媚薬を入手するという一点の欲望に、権謀術数と心理戦と裏切りと失脚が入り乱れる。そこに垣間見えるのは、むき身の人間性だ。
公開当時スクリーンで見て、その後、ネットのサブスクでも見たが、登場人物の相関関係を頭に叩き込み、それぞれの表面的な言動と内面的な本音をすべて理解にするには骨のおれる構造だ。ストーリーが時折飛びすぎ、見る側は脳内回路を自前でつなげる必要に迫られる。
それさえ何となくこなせることができれば、毒々しいメークアップに衣装、悪趣味な小道具にビジュアル装置などが、不快感を散りばめたリンチワールドへと見るものを連れ去る。
とはいえ、全面的に傑作なのかという太鼓判を押しにくさがあるのも確か。そのあたりの〝玉石感〟が、この作品の最大の魅力でもあるのだが。 (演芸評論家・エンタメライター)
渡邉寧久(わたなべ・ねいきゅう) 新聞記者、民放ウェブサイト芸能デスクを経て演芸評論家・エンタメライターに。文化庁芸術選奨、浅草芸能大賞などの選考委員を歴任。東京都台東区主催「江戸まちたいとう芸楽祭」(ビートたけし名誉顧問)の委員長を務める。