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2024.01.11 17:30

マスク買収後のXは「8割」の安全部門の技術者を解雇、豪当局発表

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オーストラリアのオンライン安全委員会であるeSafetyは1月10日に発表したレポートで、イーロン・マスクがツイッターを買収し、社名をXに変更した後、トラスト&セーフティ部門のエンジニアの80%を解雇し、それ以外の同部門の従業員の3分の1も解雇したことを指摘した。

同委員会は、オーストラリアのオンライン安全法(Online Safety Act)に基づき、Xがユーザーの安全をどのように確保しているかという質問に答えるよう要求していた。Xは、2022年10月にマスクによって400億ドル(約5兆8000億円)で買収される以前は、世界全体で279人のエンジニアをトラスト&セーフティ部門で雇用していたが、2023年5月末までに55人に減少させていた。また、以前は4062人だった同部門の従業員数は、2849人に削減され、フルタイムのコンテンツモデレーション(投稿監視)チームは107人から51人に半減した。ただし、Xのモデレーション担当の大半は契約社員であり、2022年10月に2613人だった契約モデレーターの数は、2023年5月には2305人に減少していた。

eSafetyによると、この削減はXのオペレーションに影響を及ぼしており、マスクの買収以来、ヘイト関連の投稿への対応時間が20%遅くなったとユーザーから報告を受けているという。また、憎悪のこもったダイレクトメッセージへの対応は70%遅くなったという。

Xは同委員会に対し、同社に外部からの助言を提供していたトラスト&セーフティ部門を解散した後、それに代わる組織の設立を考えていないと述べた。Xはまた、マスクがトップに就任する以前から、世界のヘイト問題に対処する専任のスタッフを置いていなかったことを同委員会に認めた。

eSafetyのジュリー・インマン・グラント委員は、2014年から2016年にかけてツイッターのトラスト&セーフティ部門で勤務していた。彼女は、マスクの就任後に、Xに関するヘイトの申し立てが急増したため、同社の調査を開始したとフォーブスに語った。彼女はまた、以前暴力的で憎悪的な行為に関する違反でフラグを立てられたアカウントが、再び許可されているのを見て不快感を覚えたと述べている。

「彼らは、何万人もの危険なドライバーを何の精査も、制限も、監視もなしに再び道路に送り込むことで、大混乱を引き起こしているのです」と彼女は付け加えた。

数億ドルの罰金に直面の可能性

フォーブスは以前、マスクの買収後にツイッターのトラスト&セーフティ部門のチームが大幅に縮小され、マスクが違法コンテンツの排除を公約していたにもかかわらず、児童搾取の問題が続いていることを報じていた。しかし、人員削減の規模がデータで示されたのは今回が初のことだ。

eSafetyは、これとは別に12月に、Xが児童の性的虐待にどのように対処しているかについての情報開示を求めたところ、それに応じなかったとして、民事訴訟を起こすと発表していた。Xは以前、情報開示を怠ったとして61万500豪ドル(40万9000ドル)の罰金の支払いを求められたが、これを拒否していた。

裁判所が政府側に有利な判決を下した場合、Xにはさらに多額の罰金が科される可能性があるとグラント委員は述べている。

同委員によると、裁判所は、Xに2023年3月まで遡って、1日あたり最大78万2000豪ドル(約7600万円)の罰金を科す可能性があり、罰金の総額は数億ドルに上る可能性があるという。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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CEOs

2024.01.08 12:00

イーロン・マスク、米紙が報じた「違法薬物の使用」を否定

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イーロン・マスクはジョー・ローガンのポッドキャスト番組でマリファナを吸って以来、無作為の薬物検査を受けていると主張している。(Photo by Chesnot / Getty Images)

イーロン・マスクは米国時間1月7日、違法薬物の使用を否定した。

その前日、米ウォールストリート・ジャーナル紙は、電気自動車会社テスラのCEOで宇宙開発企業スペースX創業者のマスクが違法薬物を常用していることで、2社の幹部社員がいかに心配しているかという詳細な記事を掲載していた。この報道に対し、マスクは、3年間に受けた無作為の薬物検査でも、彼の身体からは「微量の薬物やアルコールさえも」検出されなかったと主張した。

マスクは2018年、テレビ司会者ジョー・ローガンのポッドキャスト番組に出演した際、収録中にマリファナを吸引してみせ、その様子が映像で公開されていた。この行為は、NASA(米国国家航空宇宙局)との関係においてマスクの立場を窮地に陥らせることになった。NASAは、国際宇宙ステーションへ宇宙飛行士を輸送する業務を承認された政府請負業者として、スペースXが薬物のない職場であることを保証するよう求めていたからだ。

それ以来、マスクはローガンの番組でやった行為を大したことではないと主張する態度を取っており、ポッドキャストではマリファナを「一服」しただけだと主張し、マスクの公式伝記を著したウォルター・アイザックソンには「違法薬物をやるのは本当に好きではない」と語っている。

マスクはポッドキャストに出演した後、3年間の無作為の薬物検査を受けることに同意しており、それ以来、体内からは「微量の薬物やアルコールさえも検出されていない」と主張している。

マスクの弁護士であるアレックス・スピロも、ウォールストリート・ジャーナル紙の取材に対し、マスクが「一度も検査に引っかかったことがない」と認め、同紙の報道には「虚偽の事実」が含まれていると述べた。だが、それがどのようなことであるかは明らかにしなかった。

マスクは過去に、うつ病の治療のためにケタミン(解離性麻酔薬)を服用していたことも認めている

ケタミンは米国食品医薬品局(FDA)から麻酔薬としての使用のみが承認されているが、近年はうつ病などの気分障害を治療するために使用する「適応外」使用の臨床試験が増加している。

ウォールストリート・ジャーナル紙は6日、マスクの薬物使用に関する詳細な記事を発表した。これによると、テスラの役員らは数年前からマスクの薬物使用について非公式に語っており、マスクの弟であるキンバル・マスクに、彼の行動を懸念するように申し入れたこともあったという。

マスクは、彼の会社の幹部たちといっしょに薬物を使用していたという話もある。複数の情報筋がウォールストリート・ジャーナル紙に語ったところによると、マスクはテスラとスペースXの取締役に就く弟のキンバルと娯楽のためにケタミンを服用したり、スペースXの取締役であるスティーブ・ジュルベトソンとも不明の違法薬物を服用したという。

同紙は、テスラの取締役だったリンダ・ジョンソン・ライスが、マスクの薬物摂取と不安定な行動を理由に、2019年に同社を去ったとも報じている。

フォーブスは、イーロン・マスクの純資産を2435億ドル(約35兆2000億円)と推定し、これにより世界で最も裕福な人物と評価している。その資産の大部分は、保有するテスラとスペースXの株に基づく。

forbes.com 原文

翻訳=日下部博一

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海外

2024.01.05 13:00

スペースXが米当局の「違法解雇」の訴えに反発、法廷バトルに

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イーロン・マスクの宇宙開発企業スペースXは1月4日、全国労働関係委員会(NLRB)を相手取った訴訟を起こし、同社が従業員を違法に解雇したとする訴訟は、同委員会の仕組みが違憲であるため却下されるべきだと主張した。

NLRBは3日、スペースXが8人の従業員を違法に解雇したとする訴訟を起こしていた。これらの従業員は、マスクに対する批判的な見方を示し、職場に対する懸念を記した書簡を共有したとされている。

スペースXは、テキサス州の連邦地裁で起こした裁判で、同一事件で告発者、検察官および判事としての役割を担うNLRBが、外部の監督を受けない「違憲の構造を持つ機関」であり、今回の訴えは保留されるべきだと主張している。

「当社に対するNLRBの訴訟は、陪審員による裁判を受けるための憲法上の権利を奪っている」とスペースXは述べている。

同社は、今回の提訴の中心となった書簡が「全米のスペースXの従業員に多大な混乱を引き起こした」とし、それに関連する従業員の何人かは 「多くの会社のポリシーに違反したことが理由で解雇された」と主張した。

NLRBはフォーブスのコメント要請を拒否し、スペースXは即座に応じなかった。

スペースXに対するNLRBの訴状は、書簡の起草と回覧に協力した8人の従業員を違法に解雇し、他の従業員が書簡を共有するのを妨げた疑惑を含む、8つの不正な慣行を指摘している。NLRBの法務顧問は、和解の条件の一環として、解雇された従業員の復職と未払いの賃金の支払いに加え、スペースXが労働者の権利に関する通知を掲示することを求めている。

2022年に出回り始めたこの書簡は、数百人のスペースXの従業員が署名したもので、マスクのX(旧ツイッター)での言動が「社員らを困惑させている」と批判している。

1935年に全国労働関係法に基づいて設立されたNLRBは、労働者の権利を保護し、不当労働行為の防止と解決に従事している。同機関の委員らは、労働関係法を解釈する理事と、不当労働行為を調査・起訴する法律顧問の2部門から構成されており、大統領によって任命され、上院の承認を受けている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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2023.12.13 12:00

マスクのXが抱える問題はシンプル「アプリに革新性がない」

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イーロン・マスクが「自分は広告主たちに戻ってきてほしくない」ということを過激な表現で語り、自身の会社を潰すつもりなのかと話題をさらったが、今考えると、この騒動は大げさだったかもしれない。

いまだに誰もがツイッターと呼んでいるXの本当の問題はシンプルだ。このアプリはそれほど有益ではない。長い間、新たなイノベーションがなにも導入されていなかった。

メタやXといったソーシャルメディア企業が、ミームをシェアしたり陰謀論をリツイート(失礼、Xになってから「リポスト」と変更されたのだった)したりするユーザーに課金をせまる、新たな現実が形成されつつあるなかで、Xが進むべき道はひとつしかない。

マスクが、自身の言動を反省するとは思えない。だが、ユーザーは大して気にしていないと、筆者は思う。私たちは、ニュースフィードに氾濫する、気が滅入るような投稿をスクロールして、最新の炎上案件に目を留め、無数の罵詈雑言に呆れ返るが、たいていは、そのまま素通りして日常に戻る。

こうした茶番はすべて、本質的なことからすると「雑音」でしかない。つまり、新しい製品を実際に世に送り出そうとしたり、フォロワーたちとインサイトを共有したり、テクノロジーにおけるイノベーションに乗り遅れないようにしたり、といったことを妨害する雑音でしかない。私たちはドラマにはそれほど興味がないのだ。

ソーシャルメディアの炎上はいわば、職場にいる有害な社員のようなものだ。大げさに騒ぎ、わめき散らし、長々と演説をぶつ、感情の火炎放射器のような人物に、あなたも心当たりがあるだろう。たいていの人は、このような人物が普通ではないとわかっているので、あまり気にかけない。

私たちは、騒ぎを無視することに長けている。本当の人生は、日々の仕事をこなし、家族と時間を過ごすといったことの細部にある。マスクが何をしているかについて、本気で注目している人はほとんどいない。

率直に言って、マスク自身もこのことを知っている。ここ数週間、「反ユダヤ的」発言や広告主を罵倒することで騒動を巻き起こしつつ、彼はいくつか示唆的なコメントを、(特に『ニューヨーク・タイムズ』紙のインタビューで)口にしている。彼は、結果を左右するのは大衆(彼の言葉を借りれば「地球上の人々」)だと認識している。彼がXでしばしばアンケートをとるのは、自身の最大の原動力はユーザー・エンゲージメントであるという考えの表れだ。
次ページ > 私たちはもはや、Xを利用することにさほど価値があるとは思っていない

翻訳=的場知之/ガリレオ

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