テストステロンはウソがつけないホルモンと呼ばれています。どういうことなのか、説明しましょう。
ドイツのボン大学で行われた研究に興味深いものがあります。91人の若い男性をほぼ半分に分け、ひとつのグループにはテストステロンの塗り薬、もうひとつのグループにはプラセボ薬(偽薬)を塗って実験を行いました。
実験の内容は、サイコロを転がして、出た目を自己申告してもらい、その目の大きさに比例した額を賞金として出すというものです。自己申告ですので、実際に出た目に関係なく大きな数を申告すれば、その分、賞金の額は大きくなります。つまり不正し放題の状況でゲームの結果を記録したのです。
その結果、プラセボのグループとテストステロンを塗ったグループで明らかな差が確認できました。プラセボグループは明らかに確率よりも「高い目が出た」と申告したのに対し、テストステロングループは1から6までの数がほぼ均一に出た、と申告したのです。
つまり、プラセボグループには「実際に出た目より大きい目」を申告した人がいたが、テストステロングループはみんながほぼ正直に申告したということです。ウソをつける状況なのにウソをつかないということで、テストステロンに公平、公正を重んじる効果があるということが分かりました。
テストステロンは、社会においてどのように振る舞うかという「生き方」に非常に深くかかわっていると言えます。時には自己犠牲を伴っても大義のために行動する、自分が不利益を被っても公平性を重視する、といったことはテストステロンのなせるワザです。