えなかった。
前年同期は23年4月のマリオの映画公開や5月の発売後の3日で1000万本を販売した「ゼルダの伝説」の新作が寄与し、純利益は4〜6月期としては最高益(1810億円)だった。24年4〜6月期はその反動が大きい半面、そうした特殊要因のなかった22年4〜6月(1189億円)も下回った。
スイッチの販売台数が46%減の210万台、ゲームソフトは41%減の3064万本とふるわなかった。スイッチの通期の販売計画に対する進捗率は6月末時点で16%にとどまる。
スイッチは発売8年目に突入し、販売期間は2700日を超えた。次の主力ゲーム機(据え置き型)が発売されるまでの「任天堂の顔」となる期間でみて、7月11日に「ファミリーコンピュータ」の2686日を抜いて最長となった。
最長寿はコアなゲームファンからライト層まで幅広く親しまれた結果で、24年4〜6月期の業績は8年目としては健闘したとの見方もできる。3月末時点のスイッチの累計販売台数は1億4132万台。スイッチの後継機の発売日次第になるが、販売台数は携帯型を含む任天堂のゲーム機で最多の「ニンテンドーDS」(1億5402万台)を上回る可能性がある。
任天堂の古川俊太郎社長は5月、後継機に関し「25年3月期中にアナウンスする」と表明した。発売が現実味を帯びたことで消費者の意識が後継機に向き、スイッチは新規需要を取り込みづらい。今期は業績に限れば、減益幅をいかに抑えるか守りの1年になる。
秋以降に有力なソフトの発売を予定する。9月に「ゼルダの伝説」に登場するキャラクター「ゼルダ姫」を主役とした新作を出すほか、10月に「スーパーマリオパーティ」、11月に「マリオ&ルイージRPG」の新作も投入する。
東洋証券の安田秀樹アナリストは「9月以降の新作投入により、通期のスイッチ販売計画は達成できるのではないか」と分析する。
ソフト以外では、24年後半にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)内に「ドンキーコング」をテーマにした新エリアのオープンし、京都府宇治市に「ニンテンドーミュージアム」の開業も予定する。
投資家やゲームファンが最も関心を寄せる後継機の新情報は2日はなかった。古川氏は今期について「スイッチの勢いの維持と後継機の準備が何よりも大切」と語る。業績が守りなら、後継機の開発は攻めだ。古川氏が攻めの手をいつどのような形で繰り出すのか、ステークホルダー(利害関係者)は固唾をのんで見守っている。
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(更新)- 小宮一慶小宮コンサルタンツ 代表取締役CEOひとこと解説
任天堂はこれまでもハードの売上げで業績が大きく変動していた。特にハードが不人気などで売れなかった時期は業績が低迷することもあった。 一方、ニンテンドースイッチが出てからは収益力が大幅にアップした。大幅というよりも驚異的に向上したと言っても良い。それだけ売れたのだ。そのニンテンドースイッチにも翳りが出ている。今後の業績は後継機によるところが大きい。
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