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「千と千尋」はなぜ英国人を魅了するのか 未来切り開くジブリの女性たち、ロンドン公演が大盛況

篠田航一・ロンドン支局長
「千と千尋の神隠し」が上演されている英ロンドン・コロシアム劇場。開演前は大行列だ=2024年6月14日、篠田航一撮影

 英語界の権威とされる「オックスフォード英語辞典」(英オックスフォード大学出版局)の今年3月の改訂版に、日本語由来の新たな言葉が20個以上も仲間入りした。

 漫画・アニメ人気を背景に、mangaka(漫画家)、tokusatsu(特撮)、isekai(異世界)などが加わったほか、karaage(唐揚げ)、donburi(丼)、tonkotsu(豚骨)など食文化に関する言葉も多く追加された。

 その一つがonigiri(おにぎり)だ。この言葉がポピュラーになった背景として、スタジオジブリ製作の宮崎駿監督のアニメ映画「千と千尋の神隠し」(日本公開2001年、英語名・Spirited Away)の影響を指摘する声もある。英紙デーリー・メールは、「主人公の千尋が元気を取り戻すため、おにぎりを食べる」シーンで有名になったと伝えた。

 「千と千尋の神隠し」は、小学生の少女・千尋が引っ越し先に向かう途中、まさに「異世界」に迷い込んでしまう物語だ。千尋は八百万(やおよろず)の神様がやって来る銭湯で働きながら、豚に変えられた両親を人間に戻そうと奮闘する。

 作品は舞台化され、現在はロンドンの老舗劇場「ロンドン・コロシアム」(約2300席)で連日の公演が続いている。

 4月30日のプレビュー公演後、5月から本格的に始まり、しばらくは千尋(千)を橋本環奈さんが演じた。私が見に行った6月中旬の千尋は上白石萌音さんで、…

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ロンドン支局長

 1997年入社。甲府支局、東京社会部、ベルリン特派員、青森支局次長、カイロ特派員などを経て現職。著書に「ナチスの財宝」(講談社現代新書)、「ヒトラーとUFO~謎と都市伝説の国ドイツ」(平凡社新書)、「盗まれたエジプト文明~ナイル5000年の墓泥棒」(文春新書)。共著に「独仏『原発』二つの選択」(筑摩選書)。