インタビュー・レポート

集客はもちろんトレーニングのツールとしても有用。30年を経てなお学び続ける、ベテラン弁護士がWeb集客を使う理由

インタビュー/事例



今回は、東京で勤務されている弁護士の野間 啓先生(東京山手法律事務所)にインタビュー。現在の働き方や事務所経営について、またWeb集客の活用について伺いました。

野間先生は約30年の経験をお持ちでありながら、2020年からWeb集客にも取り組んでいらっしゃいます。本編ではより具体的に、Web集客のメリット・デメリットや、紹介案件が多くある中でもWeb集客に取り組み続ける理由について、特別にお話しいただきました。
(インタビュー日:2024年3月11日)


 

アジェンダ

・自分に合う働き方で活動的に取り組む

・一度の縁を確かなつながりに

・Web集客はトレーニングとしての価値もある

・集客につなげるコツは顧客目線での言語化

・社会の空気に飲まれず「物言う人」であれ

 

自分に合う働き方で活動的に取り組む


ー 今はどのような働き方をしていますか?

朝型なので朝は7時半くらいに出て、夜は早く帰るようにしています。19時には事務所を出ていますね。平日だけではなく土曜日に出ることもあります。子どもの成長に合わせて働き方は変えてきました。

今思えば若手の頃も、終電で帰るようなことはなく、夜遅くまで残るような働き方はしていなかったですね。寝ないで仕事をする、追い詰められて仕事をする、という状態が全く無理で、自分には合わないんです。


ー 先生が思う、弁護士を長く続けるコツは何ですか?

僕は、あえて頑張りすぎないようにしています。全力で取り組みすぎるとパンクしてしまうので、少し余裕を持たせるようにしていますね。

今の考え方になったのは、母親が自宅兼事務所で弁護士として働いていて、身近な職業だったことも大きいです。当時の先生方は、皆さん遅くまで働いていて大変そうで、それを見て、「働くときは働くけれど、身を粉にしてまで働きたくないな」と思っていたんです。修習のときには、見学した事務所の代表の先生に「20時で帰りたいんです」と言い放ち、同期の顔を引きつらせてしまったこともあります(笑)。

とにかく自由に働きたかったので、自由度の高い事務所を選んで入所しました。実際、東京HIV(薬害エイズ)訴訟原告弁護団に入るときも、若手でしたが二つ返事でOKをもらえました。早くから挑戦できてありがたかったです。


ー 早く帰るためにも、当時から効率的に取り組むことを意識していたのでしょうか?

もともと宿題を計画的に終わらせるタイプだったので、スケジュール通りに取り組むこと自体、得意だったんです。意識的というよりは自然な取り組み方でしたね。

ただ、当時の弁護士の中ではスケジュール通りに取り組める人が珍しかったので、重宝されました。何人かのチームで起案するときとか、弁護団の活動でも最初の段階で役割を得られましたね。もともと得意なことがうまく活きて、いつの間にか今の働き方になりました。


ー 注力分野は何ですか?

中小企業法務、労働、家事、建築です。

顧問先は40社超ですが、業界は多種多様ですね。ただ、特に経営戦略的な要素があって決めたわけではありませんでした。選択科目で勉強していたから、業務で必要だから、相談が多いから、などの理由で取り扱うようになり、今に至ります。一つひとつの理由を振り返れば、縁が続いていったようなイメージですね。

唯一、「建築」に関しては意識して取り組みました。案件をいただいた当時、建築は分野として今ほどポピュラーではなく、勉強をしている人も少なかったんです。おかげさまで、その頃知り合った建築士からは、いまだに紹介をいただくことがあります。


ー 学校法人の問題にも注力していると伺いました。

学校法人の問題は本当に多岐に渡るので、興味深いですし面白いんですよね。コンプライアンス違反や労働問題、給与の問題、ハラスメント、クレームなども。法律問題の巣窟といえると思います。同じ問題でも、職員同士なのか、大学の先生と職員なのか、PTA同士なのか、学生同士なのか……と状況によって判断が大きく変わるのも難しいところです。

いざ対応しようと思っても、一般法人とは違ってかなり特殊な対応になるんですよね。15〜20年近く関わっていても、いまだに学びが多い分野だと感じます。件数こそ1〜2校ですが、頻繁に相談がある状況です。


一度の縁を確かなつながりに


ー 現在の事務所を開いて10年ですが、安定した経営を続けるコツは何ですか?

ただただ歩留まりで勝負してきました。一度会った人からの紹介率はかなり高いと思います。紹介でいえば税理士、司法書士などの他士業からの紹介はもちろん、損害保険会社の担当者からの紹介も一定数ありますね。特に、税理士には毎回当然のように紹介を持ってきてくれる人が2〜3人います。ありがたいです。

僕個人は弁護団を含めメディアに出る事件にも対応していますが、そういう理由で露出が増えたからといって事件が増えるわけじゃないんですよね。メディア筋からの紹介で来る事件もないわけではないのですが。ともかく紹介案件が大きな比重を占めています。


ー 紹介が続いている理由は何だと思いますか?

レスポンシブが良いとか、基本的なところだと思います。昔は、僕を紹介するときに「この先生は返事くれる」と枕詞を入れてくれていたようです(笑)。今は弁護士業界自体が変わってきたと思いますが、返事が来ない、不在ばかりで連絡が取れない、という状況が昔は結構起きていたようです。そうかと思えば、書面の提出日前日の23時59分に「確認してくれ」と連絡が来ると。そんなの、困って当たり前ですよね。そういう状況があったからか、当時は不在着信の折り返しでコールバックをするだけで褒められたほどでした。当時からお付き合いのあった人はそれを覚えてくれていて、いまだに紹介してくださります。

紹介は信頼に関わることですから、やっぱり紹介した弁護士が下手を打つのは困るじゃないですか。戦って負けてしまうことはあったとしても、連絡のやりとりができないなんて、結果よりもずっと前の段階の話です。そういう基本的なことを当時から当たり前に続けていたことで、紹介が続いているのだと思います。


ー 他方で、長らく経営を続ける中では苦労したこともありましたか?

複数人体制ゆえの苦労はありました。

そもそも、2013年に事務所を開いたきっかけは震災でした。出先で被災して大変な思いをしたことで、何かあって自分が倒れたら大変だなと思ったんです。それまでは一人で働いており、40歳を過ぎたタイミングではありましたが、複数人体制にしたほうがいいと思い開設しました。

ただ複数体制にすると、どうしても入れ替わりが発生することがあります。僕らの事務所でもそういうタイミングが来て、そのときは苦労しましたね。経費面での経済的な負担が一時的に大きくなってしまいました。


ー 安定した案件数を受注し続けることも大変かと思いますが、波はありましたか?

ある程度の波はありましたね。紹介の縁は続いていたものの、特に平成後半に債務整理案件が大幅に減ったことは、弁護士業界全体に大きな影響がありました。僕らだけではなく業界全体として、Web集客を含む新たな案件の獲得手法が必要になったタイミングでしたね。


ー 顧問や紹介は、やはり安定収入につながるものですか?

顧問収入でいうと、ある程度増えるとある程度減る、壁のようなものがあると感じています。安定収入ではあるものの、どこまでも件数が増えるものではないと。特に自分は歩留まりで一つずつの縁を大切にする、という原始的なやり方で取り組んでいるので、爆発的に増えるようなことはないんですよね。

また紹介もずっと盤石なわけではないことには注意しなければならないと思います。実際、紹介元のいくつかの金融業界・損保担当者が異動して現場から離れることで、紹介が発生しにくくなった分野があります。

だからこそ、Webを含む新たな案件獲得ルートが必要だと感じるタイミングがあり、今の集客スタイルに至ります。

 

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Web集客はトレーニングとしての価値もある


ー 紹介案件とWeb集客からの案件の割合はどのくらいですか?

ざっくり9:1くらいでしょうか。現状、このくらいでちょうどいいと考えています。


ー 利用している集客方法を教えてください。

過去には顧問先に法律相談のチラシを貼っていただいたこともありましたが、集客効果はあまりなかったこともありましたね。
現在は紹介以外だと、事務所開設当初に作ったホームページと、弁護士ドットコムの弁護士向け集客サービスだけです。事務所を開いた2013年の時点で「ホームページは当然作るもの」という認識があったので、集客も意識して作りました。今でもホームページ経由で問い合わせをいただくことがあります。


ー 先生のようなベテランの先生が、紹介が豊富にある中でもあえてWeb集客に取り組む理由は何ですか?

集客を増やしたいという直接的な動機はもちろんですが、トレーニングの要素もあります。

紹介だと相手は依頼する前提で来ていますし、そこには遠慮や配慮がありますよね。一方で、僕のことを何も知らない新規の場合は、全く遠慮がありません。特にWebからだと、他の弁護士と比較していることさえ当たり前にあります。だからこそ弁護士側のトレーニングになりますし、こちらも甘えなく取り組めるのでとても勉強になっています。弁護士としてのコミュニケーション力や、対応力を磨ける点に意味を感じますね。

もちろんWebからだと紹介と違って関係性が薄いので、集客の面では難しいところもあります。現に会ってすぐに顧問を頼まれることはないですが、受任して裁判や交渉を進める中で関係性ができたら、それはもう紹介での関係性と一緒ですよね。信頼してもらえる段階までくれば、違う相談も聞いてほしい、顧問になってほしい、と次の大きな依頼につながります。


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ー Web集客の中でも、弁護士ドットコムへの掲載を続けている理由があれば教えてください。

きちんと結果が出て、集客につながっているからですね。弁護士ドットコムの弁護士向け集客サービスだけなのは、複数のWebサービスを利用するほどの費用と時間がそこまでないからです。労働、不動産、家事も受任できており、現状で満足していることが大きいですね。

サービスとしても、法曹業界全体に関わる意識を持った企業のサービスなので、安心感があって好きですね。知名度も業界の中ではかなりあると感じます。

 

集客につなげるコツは顧客目線での言語化


ー Webから依頼につなげるコツはありますか?

勝てる事件に勝つのは誰でもできるんですよ。そうではなく、不利な局面をいかに上手に進めるかがポイントかと。たとえば「どうすれば早く終われるのか」「どういう段階で和解すればいいのか」を聞かれたときに、いかに丁寧に説明するかがうまく進めるコツだと思います。だから僕は不利なこともズバズバ言いますね。これは、Webからの案件に限ったことではないのですが。

具体的には、見通しをジャッジした上で、予想される流れを依頼者がわかるように説明するんです。その上で、一般的な和解と判決直前の和解の違い、相手の弁護士の資質で流れが変わること、どの程度まで争うとメリットがあるか、などを丁寧に話します。早めに落とし所を見つけて和解することが弁護士の技術で、それにみんな苦労しているんだということも。そこまで具体的に話して、交渉を進める中で依頼者が何となく疑問に思っていたことを解決しておけば、いざ和解となったときにストンと腑に落ちてもらえます。結果、納得感を持った状態で和解できますし、スムーズに進められるんです。


ー 裏を返せば、説明が苦手な先生もいると感じますか?

事件を進める中で、計画性がないと感じることはありますね。変なタイミングで突然昔の証拠を出したり、依頼者とのコミュニケーションにズレが生じていたりするので。

やはり信頼関係を築くためにはコミュニケーションが大事です。依頼者に対しては、早い段階ですべき説明をしておくべきでしょう。もちろん展開によって変わることはありますが、現時点での証拠関係から考えると次の展開はこうなる、今追い込まれそうな理由はこれ、と先手を打っておくことが重要です。

突然ノーアウト満塁の大ピンチにはならないわけで、追い込まれている場合は必ず要因となる事象がいくつもあったはず。突然大ピンチになることは避けなければならないので、僕の場合は逐一丁寧に話すようにしています。


ー Web上の見せ方で意識していることはありますか?

面白く、わかりやすく、がいいかなとは思っています。そのため、細かいところまで情報を載せるようにしました。

また弁護士ドットコムのプロフィールページについては、写真を意識しましたね。事務所のホームページを作ったときに写真を褒められたことが多かったので、それを使おうと。以前、とある証券マンにも、「顔が見える・見えないで顧客の安心感が違うから、会社役員の写真が載ってない会社はダメだ」と言われたことが記憶に残っていて、コミュニケーションを取るときだけではなく、Webに情報を載せるときも顧客目線を意識することは重要だと思っています。


ー 他に意識して気をつけていることはありますか?

依頼者がわかるように、たくさん「たとえ」を使います。今どういう局面なのか正確にわかってもらうために、テレビドラマや受験、スポーツに例えることも。細かい法律的な話はあえて詳しく言わずに、わかりやすく伝えることを意識しています。


社会の空気に飲まれず「物言う人」であれ


ー今後、野間先生のように独立して長く活躍していきたいとお考えの先生方に、アドバイスやメッセージをお願いします。

空気を読む、おとなしいお利口さんが増えているように思います。弁護士同士の会議で遠慮するのはやめた方がいいです。パソコンで記録だけして発言せずに帰る、弁護団の会議で役割を持たない、それは意味がないと思います。特にWeb会議だと顕著で、発言を聞いているだけの若手が多いと感じます。たとえ10〜20年上の先輩に対しても臆さず言い合わないと、その会議に価値はないんです。嫌われたっていいんですよ。

今は社会全体がそういう空気ですが、その空気に飲まれてしまっては勿体ないですし、もっと尖ってもいいと思います。むしろ目上に対しても思うことがあれば言わないと。昔と環境が違うので難しい側面もあるかと思いますが、特にもっと若手には主張してほしいです。



                                   (取材・文/Yoko Fujie)


 

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野間 啓 先生のプロフィール

東京大学法学部卒業。司法研修所卒業後、1994年4月に弁護士登録。
1999年に独立。2013年に東京山手法律事務所を開業。46期。

【所属】
 第一東京弁護士会

【主な取扱分野】
 企業法務・顧問弁護士
 労働問題
 不動産・建築
 離婚・男女問題
 遺産相続

【Web】
・東京山手法律事務所 公式HP
 https://t-yamate.com/

・弁護士ドットコムのページ
 https://www.bengo4.com/search/107993/

 
 
 

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