さかなクンと一緒にヒトデを科学!その生態と特徴に迫る【2024/3/3 所さんの目がテン!】
その生態は摩訶不思議なヒトデ。3月3日(日)放送の日本テレビ「所さんの目がテン!」は、特別ゲスト・さかなクンと一緒にヒトデの秘密に迫りました。
世界中あらゆる海の底で暮らしているヒトデは、実はなんでも食べてしまう海底のお掃除屋さん。しかし天敵が少なくなるときには、大量発生し社会問題に。例えば、北海道だけで年間約1万7千トンも漁網にかかることもあります。しかし近年、その活用法が注目されヒトデが見直されています。
まず日本テレビアナウンサーの藤田大介が訪れたのは、神奈川県横須賀市にある観音崎自然博物館。そして今回のロケに駆けつけてくれたのは東京海洋大学で名誉博士/客員教授も務め、魚類学者としても活躍するさかなクン。
藤田アナとさかなクンは、藤田アナが学生時代、環境問題を議論する国際交流で知り合い、藤田アナがDJを務めていたラジオ番組のゲストにも来てもらったという仲で、共演するのは30年ぶり。
早速さかなクンから「ヒトデちゃんは漢字で書くとどう書くと思いますか?」と聞かれ、藤田アナは「人の手?」と答えますが、正解は「海の星」。「まさに星型の生き物ですので、海の星と書くわけです。英語でもスターフィッシュ=星のような形をした魚という英名があります」とさかなクンが解説。
この前日の夜に磯観察に行った藤田アナ。案内してくれたのは、さかなクンと1週間に1回は連絡を取り合う仲だという観音崎自然博物館 学芸部長の山田和彦さん。
岩の窪みのあたりを探してみると、さまざまな生き物が見つかりました。まずミドリイソギンチャクを発見。体壁に鮮やかなミドリのイボがあるのが特徴です。さらにハゼの一種であるアゴハゼや、貝・タコ・イカの仲間である軟体動物・アメフラシなどが。
そして、お目当てのイトマキヒトデも発見。赤い斑模様が特徴的な全国的によくいるヒトデで、岩礁地帯に多く生息します。
山田さんは体長たった3cmほどのヒメヒトデを発見。ヒメヒトデは繁殖時に、雌は腕を腹側に曲げて卵を抱いて育てます。
続いて藤田アナがオオシマヒメヒトデを発見、さらに色違いの赤いイトマキヒトデも発見。
山田さんはトゲモミジガイも発見。岩ではなく砂地で発見しましたが、山田さんは「砂地が好きなヒトデなんです」といいます。モミジガイの仲間は浅い砂浜や砂地を好むヒトデなのです。
そして、1時間ほどの散策で7匹のヒトデが見つかりました。
ヒトデはウニやナマコと同じ仲間
このヒトデを水槽に移し替えてさかなクンにお披露目すると、さかなクンは「この子は美味しい海産物としてもおなじみのマナマコちゃんです」とナマコに注目。「実はこのナマコちゃんもヒトデちゃんにとても近い仲間」、さらに「このウニちゃんも実は、ヒトデちゃんやナマコちゃんと近い仲間」と、ナマコ・ウニ・ヒトデは仲間だと紹介するさかなクン。
ヒトデは、ウニやナマコと同じ仲間で棘皮動物に分類されます。棘皮動物は、棘の表面を皮が覆っているような動物です。
ヒトデにも長くて鋭いトゲを持つ種類があり、オニヒトデは長さ約3cmほどの、先がヤリのように尖ったトゲを持っています。
ヒトデの骨格は、炭酸カルシウムでできた小さな骨片が集まって形成されています。トゲこそは目立ちませんが、骨格の周りを皮が覆っています。
ヒトデ・ウニ・ナマコという一見違った形に見える棘皮動物。他に共通点はあるのでしょうか?「ヒトデちゃん、ナマコちゃん、ウニちゃんは基本形が五角形なのです」とさかなクン。棘皮動物は基本的には、5放射相称と言い、中心から5つの方向に広がった形をしています。
ウニの断面を見ると5つに分かれています。さらに外側のトゲを全部取り除いたウニの殻を見てみると、中心から五方向に広がりながら丸い形を作っています。ナマコの場合は輪切りにすると、筋肉の束が5つに分かれている様子を見ることができます。
ヒトデの動きを観察
藤田アナからは「ヒトデってじっとしているイメージがある。ずっとジーっとしているものなのでしょうか?」と疑問が。さかなクンは「よーく見ているとジワリジワリと移動したり、意外な動きをするんです」といい、ヒトデの動きを観察するための実験を開始。モミジガイというヒトデで実験していきます。
まずは、さかなクンが水槽の中にヒトデを裏返しで置きます。すると体をぐにゃんと曲げて元の体勢に戻りました。
続いて、竹串をヒトデの腕の間に刺していきます。間に竹串があり身動きが取りづらくなってしまったヒトデですが、少しずつ腕を動かし1本ずつ抜けていき見事脱出成功。
動かない時には硬く、動くと柔軟なヒトデの体。どんな秘密があるのでしょうか?
さかなクンは棘皮動物について「皮の硬さを自分で操作できる動物なんですね」と説明。例えば、同じ棘皮動物のナマコは自在に皮の硬さを硬くしたり、逆にドロドロにやわらかくすることができます。これは神経の働きによって、素早く硬さを変えることができるキャッチ結合組織があるためだそう。ヒトデも同じ結合組織をもっており、硬くすることで身を守ったり、やわらかくすることで柔軟に動いたりすることができるのです。
穴の開いた透明の箱をヒトデに被せ反応を見ると、たくさんの小さな足のようなものを動かして、柔軟に体の形を変えながら脱出している様子が分かりました。
小さな足は管足という袋状の器官。移動する時に使うそうで、例えばモミジガイはこの管足をオールを漕ぐように動かすことで、砂の中に潜って身を隠すことができます。
また、ヒトデは海中のほとんど全てのものを食べることができる広食性の動物。山田さんは「基本肉食。千葉の名産の一つにアサリがあります。(アサリは)ヒトデに食べられちゃう」と例示。
貝殻をこじ開け捕食するイトマキヒトデは、その隙間に自分の胃袋を挿入することもできます。体の外へ出した胃袋で獲物を包みこむことで大きな物であっても消化することができるのです。
ヒトデは、浅瀬から深海、暖かい海から冷たい海まで世界中様々なところに生息。死骸や残った餌を分解してくれる海底のお掃除屋さんなのです。
一方で、「マヒトデという、黄色いちょっと大きめのヒトデが東京湾で爆発的に増えまして、その時は水産場に大打撃がありました」と山田さんが話すように、ヒトデが起こす問題もあります。ヒトデは数百から何千万と卵を生む種類もおり、有利な環境が整うと爆発的に増えることがあります。巻き貝などの天敵がいなくなることで数を増やしたり、船によって運ばれた先で貝の養殖にくっついて大量発生した事例もあります。
そして、ヒトデは優れた再生能力をもっています。さらに、腕を8本ほど持つヤツデヒトデは一度切断されても腕の付け根の大部分が残っていれば、分裂することができます。分裂できるヒトデは30種類以上いると言われています。
大量増殖したヒトデを焼却するにしても埋め立てるにしても手間も費用もかかるため、漁業関係者にとっては厄介者となり、社会問題にもなっています。
ヒトデの特性を活用しカラスよけ
そんなヒトデを利用して社会問題の解決に向けた取り組みをしている北海道の企業を、藤田アナが訪れました。案内してくれるのは北海道環境バイオセクターの社長・三國康二さんです。
三國さんは「バイオの技術でヒトデを分解できないか、いわゆる肥料化できないかということがきっかけで取り組みにつながった」と語ります。
北海道では、平成23年には1万7526トン(北海道水産林務部水産局水産振興課調べ)のヒトデが処分されていました。元々、水産物を堆肥化するための資材を開発していた三國さんは漁業関係者が処分に悩んでいると聞き、未利用資源であるヒトデを利用できないかと考えたそうです。
「ヒトデをまず分解して肥料化したんですけども、それを山積みにしていたんです。すると周辺にカラスが途端に来なくなったんです」と、ヒトデから作られた堆肥にカラスが近づかなくなる現象が起きたことをきっかけに、「カラスが嫌がる成分が入っているんじゃないかと(思い)民間で調べていただいて、それがサポニンというもの」と、この気づきをきっかけに、ヒトデに含まれるサポニンを抽出したそうです。
紫外線を当ててみると、普通の水道水に対しヒトデからサポニンを抽出した液体は強く光ります。
三國さんは「人間の目には見えない紫外線の領域があるんですけど、その紫外線の領域をカラスの目は識別できる。その紫外線の領域の中でサポニンという成分が物凄く光を放っている。それを利用したものがうちのカラス製品」と解説。このヒトデのサポニンを抽出した液体を利用して、カラスよけのグッズを作っています。
現在ではカラス対策として、札幌市時計台の周辺の街路樹などにも設置。厄介者だったヒトデが、役に立つ日が来ています。