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筑豊炭田の遺産と未来を紡ぐ企業家たち

日本一創業しやすい街を目指した炭鉱の街、飯塚――デバイスの多様化とAIの進化で新たな取り組みへ
27/07/2024
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かつて日本最大の炭田を擁した筑豊地域は、石炭産業の栄華とともにその歴史を刻んでいます。この地は、ベストセラー小説の舞台としても知られ、多くの人々が郷愁の念を抱いています。戦後の荒々しい気風の中で、筑豊で成長していく人々の姿が描かれてきました。1970年代半ばにはすべての炭鉱が閉山しましたが、現在もいくつかの遺構がその面影を残しています。特に、福岡県飯塚市には「筑豊富士」と呼ばれる高さ100メートルを超える美しいボタ山が存在し、JR飯塚駅からその姿を望むことができます。

飯塚市は現在もかつての炭鉱の遺構を活かして街づくりを進めています。その中で注目されるのが、画像AI技術を強みとするベンチャー企業、fumeの代表である鵜狩慧久氏です。鵜狩氏は九州工業大学情報工学部在学中から個人事業主として活動を始め、2019年には飯塚市主催のe-ZUKAスマートフォンアプリコンテストでグランプリを受賞しました。同市からのオフィス提供を受けてさらに研究開発を進め、2023年2月にはfumeを株式会社として設立しました。

鵜狩氏の開発した「mindPump for Travel」は、ある単語を入力すると、関連する単語が樹木のように次々と成長するスマホアプリです。このアプリはマインドマップのようなユーザーインターフェースを持ち、自然言語処理(AI)を活用して旅のアイデアを膨らませることができます。鵜狩氏は「誰にでも分かりやすく、共感してもらえ、より多くの人の役に立つものを目指した」と語り、その着実な取り組みは今も続けられています。

鵜狩氏はまた、かつての炭鉱産業に深い興味を持ち、炭鉱遺構を訪ね歩いてその歴史に触れてきました。飯塚市には数々の炭鉱遺構が市内各地に点在しており、その歴史が鵜狩氏にとっても大きなインスピレーションを与えたようです。

飯塚市は大学誘致などを通じて活力を取り戻しています。筑豊地域の歴史を活かしながら、新しい産業や技術が育まれる現代の飯塚市には、かつての炭鉱の遺産が新しい形で生かされています。歴史と未来が交錯するこの地で、鵜狩氏のような若き企業家が新しい時代を切り拓いています。