ついに完成！秋田スギ香る　株式会社龍角散　令和ホール

龍角散千葉工場の敷地内に建設された厚生棟の見学に行ってきました。
→龍角散千葉工場厚生棟の詳細はこちら

■工事概要

のど飴で有名な龍角散の国内唯一の工場となる千葉工場の厚生棟です。
地上２階建ての木造でカラマツ、ヒノキ、スギがふんだんに使われています。

名　称：株式会社龍角散　令和ホール
発注者：株式会社龍角散
設　計：前田建設工業㈱一級建築士事務所
施　工：前田建設・住友林業共同企業体
所在地：千葉県香取郡
階　数：地上2階
敷地面積：33,092.23㎡
延床面積：1,642.27㎡
工　期：2022.06.01～2023.08.31
構　造：木造、一部鉄筋コンクリート造
材　料：カラマツ、オウシュウアカマツ構造用集成材　　ヒノキ一般構造材　　ヒノキ+スギハイブリッドCLT

■木を通して歴史を感じる施設

立地は成田空港にほど近い工業団地に位置し、周囲の自然は比較的豊かであるものの、工場が点在する無機質な風景が広がっています。既存工場内にある食堂が手狭になったことによって、食堂機能の拡張とともに事務室や会議室、休憩室等を含んだ厚生施設が求められました。

清浄度区分にしばられないという機能上の観点の他、人々の健康を思う企業の象徴となるよう、有機質な素材で構成された純木造・木質化構造となっています。また、龍角散発祥の地が秋田県美郷町であることから、仕上げの木材に美郷産のスギ材を使うことで、創業の地に思いをはせ、肌で、そして香りで企業の歴史を感じることができる空間です。

玄関にはおなじみの龍角散オリジナル商品が勢揃い。江戸時代に誕生した、のどの薬「龍角散」の大きなオブジェもありました。2016年にはグッドデザイン・ロングライフ賞も受賞し、200年以上広く愛されている商品です。千葉工場は海外からの工場視察も多いため、情報発信施設としてアーカイブギャラリーが新設されました。

■最適化された温熱環境の無柱大空間

食堂は高さ８ｍの空間を有し、美郷産のスギ材を用いて空間を包み込むような断面形状とすることで、工場に勤務する従業員が安らげる空間となっています。また、床下をチャンバーとした床吹き出し空調方式とすることで、吹き抜け空間の居住性と空調効率を高めています。あわせて、外気負荷を極力抑えるため、開口面積は最小限としつつ採光を取り込めるよう配慮しています。
さらに、空間のフレキシビリティを高めるため、V字に組まれたCLTと垂直の集成材によるロングスパン複合梁によって完全無柱化を実現。また、不定期で音楽コンサートを行うことも想定し、天井と壁面には音響効果を高めるための木製の音響反射板を設けています。

■日射制御を兼ねた象徴的な大庇

来訪者を迎え入れるような形状で大きく張り出した象徴的な大庇は、軒裏全体を秋田県美郷産材の杉板張りとしています。全面ガラス張りのアーカイブギャラリーに直射日光が入り込まないよう、また周辺の自然風景を取り込めるような角度・形状となっています。

■まとめ

暖かな色合いの大庇に導かれ入っていくと、ともすれば無機質になりがちな工場エリアに、ほっとできる癒しの空間が広がっていました。木の持つチカラがふんだんに活かされたこの建物は、働く人の快適な毎日を支え続けてくれるでしょう。