オール沖縄会議

安和桟橋出口での辺野古土砂搬送ダンプトラックによる死傷事故について

本年6月28日午前10時過ぎ、名護市安和桟橋の出口付近で、辺野古新基地建設の埋立用土砂を搬送するダンプトラックが作業ヤードを出て左折した際、抗議中の市民と警備員さんを巻き込んだ痛ましい死傷事故が発生しました。
亡くなられた警備員さんのご冥福をお祈りし、ご遺族の方に心よりお悔やみを申し上げます。
また、重傷を負った市民の方が一日も早く回復されるよう心よりお祈り申し上げます。
私たちは、今回の事故の後、弁護士3名の立会による現地調査や、被害者・目撃者・関係者への再三の聞き取り等を続けてきました。本日、私たちが現時点で確認できた事故の経過を説明するとともに、沖縄防衛局に対して、今後、このような痛ましい事故を二度と起こさせないために、下記のとおり要請します。

第1.事故の背景

2018年12月以来、辺野古埋立土砂の海上搬送が行われている名護市・安和桟橋は、交通量の多い国道449号に面している。市民らが、入口・出口前をゆっくりと歩く抗議行動もすでに5年半になる。長い行動の中で、出口部では、警備会社・事業者・抗議者の間で、「抗議者が出口前を片道を歩いたらダンプを1台出す」、「右側、左側とダンプを交互に出し、同じ側から2台連続して出さない」、「抗議者はダンプ運転手に手をあげて合図をしてから歩き始める」等の「暗黙のルール」ができていた。
抗議行動は安全に配慮して行われてきたので、これまで大きな事故も起こらなかった。「警察関係者によると、抗議行動そのものの過熱や特に大きなトラブルの情報はなかった」(RBCニュース 2024.6.28)と言われているように、現場は危険な状態でもなかったので、日常的に警察官も配置されていなかった。
しかし一昨年末、警備会社が変わり、今年2月頃から工事の元請業者が変わったためか、ダンプの誘導方法が強引になり、「2台出し」や、抗議者が渡り終えていないうちに見切り発車のようにダンプを出すなど、危険な状態が発生するようになった。今年1月から3月にかけて、桟橋出口の国道で、ダンプと一般車両の交通事故が4件、立て続けに起こっていることも、ダンプの出し方が強引になったことと無関係ではないと思われる。
こうした危険な状態については、ダンプトラックの運転手も指摘しているとおりである(「(ダンプの運転手の話では)1年ほど前に警備会社が変わり、土砂搬入のスピードアップを図って無理な誘導が増えていた。いわゆるヒヤリハット事例が何度もあった」、「工期のスピードアップの指示が上からあったようで、危ない事案が増えた」(RBC ニュース 2024.6.28))
また、安和桟橋の入口部でも、以前は本部側から右折して入るだけだったが、搬送量を増やすために、ダンプをわざわざ名護市街地まで通過させてから戻ってきて左折で入場させる、また旧道の方から直進させる等、3方向からダンプを入れるようになった。そのため、入口部が混雑して危険な状態となり、事故も何回か発生している。
防衛局が辺野古新基地建設事業の工事を急ぐために、安全管理を怠り、埋立土砂を搬送するダンプの回転を速めようとしたことが今回の事故の背景ではないだろうか。

第2.事故の経過

1.事故発生時、安和桟橋出口には負傷したAさん、一番近い目撃者である B さん、そしてCさんの3名の市民がいた。同じ側のダンプが連続して出る危険な「2台出し」が行われたので、最初に B さんが、「ルールを守れ」と、抗議に歩きだそうとしたが、亡くなられた警備員Uさんに制止された。しかし、B さんの抗議により、ダンプは車両乗入部の出口と国道車道部の中間地点で停止した。ダンプの台数記録のために後ろにいたAさんも抗議しようと立ち上がり、ダンプに近づいて抗議したが、移動した警備員 U さんに制止された。そこに発進してきたダンプにUさんとAさんが巻き込まれた。

2.ダンプは「2台出し」で出てきて、抗議を受けて車両乗入部の中間地点で一度、停止しており、B さん、A さん、警備員のUさんらが抗議・移動するのが常に「死角」で見えなかったとは考えられない。また、たとえ衝突時は「死角」であったとしても、その前に、サイドミラー、アンダーミラー、助手席下の巻き込み防止の小窓等で確認できたはずである。
Uさん、A さんは、ダンプに轢かれたところから、国道上で倒れていた地点まで7~8mも引きずられている。ダンプは車両乗入部から国道に入る際にも一時停止せずに、かなりの勢いで2人に衝突した。

3.車両乗入部とは、敷地の所有者が車両の出入りのために道路管理者の許可を受けて歩道に設置したもので、「歩行者、その他一般の通行に優先して車両乗入部を使用することはできない」(国土交通省中部地方整備局 HP 等)とされているように、あくまでも歩行者の通行が優先される場所である。車両乗入部を横断する歩行者がいた場合、車両は待機して待たなければならないのは当然である。
従って今回、警備員らはまずダンプを止めるべきだったのであり、市民らの歩行を制止したことは法的にも許されない(「(警備員は)他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない」という警備業法第15条にも反する。)。

第3.沖縄防衛局への要請

1.今回の死傷事故の原因は、防衛局が辺野古新基地建設事業の工事を急がせるために、業者に無理を強いたことにあると思われる。防衛局は、全ての工事を中断し工事の在り方を全面的に見直すこと。

2.沖縄県知事は6月28日、今回の死傷事故を受け、防衛局に対して、「事故原因が究明され、安全対策がされるまでの間は、土砂搬出作業を中止する」よう求めた。知事は、辺野古新基地建設事業の公有水面埋立法に基づく承認権者であり、何よりも国道449号の道路管理者である。また、安和桟橋の公共用財産使用申請の許可者でもある。防衛局は一方的に搬出作業の再開を決めるのではなく、「事故原因」、「安全対策」について知事に説明すること。

3.私たちの抗議運動は、辺野古新基地建設反対という県民の民意に基づく行動である。また、憲法第21条により保障された基本的人権としての市民の表現の自由の行使であり、憲法の実践でもある。今回、負傷した市民を含め、現場で抗議運動に参加している市民には、非難されるべき事情は全くない。
私たちはこれからも、県民の民意と憲法に従い、安全に配慮しながら、現場での抗議運動を継続する。