京都市左京区岩倉で2007年、京都精華大マンガ学部1年の千葉大作さん=当時(20)=が殺害された事件で、同級生のマンガ家榎屋克優(えのきや・かつまさ)さん(34)=東京都=が2年前から、亡き友を伝えるマンガをツイッターで発信している。描いたのは、いつも思い出す笑顔とプロにも負けない情熱。「千葉君がよみがえった気がする。事件を忘れないでほしい」。榎屋さんは風化にあらがい、発生15年となる今月15日にも作品を公開する予定だ。
いじめを受ける男子高校生がロック歌手を目指す代表作「日々ロック」で知られる榎屋さん。事件への情報提供を求める街頭活動に15年から参加する中、ある思いを抱いた。千葉君との記憶が薄れてきている―。
「マンガ家にできるのはマンガを描くことだ」。学生時代の思い出をありのままに残すことが事件解決につながるのではと、ペンを握った。19年1月15日、命日に合わせて5ページの漫画を投稿した。
『おはよ―、榎』。作品は、1年間の浪人生活を経て06年に入学した千葉さんの笑顔で始まる。
いつも友人に囲まれる姿に、18歳だった榎屋さんは『性格のいい奴が面白いマンガ描けるはずねーだろ』と嫉妬する。作品の意見交換でわざと酷評しても、千葉さんは『榎のマンガは熱量がハンパないよね~』と長所を見つけて褒めてくれた。榎屋さんは、ひそかに対抗心を燃やした。