鳥は恐竜(⁉︎)という事実を知っているか

  • 文:土屋 香
  • イラスト:服部雅人 
  • 監修:土屋 健(オフィス ジオパレオント)
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そもそも、恐竜とはどのような生き物だったのか? 特集を読み進めていく前段階として、その概要を改めて解説しよう。恐竜をめぐる基礎知識から、深く理解するためのキーワードまでをまとめた。今回は、恐竜が鳥類に進化したことを証明した「始祖鳥」について。

Pen最新号は『恐竜、再発見』。子どもの頃に図鑑や映画を通して、恐竜に夢中になった人も多いだろう。本特集では、古生物学のトップランナーたちに話を訊くとともに、カナダの世界最高峰の恐竜博物館への取材も敢行。大人になったいまだからこそ、気付くことや見える景色もある。さあ再び、驚きに満ちた、恐竜の世界の扉を開けてみよう。

『恐竜、再発見』
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これまでの常識を変えた! ダーウィンの進化論の翌年に発見された進化の証人

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始祖鳥

全長:50㎝/時代:ジュラ紀後期

鳥類は恐竜類の中の1グループだ。鳥類が出現する以前から、恐竜類の中に鳥類に見られるような特徴が少しずつ現れてきた。鳥類と似た特徴を持つ獣脚類の化石が多数発見されているため、現在では鳥類と近縁の獣脚類との区別が難しくなっているほどだ。

そこで、最古の鳥類として始祖鳥が位置付けられている。始祖鳥は約1億5000万年前に生きていた。始祖鳥には翼がある一方、全体的な姿は鳥類以外の獣脚類に似ている。口には歯があり、手の指は長くかぎ爪があり、尾は多数の骨でできていて長かった。

始祖鳥の化石は複数発見されている。始祖鳥の最初の化石が発見されたのは、チャールズ・ダーウィンが『種の起源』を発表した翌年、1860年だった。発見当初から始祖鳥は恐竜類と鳥類とをつなぐミッシング・リンクと考えられていた。しかし鳥類が恐竜類であるという考えは1990年代になるまであまり注目されていなかった。

状況が一変し、この説が脚光を浴びるようになったきっかけのひとつが羽毛恐竜の発見だ。96年、中国の白亜紀前期の地層から獣脚類シノサウロプテリクスの化石が発見された。シノサウロプテリクスの化石には羽毛の痕跡が残っていた。シノサウロプテリクスの化石が報告されるまで、羽毛は鳥類だけにある特徴と考えられていた。シノサウロプテリクスの発見以降、中国で羽毛恐竜の化石が次々と見つかり、鳥類の恐竜起源説が注目されるようになったのだ。

始祖鳥の化石

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2024年時点で10点を超える始祖鳥の化石が報告されている。上の写真は始祖鳥の化石の中でも特に有名な「ベルリン標本」。1870年代に発見された、2番目の骨格化石だ。ベルリン自然史博物館が所蔵。全身の骨だけでなく、翼や尾羽まで確認できる。photo: ullstein bild

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Penによる特別館内ツアーを8/23(金)に開催決定! ナイトミュージアムにご招待

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Penのオリジナル企画として、8月23日の金曜夜に、本展の特別な館内ツアーを実施。限られた当選者のために、識者によるナビゲートも予定。ぜひ、家族や友人とご応募ください。

【応募方法】
Penの公式Xアカウント(@Pen_magazine)をフォローの上、特別ツアー募集の告知投稿をリポストしてください。

応募方法と注意事項の詳細は、下記URLからご確認ください。

www.pen-online.jp/article/016499.html

【応募締切】
2024年8月4日(日)23:59
当選者の発表は、当選者へのDMによって代えさせていただきます。 
※当選通知は2024年8月中旬を予定していますが、諸事情により通知が遅れる場合がございます。

『巨大恐竜展 2024』

期間:開催中~9/13
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1 パシフィコ横浜 展示ホールA
TEL:050-5541-8600
開館時間:9時~17時(8/10〜8/18は19時まで) ※入館は閉館の30分前まで 無休
料金:一般¥2,400
www.giantdinos-ex.com

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ジュエリーメゾンが芸術の新たな扉を開く、ダンスフェスティバルが今秋開催

  • 写真:土屋崇治(TUCCI)
  • 文:岡見さえ
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10月4日に開幕する「ダンス リフレクションズ」のプログラムのひとつ、マチルド・モニエの『ソープオペラ、インスタレーション』。 photo: Marc Coudrais

2022年のロンドンを皮切りに世界をまわってきたフェスティバル、「ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル」が今秋日本で開催される。なぜハイジュエラーがダンスと関わるのか? プログラムのディレクターを務めるキーパーソンに話を訊いた。

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セルジュ・ローラン●ヴァン クリーフ&アーペル ダンス&カルチャー プログラム ディレクター。フランスの高等教育機関エコール・デュ・ルーブルで美術史や博物館学を学ぶ。1990〜99年までカルティエ現代美術財団でキュレーターを、2000〜19年までポンピドゥー・センターで舞台芸術企画部門の責任者を務める。19年より現職。

世紀を超えて紡がれる、ヴァン クリーフ&アーペルとダンスの物語

ヴァン クリーフ&アーペルとダンスの物語は1920年代に遡る。1906年にメゾンが最初のブティックを開いたヴァンドーム広場は、パリ・オペラ座ガルニエ宮から徒歩10分ほど。創業者のひとりルイ・アーペルはバレエを愛し、後にメゾンのアメリカ展開の核となる甥クロードを連れ、バレエ公演に通っていたという。メゾンは40年代にダンスの瞬間の美をジュエリーの永遠の輝きに昇華させた「バレリーナ クリップ」を発表し、卓越した技術と芸術性を証明しつつダンスにオマージュを捧げる。

同じ頃、ニューヨーク五番街にアメリカ初の店舗がオープンし、50年代からシティ・センターを本拠地とする振付家ジョージ・バランシンとクロードとの交流が始まった。このネオクラシック・バレエの巨匠は、67年にエメラルド、ダイヤモンド、ルビーにインスパイアされた珠玉のアブストラクト・バレエ『ジュエルズ』を世に送る。その後もバレエを中心とするメゾンのダンス支援は続いた。

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1940年代に初めて制作され、メゾンのアイコンとして長く愛されてきた「バレリーナ クリップ」。発表年は左から1941年、43年、45年。
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ニューヨークのブティックにて『ジュエルズ』の衣装につけるジュエリーを選定する、左から創業家2代目のピエール・アーペル、バレリーナのスザンヌ・ファレル、振付家のジョージ・バランシン(1976年頃)。

物語に新章を開いたのは2020年、コンテンポラリーダンス対象のメセナプログラム「ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル」の誕生だ。なぜバレエではなく、現代ダンスなのか? それはメゾンが舞踊芸術の歴史と進化に関心を抱いているからだという。「ハイジュエリーメゾンの歴史を、ダンスの出現とともに綴るアイデアがありました」と、プログラムを統括するセルジュ・ローランは語る。

パリの名だたる現代美術館の要職を歴任したローランは、ダンスを広い芸術の文脈で捉え、明確なヴィジョンをもって「ダンス リフレクションズ」を推進する。鍵となるのは、メゾンの哲学と響き合う「創造・継承・教育」という3つの価値だ。活動の第一レベルを成す「創造」については、世界各地のアーティストへの創作支援と、世界15カ国50組織のネットワークを通した上演支援を行っている。「一年中、世界のどこかでダンス リフレクションズがサポートするダンス公演が行われています」とローランは言う。

22年に始まったフェスティバルは、いわば「ダンス リフレクションズ」の第二レベルであり、「継承」「教育」とリンクする。毎回開催国が異なり、地域性よりいま見るべき振付家・作品が選ばれている理由について「さまざまな場所で観客にダンスを届け、私たちのヴィジョンを共有し、観客一人ひとりがダンスを通して新たな価値を発見することを望んでいます」とローランは語る。公演には振付家のトーク、初心者から経験者までのワークショップが伴い、多様な観客に向けた鑑賞にとどまらないダンス体験の機会が提供される。

「リフレクションズ」には、未知の美学との出会いを通した「反映」「内省」のふたつの意味が込められている。今秋のフェスティバルで多彩なダンスと出会い、響き合い、私たちはいかなる内省へと導かれるのだろう?

ダンス リフレクションズの詳細はこちら

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メゾンが大切にしてきた、ダンスと日本とのつながり

「ダンス リフレクションズ」は、2020年に始動して以降、日本でもさまざまな公演をサポートしてきた。パートナーシップを結ぶ「彩の国さいたま芸術劇場」「ロームシアター京都」「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」における近年の支援例を紹介する。


岡田利規
『わたしは幾つものナラティヴのバトルフィールド』
彩の国さいたま芸術劇場(2022年)

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言葉と身体との関係を更新し続け、現代社会の課題に批評的な視点から切り込む演劇作家の岡田利規。岡田がテキストと演出を担い、ダンサーの湯浅永麻がそれらを身体に取り入れ、語り、踊る。言葉が誘発する、新たなダンスのかたちとは? photo: 大洞博靖


ルース・チャイルズ&ルシンダ・チャイルズ
『ルシンダ・チャイルズ1970年代初期作品集:Calico Mingling, Katema, Reclining Rondo, Particular Reel』
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭(京都市京セラ美術館/2023年)

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2022年より「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」とも結び付きを強めてきた。本作は、3つの柱のうちのひとつ「継承」をテーマに、モダンダンスの巨匠の作品を現代に蘇らせた。 photo: 守屋友樹


ディミトリス・パパイオアヌー
『INK』
ロームシアター京都(2024年)

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世界各地の劇場やダンスカンパニーとのネットワークを活かし、世界的に人気の振付家の招聘もサポート。本作は、2004年アテネ五輪の開閉会式の演出も手掛けたパパイオアヌーによる、シュルレアリスムの美学に満ちた幻想的な舞台で、会場を大きな熱狂の渦に巻き込んだ。 photo: Julian Mommert


ノエ・スーリエ
『The Waves』
彩の国さいたま芸術劇場 / ロームシアター京都(2024年)

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「ダンス リフレクションズ」は創設以来、振付家やダンスカンパニーの支援だけでなく、世界各地の劇場とパートナーシップを結んでいる。日本では彩の国さいたま芸術劇場とロームシアター京都と提携し、フランスの新進気鋭の振付家、ノエ・スーリエの招聘をサポートした。 photo: 大洞博靖


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