7日投開票の東京都知事選で、現職の小池百合子氏が3選を決めた。学歴詐称問題や明治神宮外苑再開発問題なども取りざたされ、選挙期間中、激しい批判コールも起こったが、小池氏の優位を揺るがすものにはならなかった。しかし、2期8年の都政運営には批判や疑問の声が少なくない。
伊藤忠商事も、株主総会で環境活動家からの主張があったことを受けて3日付で「神宮外苑再開発について」と題する声明を出している。
都知事選でスポットが当たったことで、企業イメージに影響しかねないことを懸念しての両社による声明であろう。
あくまでも明治神宮外苑の再開発の主体は、明治神宮とコンソーシアムを組む三井不動産などであり、東京都は開発計画に許可を行ったという立場だが、神宮外苑のほか、日比谷公園、築地市場跡地などの再開発の事業者は、いずれも三井不動産が主導している。
福岡市においても同様だが近年、公園のリニューアル事業は民間資本を導入して進められている。そのこと自体は問題ではないが、公園の持つ防災機能などの公共性はどうなるのかという指摘がある。
公共施設の維持管理を民間に委託することは、以前から行われてきたが、日比谷公園の場合、日比谷公園と三井不動産の「東京ミッドタウン日比谷」をデッキでつなぎ、日比谷公園を三井不動産のビルと一体化させる。現在、日比谷公園の花壇エリアの工事が進められており、中心部にある噴水も取り壊される予定だ。
誰もが自由に利用できる憩いの場所から、イベント開催やテナントを設置することで収益を上げるものに変えられることへの批判は少なくない。公園に限らず、再開発となると巨額の予算が動く。
大型再開発案件は、いずれも、三井不動産が関与しており、都が特定の企業と癒着しているのではないかとの疑惑が出てきた。実際に都の職員が三井不動産および関連グループに天下りしていた事実がある。
6月16日の「しんぶん赤旗」が報じた記事によると、再開発を所管する都市整備局元局長や同局元参事ら12人が三井不動産に、同局元所長ら2人が関連の三井不動産レジデンシャルに天下りをしていたという。
神宮外苑の再開発と並ぶ大型再開発事業が、築地市場跡地、東京五輪・パラの選手村を改修した「晴海フラッグ」の3つである。
2016年、小池氏の都知事就任直後、三井不動産レジデンシャルを代表企業とする大手不動産11社と、旧五輪選手村(現・晴海フラッグ)の都有地の売却契約を結んでいる。中央区晴海にある土地は東京ドームの2.9個分にあたる13.4haの広さだが、近隣地価の9割引きの129億6,000万円で売却されている。現在、都財政に約1,000億円の損失を発生させたとして住民訴訟が起こされている。
御用記者クラブの問題と情報リテラシー
こうした事実は、都知事選で当然問題となってしかるべきだが、大手メディアはほぼ無視した。
都政記者クラブが事実上、小池都政の擁護者になってしまっているからだが、昔と違い、SNSなどで情報を得ることはできる。だが、国家並みの予算規模を持つ東京都知事の選挙となると、複雑な利害関係を有する勢力が動き、マイナスになる情報が広がらないよう動く。
元朝日新聞記者で、YouTube番組「一月万冊」で知られる佐藤章氏が、小池氏の学歴問題で質問を行ったところ、都政記者クラブのテレビ朝日の記者が別の質問を被せて、その隙に小池氏が立ち去ったことがSNSで話題となった。
結果として明治神宮外苑の再開発問題は、蓮舫氏の失速とともに争点に上らなくなった。投票率は向上し、SNSでの情報発信に可能性を見出すことにはなったが、国民の意識や情報リテラシーを根本的に変えるには至っていない。
日本の首都である東京都民(九州の首都である福岡市も同様)の意識が変わらなければ、自民党長期政権下で停滞した日本の政治を根本から変えることはできない。
(了)
【近藤将勝】
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