渡邉寧久「得するエンタメ見聞録」

〝玉石感〟満載、カルトの逸品がよみがえる「デューン/砂の惑星 4Kリマスター版」不快感を散りばめた〝リンチワールド〟へ

「デューン/砂の惑星」4Kリマスター版(© 1984 DINO DE LAURENTIIS CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.)
「デューン/砂の惑星」4Kリマスター版(© 1984 DINO DE LAURENTIIS CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.)

ドラマ「ツインピークス」で世界中の熱狂的なファンを〝沼〟らせたデヴィッド・リンチ監督の作品「デューン/砂の惑星 4Kリマスター版」が、8月2日に公開される。

日本では1985年に公開された。監督本人によれば、脚本を作るだけで1年半。撮影には週休1日で3年半の年月を費やしたという。巨額の制作費があだになり、興行成績としては赤字になってしまったが、映画ファンの間では長年、カルトの逸品として一目置かれている作品だ。

時は、西暦10191年。香料を制する者が宇宙を制する、と言われ、長寿の秘薬をめぐり人々が争い、決闘と和睦を繰り返している世界。秘薬は宇宙を支配する力を持つ「メランジ」と呼ばれ、権力者は血眼になり、入手に命を懸ける。

香料があるとされる星はデューンと呼ばれる荒涼とした惑星・アラキス。一面砂に覆われた不毛の地で、外界温度が350度。巨大な虫が立ちはだかり、水は命を支える貴重な資源になっている。

今から見れば遠い未来の出来事だが、人間の本質は現在と変わっていない。むしろ劣化していると言っていいほど、争いや殺戮を好む。支配する勢力と支配される勢力が明確に分かれ、戦いは生き延びるための戦いという聖戦の意味を帯び、命の尊厳も人権のへったくれもない。

zakスペシャル