大雨で増水した川

※オリジナルのスク部分は消失した塩保管庫の掲示板ログデータにありましたが、データを保存しておりませんでしたので当サイトの管理人の記憶をもとに文章を書き起こしております。ご了承くださいませ。


田んぼの様子をみるため大雨の中を傘をさして増水した川の上の橋を歩いていると、何匹もの仔実装が足元にテチテチまとわりついてきた。めんどくさいと思いながらも携帯の実装リンガルアプリを起動してみる。

「一応きいてやる、何だ」

「ニンゲンサン!大変なんテチ!ママが川に落っこちちゃったんテチィ!」

「どうか助けてくださいテチー!」

川の方に目をやると成体実装が流されまいと必死に橋の柱にしがみついているが…

やだよ。めんどくさい。だいいち俺が流されたらどうしてくれるんだ。

「これでママが助かるテチー!」

「一安心テチ♪」

助けてやるなどと一言も答えてないのに仔実装どもは勝手に盛り上がってやがる。俺はこいつらのこいう自分勝手なところが嫌いなんだ。無視して通りすぎることにした。

スタスタ歩いて橋を通り過ぎて畦道に出ると、とうとう力尽きた親実装が流されていくのが見えたが気にしない。だが仔実装どもが息を切らして走りながら回り込んできた。怒っているヤツやら泣いているヤツがいる。どうやら俺が親を助けなかったことに抗議しているらしい。

「どうしてママを助けてくれなかったんテチィー!」

「ギャクタイハテチ!やっつけるテチ!」

ポフポフと俺の足をみんなで一生懸命に叩いている。そんな姿を俺はジッと見下ろして………蹴り上げてまとめて増水した川に落としてやった。

「テチィー!?」

「テチャアー!!」

短い断末魔をあげたあとボチャボチャっと汚い音を立てて仔実装たちは流されていった。これでようやく静かになったと思ったら川から這い出てくるヤツがいた。さっき泣いていた仔実装だ。

どうやら運よく岸の方に落ちて一命を取り留めたらしい。仔実装は泣きながら俺を見つめたあと足元にすり寄って泣きついてきた。

「テェェ~ン!テェェ~ン!」

俺はそいつをしばらく眺めていたが、長靴の先っぽで『トン』と優しく川に突き落としてやった。

「テッ…」

よかったな。これで家族と同じところに行けるな。

落ちる刹那、仔実装は「どうして?」という顔をしていた。アイツにはなぜ自分が川に落とされたのか理解できまい。