7月30日10時から行われたANYCOLORの株主総会。VTuberグループ「にじさんじ」を運営しており、同じく上場企業のカバーが運営する「ホロライブ」などとともにVTuber界を盛り上げています
| 直近経営資料 | 2024年4月期決算短信、決算説明会資料、書き起こし、中期経営計画 |
|---|---|
| 株主総会資料 | 定時株主総会招集通知 |
| 前回 | ANYCOLOR(にじさんじ)株主総会2023レポ|田角陸CEO「今後の長い経営者人生を考える上では、日本を代表して、世界で活躍するようなグローバルカンパニーを目指したい」 |
業績は増収増益。来期も増収増益見込み。
| - | 売上 | 営業利益 | 純利益 | PER | PBR | 時価総額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ANYCOLOR・22年4月期 | 141億円 | 41億円 | 27億円 | |||
| ANYCOLOR・23年4月期 | 253億円 | 94億円 | 66億円 | |||
| ANYCOLOR・24年4月期 | 319億円 | 123億円 | 87億円 | 15.5倍 | 8.19倍 | 1653億円 |
| ANYCOLOR・25年4月期予想 | 390億円 | 148億円 | 103億円 | |||
| カバー・24年3月期 | 301億円 | 55億円 | 41億円 | 24.0倍 | 10.9倍 | 1240億円 |
| UUUM・24年9月期4Q | 210億円 | 2億円 | 3億円 | 37.3倍 | 2.57倍 | 94億円 |
| エイベックス・24年3月期 | 1333億円 | 12億円 | 9億円 | 15.1倍 | 1.23倍 | 689億円 |
| アミューズ・24年3月期 | 548億円 | 13億円 | 3億円 | 76.0倍 | 0.79倍 | 298億円 |
※株価は株主総会の前営業日終値を使用。PERは予想、PBRは実績
にじさんじ(ANYCOLOR)とホロライブ(カバー)がVTuber界の二大事務所とされますが、よく言われる違いは玉石混交のにじさんじに対して、少数精鋭のホロライブということ。
ANYCOLORの所属VTuber数は158人(2024年4月末時点)なのに対して、カバーの所属VTuber数は85人(2024年3月末時点)。
ただ、にじさんじはデビュー数は多い一方、卒業数も多くなっています。一方、ホロライブの卒業は極めて珍しい出来事。ここ1年のにじさんじ(EN含む)のデビュー&卒業をまとめると以下の通り。
| 日時 | ライバー名 | |
|---|---|---|
| 23年8月27日 | 卒業 | ミスタ・リアス(NIJISANJI EN) |
| 11月21日 | デビュー | 立伝都々、栞葉るり、ミラン・ケストレル |
| 10月26日 | デビュー | Claude Clawmark、Victoria Brightshield、Kunai Nakasato(NIJISANJI EN) |
| 12月31日 | 卒業 | 相羽ういは |
| 24年1月20日 | 卒業 | Pomu Rainpuff(NIJISANJI EN) |
| 1月31日 | 卒業 | 勇気ちひろ |
| 1月31日 | 卒業 | 安土桃 |
| 2月5日 | 契約解除 | Selen Tatsuki(NIJISANJI EN) |
| 2月17日 | 卒業 | Kyo Kaneko(NIJISANJI EN) |
| 3月12日 | デビュー | 北見遊征、魁星、榊ネス |
| 5月21日 | デビュー | Ryoma Barrenwort、Twisty Amanozako、Klara Charmwood(NIJISANJI EN) |
| 6月12日 | 卒業 | 鈴鹿詩子 |
| 6月19日 | デビュー | 司賀りこ、珠乃井ナナ、綺沙良、梢桃音、ルンルン |
| 8月31日 | 卒業予定 | 鈴谷アキ |
特にNIJISANJI ENをめぐっては今年前半、Selen Tatsukiさんの契約解除をめぐってひと悶着あり、田角陸CEOが謝罪動画を公開することにもなりました。
こうしたことから直近は、国内の成長に注力する計画を立てています。
売上の内訳をみると、にじさんじENは人気ライバーの卒業もあり、Selen Tatsukiさんの件以前から、若干減速していたようにもみえます。
ファン層をみると、にじさんじはホロライブより若く、女性が多いと言われています。
ビジネス領域別の売り上げをみると、コマース(グッズ販売など)が圧倒的。VTuberブーム初期に主流だったライブストリーミング(YouTube広告やスパチャ、メンバーシップなど)は頭打ちになっています。
ここ一年の主な動き
2023年11月17日 「医師VTuber」「弁護士VTuber」「美容師VTuber」など、にじさんじ運営企業が募集 「スーパーエリートライバーオーディション」実施(ITmedia NEWS)
12月22~24日 『にじフェス2023』開催
2024年1月31日 1期生の勇気ちひろさんが卒業
2月10日~5月10日 周央サンゴ×壱百満天原サロメ×志摩スペイン村(志摩スペイン村-オフィシャルサイト-)
2月13日 ANYCOLOR 田角CEO、セレン龍月の契約解除について声明を発表 にじさんじEN所属VTuber3名も一連の経緯を説明(MoguLive)
7月~ 「にじさんじ甲子園2024」開催
手元資金(ネットキャッシュ)の推移
現預金が約160億円ありますが、中期経営計画の中で、2027年4月期までに累計の営業キャッシュフロー約400億円を目標として掲げています。
スタジオへの投資、あるいは「にじさんじ」の派生事業としてアニメやゲームなどのメディアミックスの展開、その他サービスの開発への投資に30億円から50億円ほど、手元現預金やM&A投資枠として約200億円を見込んでいるとのこと。残った300億円以上は自己株取得を中心とした株主還元に充てるそうです。
| - | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 |
|---|---|---|---|
| 営業CF | +27億円 | +67億円 | +69億円 |
| 投資CF | -0億円 | -1億円 | -6億円 |
| 財務CF | -4億円 | 0億円 | -24億円 |
| - | 2022年4月末 | 2023年4月末 | 2024年4月末 |
| 現預金 | 58億円 | 124億円 | 162億円 |
| 有利子負債 | 5億円 | 3億円 | 1億円 |
| ネットキャッシュ | 53億円 | 121億円 | 161億円 |
議案
(1)取締役4名選任
| 前年株主総会 | 今回候補者 |
|---|---|
| 田角陸 | 田角陸(CEO) |
| 釣井慎也 | 釣井慎也(CFO) |
| 【社外】有富丈之 | △鈴木貴都(国内VTuber事業) |
| 【社外・監査等委員】前川俊策 | 【社外】有富丈之(弁護士) |
| 【社外・監査等委員】梅田泰子 | 【社外・監査等委員】前川俊策(元住友商事ケミカル取締役) |
| 【社外・監査等委員】山岡佑 | 【社外・監査等委員】梅田泰子(弁護士) |
| 【社外・監査等委員】山岡佑(公認会計士) |
株主総会のTwitter実況
株主総会の様子は僕のTwitter(@michsuzu)で「#ANYCOLOR株主総会」のハッシュタグをつけてツイートしていたので、質疑応答と合わせてまとめておきます
ちなみに、ANYCOLORのIR資料には「CONFIDENTIAL」との透かしが入っているのですが、これは上場企業の一般的なIR資料にはない表示。恐らくライバーの画像等の悪用を防ぐための形式的なもので、報道目的なら問題ないだろうということで引用しています。問題があったらご連絡ください’。
事前質問1:社内の業務執行取締役として 取締役候補に鈴木氏が挙げられているが、その選任理由は
田角陸:エンターテインメント業界への経験豊富な知識と経験を生かして、今後、全体最適の観点から、当社をけん引する存在の1人として活躍いただくことを期待している。
今回の取締役の選任にあたっては、社内取締役と社外取締役の割合などのバランスを考慮して、 社外取締役を増員することとした。
事前質問2:株主優待、配当について。株主優待を新設してほしい、外出先でさりげなく株主アピールができるものがいい
田角陸:当社は、企業価値の継続的な向上を図るとともに、株主のみなさまに対する利益還元を経営上の重要課題のひとつとしている。
このような観点から、当社は、事業費用や設備投資を通して、VTuber事業の成長及び将来の投資をみすえた内部留保の充実、こういったところのバランスを考慮しつつ、 当社の株主構成を踏まえて、現時点では、主に自己株式の取得で対応しています。
今後とも、株主優待や配当の実施を含む利益還元についても十分に検討しつつ、業績向上と利益確保を念頭に置いて、業務にまい進していく所存でございますので、何卒ご理解たまわりますようお願い申し上げます
事前質問3:にじさんじENや今後の海外展開について
田角陸:第4四半期は、ARライブや3Dお披露目配信、 2人1組で楽曲を作ってリリースしていく音楽コンテンツ「NIJI ENcounter」を開催しました。
ARライブは予想よりも多くのお客さまにご覧いただきました。もちろん、お客さまの一定の動向の変化というものがあったと認識していますが、やはり応援し続けてくださっている方が一定数いると再認識できた機会と考えています。まずは、そのような方々に向けて取り組んでいきたい。
また、お客さまとの信頼関係を再構築していくために、お客さまを魅了できるような大会や番組のようなコンテンツ作りの強化を引き続き行っていく必要がある。
それに加えて、収益面においてはさまざまな国、地域、文化圏のお客様がいると考えているので、 これまで国内で販売してきた施策と違った施策を行っていく必要があると考えている。
販売経路の拡大という意味でも、販売するクライアントの獲得という意味でも、国内で行ってきた手法と少し異なる手法でしていきたい。
海外での誹謗中傷については、具体的な事案の内容について、 ここで公表することは控えさせていただくが、現在、海外の弁護士と連携の上で対策を検討しています。今後は日本と同様、より実効性のある対策を継続して実施していこうと考えている。
事前質問4:VTuberの卒業に関する会社の考え方について。VTuberの卒業を減らすための対応策や、インセンティブの設計について
田角陸:卒業については、ひとりひとり異なる環境にあって、卒業を選択する理由もさまざまになっています。 卒業の話を受けた場合、当社としてはVTuber本人と誠実に向き合い、最後までしっかりと話し合いさせていただいています。当社としても、VTuberとしてその才能を活用してもらっている中で、卒業になってしまうのは残念なことであると考えていますが、最終的にはVTuber本人の意思を最大限尊重して送り出すこととしています。
インセンティブの設計については、内容についての詳細は控えさせていただきますが、VTuberひとりひとりににじさんじで中長期的にしっかり活動を継続していただくために、サポート体制も含めて、さまざまな観点から積極的に取り組んでいきたいと考えています。
事前質問5:既存VTuberのサポート体制の充実について、イベントグッズなどの施策におけるVTuber間の待遇格差、プロモーションバランスについて
田角陸:ひとりひとりが活躍できるコンテンツを作り上げ、充実したサポート体制を構築するのが当社としての使命だと考えています。
VTuberごとのサポート体制に優劣はなく、ひとりひとりに平等に機会を用意しています。既存のVTuber、新規のVTuber問わず、ひとりひとり充実させ、サポート体制を構築していけるように尽力していきたいと考えています。
また、デビュー時のプロモーション体制は、当社の成長に伴い、拡充もしてきています。このプロモーション体制は今後も拡充させていき、合わせて既存のVTuberのプロモーション体制も充実させていきたいと考えています。VTuberたちの今後の活躍にご期待いただけますと幸いです。
事前質問6:景品表示法の改正によりステルスマーケティングの規制が強化されたが、対策はできているか
田角陸:当社では、従前からファンのみなさまに安心してコンテンツを楽しんでいただけるよう、提供表記ガイドラインを制定し、PR表記を適切に行っています。
景品表示法が改正された後のステルスマーケティングの規制についても、弁護士の見解を踏まえ、適切な表記を行うなどの対策を行っている
事前質問7:VTuberや従業員の健康管理について。どのような対策を実施していて、今後拡充する予定はあるか。スタッフの労働時間や体調面に不安を感じた。イベント開催期間が伸びているため、スタッフを大事にしてほしい
田角陸:各VTuberの担当マネージャーが日ごろからVTuberと密なコミュニケーションをとることで、体調面・心理面での十分なケアを行っている。 また、VTuberから希望があった場合には、当社を介することなく、当社の産業医によるカウンセリングを直接受診できる体制も構築しています。
従業員については、法令を順守し、労働時間の管理や労働環境の整備を行った上で、福利厚生も導入しています。その他、人事・労務を中心とした社内に適切な相談窓口を設けて、 必要に応じて産業医面談なども実施するなどの取り組みを行っています。
Q1:取締役選任議案について。新任取締役候補の鈴木貴都氏はゲーム会社3社に合計2年ほど勤務。ゲーム業界はエンターテインメントの一部分でしかないが、選任理由が「エンターテインメント業界での豊富な知見と経験を有する」というのはどうなのか。 各会社での勤務も短期で、経営に関わる重要事項の決定権を持つほどの見識を持ち合わせているかも疑問。経験が比較的浅い方が経営幹部になるということは、裏を返すと、経験豊富な人材がいないということなのでは
田角陸:鈴木氏は2019年に弊社に入社してから、VTuber業界の文化や事業を作ってきたメンバーの1人として、会社や業界に貢献をしてきた事実がございます。
ここからさらにVTuber業界とこの会社の発展に貢献をしてもらう1人のメンバーとして、会社をリードしていく人物として、期待して選任させていただいた
Q2:誹謗中傷行為対策チームについて。法務省がグレーゾーン解消制度に基づき2023年9月12日に行った回答の中で、弁護士または弁護士法人でないものが報酬を得る目的で法律事務を行うもので、非弁行為に該当する可能性を指摘している。貴社の対策は
田角陸:誹謗中傷行為対策チームの活動が該当するかどうかというところについての当社の見解については、この場では控えさせていただきたい。当社としては、今後も適切な誹謗中傷対策を行っていきたいとは考えています。
Q3:サイバー攻撃でニコニコがダウンしているが、ANYCOLORはニコニコでもチャンネル運営やイベントなどで売上が生じている。補償などもあるようだが、24年4月期のニコニコでの売上や、しばらくニコニコがなかった影響について聞きたい
田角陸:具体的な売り上げ推移についての回答は控えさせていただきます。
サイバー攻撃に対する我々の対応としては、セキュリティ対策ソフトやウイルス対策ソフトの導入はもちろんですが、もし万が一そういったサイバー攻撃が発生してしまった場合、被害を最小限に抑えられるような措置を会社として講じておく、 こういったことが起こらないように対策していくということを思っています
Q4:株主還元を中期的に300億円されるということは、株主としてありがたい。今年の75億円の自己株取得はすでに終了されたということだが、どういう意図があって素早く処理したのか。 5年で300億円という株主還元に対して、人材投資や設備投資の枠が小さめに感じるが、人材に資金を振り向けないのか
田角陸:我々はVTuber業界をけん引していく立場として、VTuber事業への投資を最初に考えています。その中で重要な投資が、スタジオや人材への投資になってくるかなと思っています。
スタジオはBSに入ってる部分ですが、人材に対してはどちらかというと営業費用の中から配分されるようになってくるかなと思っています。
キャピタルアロケーションという観点では、まずはスタジオへの投資も含めたVTuber事業への投資、その派生事業への投資をベースに考えつつ、残った部分を株主還元に回していくと。
その株主還元も自社株買いにあてようと考えていて、中期計画で出している300億円の計画のうち、まずは75億円をこのタイミングで自己株買いさせていただいたという背景になっています。
Q5:ライバーの卒業について。いちから時代からの勇気ちひろさんや鈴鹿詩子さんが今年に入って卒業し、鈴谷アキさんも卒業発表した。田角さんが直接面接したような方が卒業となったかと思うが、その中でお考えをお聞かせ願えれば
田角陸:個別の話には触れないが、それぞれに卒業の理由があると思っている。VTuber以外の活動がしたくなったであったり、VTuberとして弊社の中でコンプライアンスやルールを守っていくことが難しくなっていたというようなところもあるかと。
我々としては中長期的に活躍するVTuberをサポートしていく必要があると考えているので、ライバーにとってはもちろん窮屈な部分もあるかと思うが、コンプライアンスを守っていく必要もある。
そういったところではなく、サポート体制の充実というところで、こういった卒業や契約解除を防いでいくような形を作っていければと考えている。
Q6:2017年にいちからを創業されてから今日まで、VTuber業界は人数が増えたり、認知度に大きな変化があったと思うが、今後はどういった変化があると思うか
田角陸:VTuber市場は、日本を代表するコンテンツであるアニメやゲームという文化が、SNSやYouTubeで消費され始めたことによって生まれた市場だと考えています。
そういった意味では、このVTuberという存在は、日本を代表するコンテンツになりうるポテンシャルのある業界だと考えています。
そういった中で我々がどういった取り組みをしていくのか。VTuberはタレント性みたいな部分とキャラクター性みたいな部分、 両方の特徴を持っている存在だと考えています。
例えばタレントとして音楽活動やバラエティ活動を頑張って、タレント活動の幅を広めていくことや、キャラクターとしてメディアミックス的な展開、派生的な事業に取り組んでいくのもそうです。
認知の幅を広げていくという観点では、YouTube以外のところ、例えばテレビでの活動や、グッズを小売店に置いてもらって、そこから知っていただく機会を通して、 このVTuberという存在をより一般的なところで認知できるような存在にすることで、日本を代表するコンテンツにしたい。
Q7: 2027年4月期に売上600億円との計画。現在、事業別の売上が、コマース(グッズ)に偏った構成比になっている。ライブストリーミング領域が事業の核かと思っているが、2027年の構成比をどう想定しているのか
田角陸:具体的に開示はしていないが、近い業界のアニメーション市場でもコマースの領域が大半を占めていることを考えると、VTuberでもこういった割合となることは不自然なことではないと思っている。
中長期においてもコマースの領域が成長をけん引していくことは十分にあり得る。それ以外の領域においても、しっかりと成長させられるようにしていきたい。
Q8:従業員の平均勤続年数が2.1年で、 新しい会社であるということを考えても、ちょっと短い気がする。原因と対策があれば
田角陸:弊社として課題感を持って取り組むべき事項と考えている。優秀な人材の確保、そして活躍し続けていただくための評価制度やインセンティブ制度は現時点でもあるが、会社の成長に合わせてしっかり改善していくことにも取り組んでいる。 しっかりとそういったところを注力しながら、中長期で活躍していただけるような人材の確保に取り組んでいく
Q9: AIとの親和性について。 VTuberはキャラクター重視ということで、人間性を重視するところもあるとは思うが、昨今AIが非常に注目されている。新規採用や設備投資という話もあったが、その中でAIが占める割合や、どう接していくのかを聞きたい
田角陸:AIというジャンルに対しての投資方針や、具体的にいくら投資していくみたいなものを決めているわけではないし、公表することはできない。 AIという技術自体は、クリエイティブをより良くしていく可能性や、より効率的にしていける可能性を持つ。 一方、法規制やレピュテーションリスクもはらんでいるので、社内で勉強は進めつつではあるが、慎重に検討していきたい。
Q10:中華圏での展開について。VTuberビジネスはYouTubeに依存しているが、中華圏だとbilibiliなど他メディアを使った展開になる。反スパイ法や地政学的リスク、炎上リスクもあるが、中華圏での展開についてどう考えているか
田角陸:中華圏に限った話ではないが、海外において、日本と異なる文化であったりとかは一定あると考えている。
その意味では、中華圏に限らず、その国・地域の文化に配慮した発言や、コンプライアンスの構築が必要なのかなと考えている。その中で、中華圏も非常に重要な地域の1つとして取り組んでいく
Q11:取締役選任議案について。社内取締役を1人追加されるということで、恐らく業務の範囲的には、田角CEOの役割の一部を新しい方が担当するのかなと思う。新しい体制で田角さんのリソースの割き方はどう変わっていくのか
田角陸:具体的なところはなかなか申し上げることはできないが、鈴木とはもともと役割分担しながら対応していた部分があり、引き続きそこは役割分担していくことになっていくのでは。
そこにプラスアルファとして、中期経営戦略の中で公表したような派生事業への取り組みなども多くあるかなと思っている。
Q12:中長期の目標の中で、ライバーひとりひとりの利益を伸ばしていくという説明があった。VTAやデビュー時のプロモーションの強化など新人施策が多いイメージがあるが、古参ライバーの利益を上げるためにどのような施策を考えているか
田角陸:ここはプラスアルファでしていくことでなく、普段から行っている業務の一部なので、中期経営計画には記載しなかった。 番組や音楽を作っていく体制など、既存VTuberをプロモーションしていくような施策というのが、我々のサポート体制の一環だと考えている。
中期経営戦略の中の人材への投資が、既存VTuberのサポート体制を強固なものにしていくところにつながっていくのかなと考えている。
ここはひとつの施策で取り組んでいくという話ではなく、いろんなコンテンツを作っていって、幅広くライバーを応援していただけるようにするということ。
Q13:YouTuber事務所のUUUMは、YouTubeが好調だった時にはイケイケだったが、過渡期になったら赤字になって、株価も落ち込んでいる。私は御社をVTuber版のUUUMと思っている。同じ道をたどらないようにするための考えは
田角陸:VTuber事務所は、YouTuber事務所と少し異なる部分がある。 YouTuber事務所はどちらかというとマネジメント中心だが、 VTuber事務所はどちらかというとコンテンツ制作をすべてサポートしていく。
もちろん、普段のタレントの生配信や活動もありつつではあるが、事務所全体を通してのコンテンツ制作もメインとしてある状態なので、その意味では、YouTuber事務所よりは、トレンドやお客さまのニーズにお応えしやすい領域なのかなとは思っている。
そういった意味では、タレント業界やYouTuber業界と我々は少し異なっていて、コンテンツ制作をする会社という立ち位置で見ていただけたら。
Q14:株主数を増やすための質問というか提案。個人投資家向けの説明会を開催していただきたい。昨年の株主総会で機関投資家とのミーティングをかなりしているという話があったが、バランスという意味でも個人向けをやった方がいい。 株主優待も出してほしい。競合のカバーより人気がないが、その差はファンが株を買っているかどうか。ANYCOLORのファンの6割以上は女性で、最近の調査では投資家の4人に1人は女性なので、ROF-MAOライブを株主向けに開催してはどうか。
田角陸:個人投資家への説明会みたいなところはおっしゃる通り、 重要だと思っています。今後、株主を増やしていくために、いただいたご提案を参考に、前向きに検討していきたい
Q15:私は外注のクリエイターとして、コンテンツ作成に加わったことがあります。その中でライバーとクリエイターの間に入るスタッフの手が足りないと感じることがあった。デザイナーの増強という話はあったが、裏方の質や量の強化についての考えは
田角陸:こちらはまさにおっしゃる通りで、YouTubeでのサポートであったりとか、タレント本人の活動方針やブランディングをサポートしていく体制というのは、今もチームとしてはあるのですが、そこの強化も引き続き重要な課題として取り組んでいきたい
Q16:収益について。ライブストリーミングが減収した原因と今後の対策は
田角陸:ここは特に海外において、YouTube活動をすることがなかなか難しくなったというところが一部影響あったかと思っている。そういったところに加えて、トレンドの変化としてショート動画ですね。
お客さんを魅了するコンテンツは作りつつ、収益源という意味では割合が変わっていて、 どちらかというとメンバーシップが大きくなっていると認識している。YouTubeにおける役割が収益源というだけでなく、ファンのコミュニティを醸成していくということが重要になっている。
トレンドに合わせたコンテンツ作りや、 タレントの魅力を最大限引き出すようなコンテンツ作りに取り組んでいきたい
Q17:今後の海外の展開について。にじさんじENはいろんなイベントをやっているが、アジア圏の展開については韓国(KR)やインドネシア(ID)が実質止まっているように見える。今後のKRやIDの展開やサポートについて聞きたい
田角陸:海外展開においては バイリンガルのVTuberを通して、北米、アジア圏、欧州に展開している。また、日本のVTuberでも非言語的なコンテンツ、例えば音楽パフォーマンスをベースにしながら海外展開していくことも重視している。
その中でもアジアは我々の文化圏にすごく近い部分があるので、最も注目するべき1つとして取り組んでいきたい。
既存ライバーのサポートでも、KRやIDをにじさんじに統合したことで、サポート体制も改善されつつある状況にはあると思っている。
サポート体制の充実と、アジア圏での展開は、 会社としてのグローバル展開のまず1個目の大きなところとして取り組んでいきたい
Q18:子会社のAtelier colorsが展開しているアクセサリーブランド「Dinamis」で、Atelier colorsが関わっていないようにみえるようなステマが疑われるプロモーションが展開されていたが見解は
田角陸:Dinamisとの関係性については、契約関係に関わることなので、この場での回答は控えさせていただきます。
従前から、ファンのみなさまに安心して楽しんでいただけるように提供表記ガイドラインを制定していて、その中でPR表記等は適切に行っていると確認しています。
景品表示法改正後のステルスマーケティングの対応というところも、弁護士の見解を踏まえて適切に対応していると我々としては考えています。
Q19:全ての質問に対して田角社長が真摯にお答えいただいてるのはありがたいのですが、会社の雰囲気を知るために他取締役の声も聞きたい。仕事上の意気込みや今年の目標、自己紹介でも構わないので教えてほしい
田角陸:社内取締役と社外取締役から1名ずつ、簡単な自己紹介含めてお話しいただければ。
釣井慎也:社内取締役CFOの釣井です。私は2019年5月に入社して以来、一貫してコーポレート関連を管掌してきました。
今、働いて5年間ですが、社内の雰囲気というところで申し上げると、 まず1つ年齢層が若いというのは特徴だと思います。平均年齢30歳前後ぐらい。そして男女比率も非常にバランスがとれている。職種で見ても、ビジネス側と、デザイナー、エンジニアなどのクリエイティブ側がそろっているのが特徴。
また、消費者向け、ファン向けのコンテンツを取り扱っていることから、従業員自身も「会社が扱っているこのコンテンツが好きだ」という思いを持って働いている人が多いと認識しています。
前川俊策:監査等委員という立場から、お話しさせていただきます。
株主総会で賛同を得て、取締役の業務執行を監査する仕事。活動は多岐にわたる。重要なのは会社のガバナンス、取締役会でしっかり審議できているか。
取締役会メンバーの過半数は社外取締役で、それぞれ専門知識や実績から選ばれている。業務執行する取締役の田角や釣井は若いが、社外取締役はベテランがそろっている。その組み合わせがうまくいっている。
その下の経営会議でも非常に活発な議論が行われる。経営幹部の顔色をうかがって発言するとかはない。非常に熱心で、侃侃諤諤、とにかく会社を良くして、VTuberビジネスを盛り上げていって、株主のみなさまのご負託にこたえていく。
会社のガバナンスにも特に問題はない。活発に議論して、今日もみなさまからいただいた声を生かしていく。
Q20:新スタジオの展望について。運用は今年10月ごろからと認識しているが、 フル回転させるにはスタッフが足りないのではと個人的には思う。本格運用はどのくらいの時期からできて、今後、業績にどのぐらいの影響を見込んでいるのか
田角陸:詳細は控えるが、足元でもスタジオの運用を開始できるような採用活動などは迅速に進めている。秋ごろの開始に向けて、順調に取り組んでいる最中。
業績への影響は申し上げにくいが、スタジオが増えることでできるコンテンツの量が増える。コマースやプロモーション、イベントなど、さまざまな部署が使えることもあって影響は計り知れない。
スタジオへの投資で面積が3倍ほどになる。よりクオリティの高いコンテンツをより多く作っていくことを目指して今まさに進めている最中です。
Q21:今年初めて株主になった。7期までやって、業績も上げている良い会社だと思っている。株主還元について、自己株取得も筋が通っているが、配当するとすればどういうタイミングで出すのか
田角陸:株主還元については、基本的に自己株取得の選択をしてきた。
その背景としては、私が大株主なので、配当しても私にほとんどいってしまうから。自己株取得することで少数株主に報いることをベースに考えている。
配当についてもいずれは検討する必要があるとは思っている。時期を見て、必要性を検討していく。
Q22:日本のコンテンツ産業は、これから世界で成長する。カバーに比べると、海外比率が低いのでチャンスがある。ボードにグローバルなエンタメ、ITビジネスが分かる人を入れてほしい。日本のIPを海外に打ち出すため、商社が採用するような人材を獲得してほしい
田角陸:おっしゃっていただいたようなエンターテインメントの領域、あるいはグローバルで活躍できるような人材、コンテンツ制作をするメンバーだけでなく、いわゆるビジネスとしてエンタメを取り扱うメンバーは、ボードメンバーだけでなく、社内人材としても採用活動にしっかり取り組んでいく。グローバル人材は重要課題と認識しているので、採用活動を積極的に行っていく
Q23:事業がかなり近いカバーと比べて、優れている点、劣っている点、どのように差別化しているか、について教えてほしい
田角陸:具体的な会社との比較は避けるが、強みは男性VTuber、女性VTuber、人間以外のVTuberなど、多種多様なVTuberが所属していて、いろんなファン層に支持をいただいていること。
結果として、YouTubeやコマース領域で、男女比率のバランスが良くなっており、若い人が中心であるが、幅広く親しまれているのが強みとなっている
Q24:昨年の今ごろからVTA(バーチャル・タレント・アカデミー)の週1配信がなくなった。理由はVTA生のルール違反や、名前がいきなり消えてデビューできない人が多いので、そのファンが会社に不満を抱くからではと推測する。VTAは荒削りの配信が面白いので、週1配信を再開してほしい
田角陸:社外へ向けた配信は、現時点では行っていない。コンプライアンスやルールの順守をしっかり継続した上で活動できるか、スキルの部分、トークやリアクション、歌唱能力や演技のレッスンの体制も構築して、中長期的に活躍できるような人材を輩出できるよう、育成に取り組んでいる。いただいた意見を参考にして社内でも取り組んでいく